愛するということ

緒方宗谷

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42.彩絵🆚美由紀

1.新人類

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 私(彩絵)は、まじまじと先輩(美由紀)を見やった。 
 先輩は、相変わらずいつも一緒にいる男性が違う。その上懲りもせずに、たっちゃんを誘ってくる。
 一途に1人を愛する私と、沢山の人を愛せる先輩と、果たしてどっちが幸せなんだろう。
 大学のキャンパスにあるカフェで、私はたまたま顔を合わせた先輩と同席していた。
 先輩は言う。
「私は、島根君のこと大好きだよ。実際、今までの彼氏と比べても、特別にいい男だと思うんだよね。
 別に一番頭がいいとか、運動神経がいいとか、お金があるとかじゃないんだけどね、結婚するなら島根君がいいかなぁ」
 彼女である私の前でなんて大胆な。
「やめてくださ~い、先輩!」
「彩絵ちゃん、譲って」
「ダメです‼」
 先輩の持論だと、ここで先輩と浮気できる方がいい男なはず。なのになぜ浮気しないたっちゃんを追い回すんだろう? うーん、こんがらがってきた。私から見ても浮気されてもいい男なの?
 先輩はただの浮気相手なんだから、1番にはなれない。それでいいのかな?
 私がそう質問をすると、先輩が言った。
「私としては、島根君の子供が欲しいだけなんだよね」
「でも、好きなんですよね? 子供だけ貰って幸せなんですか?」
「子供を生んで育てるって、幸せなことだと思うけど?」
「幸せって心で思うことですよね? 高校の時、先輩から心は脳内物質の化学反応だって習いましたけど、やっぱり私どこか違うと思うんです。先輩の言ってることって開明的に見えて、実はとても原始的なんじゃないですか? ただ単純に本能を論理的に説明したにすぎませんよ。そんな本能のままに生きて幸せになれるんですか?」
「幸せって、自分自身で思うことだからね、彩絵ちゃんの言う通りかも。
 年収1億でも不幸な人は不幸だし、年収100万でも幸せな人は幸せなのよ。だから、あなたが正しいと思う恋愛が私に当てはまるわけでもないわ。本能のままに生きて幸せになれないと思う価値基準はあなたのもので、私のものじゃないから。
 私は最っ高の男を捕まえて結婚(子供を産む)するの。それが幸せ」
 それを聞いて、私は先輩の価値基準は子供かと思った。
 先輩が続ける。
「多分、私と彩絵ちゃんは相いれないわね。
 多田教授いるでしょ? 教授の話によると、人類の中でサピエンスだけが生き残れたのって、時空を超えて目に見えないものを想像したり信じたり出来たからなんだって。それとおんなじで、私が見ている愛と彩絵ちゃんが見ている愛は、次元が違うのよ」
 それは私が滅んだ側の人類だということか? なんかバカにされているような気分だ。先輩の話はすっ飛んでて、私には良く分からないなぁ。

 
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