愛するということ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
122 / 192
38.友情

7.思いやり

しおりを挟む
 原田真理の話が終わって、少しの間会話が途切れた。少し切ない空気が流れる中、寺西が言った。 
「上条、どうなってるんだよな」
「あ、村上とのこと?」
「うん、いつまでケンカしてんだろう?」
「だよな、恋敵同士が仲直りしたっていうのに、その相手とギクシャクしてるなんてな」
 3年に進級してクラスが一緒にならなかったのは、3-Bの小栗と3-Cの陸だけだ。寺西、有紀子、加奈子は3-Dだった。
 クラス替えがあれば友達も変わる。それは小学生の時から経験している。だが、幾度もクラス替えを経てもなお、小栗と寺西は親友であり続けた。
 高校に進学してから2年になるまで、2人は有紀子と加奈子との接点は無い。陸が転校して来てから急に仲良くなった。特に加奈子は男子以上に悪ガキだと知って、特別な親近感が湧いている。
 2人を加奈子と繋げたのは陸だ。陸がいなければ、2人といる時の加奈子の悪ガキぶりは半減してしまう。2人は、何としても2人のよりを戻したい、と思った。
 小栗が、いつもはタブー視して話さなかった話題に触れた。
「でも、村上のヤツ、よく彼氏を取ろうとした渡辺を許したよな」
「ああ、俺、2人とクラス一緒だけど、前より仲良いくらいだぞ」
「でも、村上のあのキレ様、いくとこまでいっちゃったのかな? 上条と渡辺」
「分かんねー、でも3人を仲直りさせたいよな。あいつら、なんだかんだ言っていい3人組だったもんな」
 寺西が言い終わった後少し間があってから、「ブハッ」と小栗が笑った。
「ぶふふふふ」
「何だよ、気持ち悪い笑い方だな」寺西が訝る。
「ぶふふ、変態同盟(前身は下品同盟)の為にも」
 小栗につられて、寺西もおかしな笑いを起こした。
「ぅんぐっふっふっ、変態同盟の為にも」
 スマホのアラームが突然鳴った。キャリアのCMで使われているお囃子の様なコミカルな音が木霊する。寺西大のお気に入りソングだ。
「何だよ、しんみりしてたのに!」
 それを聞いた小栗が大爆笑して言った。
「お前の変態は真正だな、変態同盟のくだりでしんみりとは!」
「お前はどうなんだよ」
 ガハガハ笑う小栗は、「俺? 俺はー、はんなりしてたよ」と言った。
「何だよ、はんなりって⁉」
「分かんねー」
 ガハガハ、ゲラゲラ、笑いが止まらない。お腹ばかりか声までよじれる始末だ。
 2人はそばにある階段から上へあがった。バスの時間まで15分くらいある。釣れなくても良いんだ、本当は。2人は思った。こうしてまた学校で頑張れる気力を溜めて、翡翠色の制服を着て家を出るんだ。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:837

魔眼少女 ~太陽と月のヒロインズ~

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

名前よりさきに

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

泥の上のプリーツスカート

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

【完結】私の婚約者はもう死んだので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:276pt お気に入り:3,344

婚約破棄した婚約者のその後……。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

悲しい恋 【完結】

nao
恋愛 / 完結 24h.ポイント:255pt お気に入り:1,105

処理中です...