愛するということ

緒方宗谷

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36.近藤美由紀の悩み 

1.愛ちゃんとの会話 

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 女の性とは何なのだろう。一人ベッドの上で、美由紀は考えていた。
 久々に会った高校時代の友達愛ちゃんは、大学を中退して風俗で働いていた。結構可愛い子で、高校時代は男子にモテた。だいぶ遊んでいてパパ活(援交)もしているような子だった。だが悪い子ではない。美由紀はパパ活や援交をしていなかったが、愛ちゃんと夜に遊び歩く仲だった。
「美由っちは彼氏いるの?」唐突に愛ちゃんが言った。
「それがいないんだよね」
 昼間っからなんて話をしているのか、夕方前イタリアンの店先のテーブルでワインを飲みながら。美由紀はふとそう思ったが、お酒が入るとエロ話がとまらない。大学に入ってからの性癖(美勇伝?)をズラズラと上げて並べ連ねた。
 それを聞いた愛ちゃんが、妙にバカウケしている。ゲラゲラ笑いながら、身をよじって言った。
「美由っちてば完全なヤリマンじゃん、やばいよそれ」
「風俗で働いてる愛ちゃんに言われたくないよー」
「あたしはヤってないもん」
 美由紀は風俗のシステムを知らない。そういうお店はヤっているものだと漠然と思っていた。しかし、実際に行為が行われているのはソープといわれるジャンルであって、他のお店は本番無しらしい。
 「フェラチオハウス? 何それー‼」
 今度は美由紀がバカウケだ。間抜けな呼び名に大声で笑った。外国では珍しいらしい。風俗ファンの旅行者にはそう呼ばれている、と愛ちゃんが教えてくれた。
 ヤリマンだなんて思ったことなかった。美由紀は平静を装ったが、結構ショックを受けていた。愛ちゃんと別れてだいぶ時間が経つのに、今も頭の中を「ヤリマン、ヤリマン」と言う愛ちゃんの声が渦巻いている。
 何かおかしい気がする、そうだ、確かにおかしい気がする。納得がいかない。そう思った美由紀は、愛ちゃんのセックス理論を思い出した。
「男がヤリチンなのは分かる、毎日何億もの子種をこさえてるんだから、やりたいのは当然よ」愛ちゃんが言う。
 酔って話しているからバカ丸出しの内容だが、要は、その能力が高い方が男として立派だと愛ちゃんは言いたいらしい。
(まあ、風俗嬢だから、精力が強い殿方が多くいてくれないと商売あがったりなんだろうけど)
 そこは美由紀も納得できる。そしてさらに思い出そうと振り返る。
(それでもとても男の肩を持つなー。その時は聞き流しちゃったけど、もっとよく聞いておけば良かった)
 今まで100人以上と関係をもってきたはずだが、美由紀はここに至るまで性について考えたことが無かった。
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