愛するということ

緒方宗谷

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27.陸の本性

3.友と呼べる者

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 1ヶ月以上経っても、学年中が陸のケンカの話で持ちきりだった。そこそこ淡麗な顔立ちで優しい雰囲気の陸は、多くの女子に人気があった。里美や知恵同様、陸を狙っていた女子も多い。
 もし、陸のそばにいるのが有紀子だけであったならば、みんな遠慮なしに陸に迫っただろう。だが、加奈子がいた。気の強そうな加奈子がいたから、誰も友達以上に距離を縮めようとしなかったのだ。
 加奈子は笑って、「陸君に悪い虫がつかないように、私が見張っててあげるから」と、常々有紀子にそう言っていた。それももう必要ない。陸の人気は急速に衰えていった。
 少し尖った男子がいることは、どこの学校でも普通だ。そういう生徒と比べれば、陸など丸いものだった。
 そもそも、イジメを始めたあの3人が悪いのであって、あのケンカの根本原因は陸には無い。だが、平和な学園生活を送っていたみんなには、ケンカの風景に免疫力が無い。そのため、陸の行動はとてもショッキングな印象をみんなに与えた。
 だが、人気の凋落と反比例して、違う人気が出てきた。別の種類の女子が陸に気を寄せるようになった。それとは別に、表には出さないが少しこじれた男子も、陸に好感を持った。
 元々の陸の友達で、彼のそばから離れた者はいない。短期間ギクシャクしたが、すぐに元に戻った。ただ、孤立感は否めない。いつも一緒にいた有紀子と加奈子が離れていたし、クラスの雰囲気を形成している普通の生徒達は距離を置いたからだ。
 しばらくして席替えがあった。陸、有紀子、加奈子の3人は、狂った歯車が元通りに回り出すことを期待した。しかし何も変わらなかった。
 1人の時間が多くなった陸の背中は、とても寂しそうに見える。後ろの方の席の有紀子と加奈子は、窓際中央の席で机に伏す陸の姿を痛々しく見ていた。
 2人して、“幼馴染みなのに(親友なのに)、何もしてあげられないのが悔しい”。そう思っていた。いや、実際は何でもしてあげられた。だが、恋心で思い悩む2人は二の足を踏んでいた。
 席替えで廊下側になった小栗が陸の前に座って、声をかけた。
 「わはははは、でも、これでお前も俺らと同類だぜいっ」
 それを聞いてやって来た寺西が言う。
 「俺達がしっかり慰めてやるから、安心しろよな」
 小栗と寺西が、他傷(?)ネタで陸を慰める。すると、ここ最近陸を避けていた加奈子が口を開いた。
 「2人のお下品さで、陸君を汚さないでくれよおん↺」
 人気アニメの主人公の声真似で、クラス中が大爆笑だ。ガハガハ笑う小栗が、陸の肩に手を置いて言う。
 「おう、お下品同盟の結成だ」
 間髪入れず、加奈子が「ちょっと、私を入れないでよ」と拒絶したので、小栗が「ひでぶ」と返す。
 「ばっかじゃないの?」と他の女子がヤジを飛ばした。クラス中がウケたので、陸を取り巻く雰囲気が少し変わった。
 有紀子は、(男同士の友情はなんか素敵だ)、と思った。
 (あ、でも加奈子は女子か。――女子なのに/類い稀なる/男子かな。お、良いですね(笑))←季語が無い。
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