愛するということ

緒方宗谷

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21.島根隆弘と水野彩絵

1.ロリコン

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 水野彩絵の元家庭教師である近藤美由紀が、大学の後輩となった彩絵とご飯を食べた時のことである。
「島根君と本当に付き合ってるの?」美由紀が訊いた。
「うん、付き合ってるよ」
 島根は悪い奴ではなかったが、美由紀は腑に落ちず、疑問を頬にためて膨らます。悪い噂は聞かないが、彼女がいたような気もする。
 加奈子の家庭教師である島根と友達の美由紀は、良く飲み会で泥酔してお持ち帰りされる女だった。しかも、酔いつぶれたのを良いことにやり逃げされることよりも、自分から男の家に押し入ってしまうことの方が多いらしい。すぐやらせてくれる女として他の大学でも有名だったが、もともと性に奔放な美由紀は気にしない。逆に‘良い男’探しが楽だとさえ思っているような子だった。
 美由紀ネットワークに、島根の性癖デーダは無い。島根はロリコンなのだろうか。前の彼女は綺麗系の女だったからそんな気は無いと思いつつも、彩絵と付き合うなんてロリに違いない、と疑った。
「うふふ」と彩絵が笑った。「でもね、たっちゃんはいい人だよ。大丈夫だよ、ロリコン目的じゃないから」
 目を細めて疑いの眼差しで見る美由紀に、彩絵はそう言った。笑って言ったが、少しウンザリした様子だ。
 確かにロリコンは変態だし、自分もきらいだ。だが、私は19歳なのだ。確かに中学生に見えるけれども19歳なのだ。私を好きになる人が、幼顔や幼児体型を好んだとしても、イコールロリコン扱いはよしてほしい。
 そう思いながら、彩絵はレモンティーをかき混ぜる。
 その様子を見た美由紀は考えた。
 もともと仲が良かったのは知っていたが、まさか付き合っているとは思っていなかった。正式に付き合い始めてから1年近いらしい。ということは、彩絵が高3の三学期くらいだろう。彩絵と島根が知り合ったのは、大学受験が終わった後だったから、出会ってすぐに付き合い始めたことになる。
 実際はすぐにではない。だが、出会って2日後には一緒に遊んでいたから、すぐに交際がスタートしたと言っても間違いではないだろう。
 彩絵の男を見る目は間違っていない。出会った頃、島根には彼女がいたが、何人もの女性と同時につきあうような性格ではない。それに、それが出来るほど器用ではない。
 島根もバカではないから、正式に分かれる前に、彩絵に気持ちを伝えてOKをもらった。それから当時の彼女に別れを告げた。だから、彼女と抱き合った翌日に沙絵とデートしているということも無かったわけではない。恋の終わりと始まりが緩やかに重なるのは仕方がない。
 彩絵は早くに気が付いたが、それには目を瞑った。付き合うことになってすぐに島根の部屋に遊びにいった。その時見たアルバムに元カノの写真があったのだが、プリントされた日付を見ると、2人がデートするようになってからの物だったからだ。
 人によっては、2人は出会った2日後から付き合い始めたと言う人もいるが、彩絵は頑なに認めなかった。もしそれを認めれば島根が二股をかけていたことになる。彩絵の恋愛規定上、それは嫌だった。
 だから、2人が付き合い始めたのは3月なのだ。
 彩絵は、美由紀からどんなに「2日恋人(2日で恋人になった)」とにかにか茶化されても、超下手にやんわりと笑顔で否定した。

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