愛するということ

緒方宗谷

文字の大きさ
上 下
52 / 192
16.旅行3日目 

1.煌めきの素肌

しおりを挟む
 雲一つない晴天。今日は、今年一番の真夏日らしい。灼熱の太陽に照らされる肌がチリチリと焼かれている。
 3人が待ちに待った海水浴の日だ。有紀子と加奈子は、この日のために新しい水着を買っていた。陸を悩殺するために選んだ渾身の一着だ。
 有紀子は白の水着で、背中が大胆に開いている。恥ずかしいので露出は抑えたかった。なのに加奈子からビギニにしろ、と迫られて、すったもんだの末背中が大胆なデザインのモノキニになった。
 加奈子は、薄いオレンジに縁どられた白のビギニ。陸は唖然とした。結構露出高くて大胆すぎる。もっと、ボーイッシュな水着で来る、と思っていた。予想ではボーイレッグかタンキニで来ると睨んでいたのに。まさか、ここまでセクシーな格好で現れるとは。背中と腰で紐を結ぶやつだ。ほぼ裸。あんなのでほどけないか心配しないのだろうか。
 制服の有紀子はお淑やかなイメージだから、陸は見惚れてしまった。肌の艶やかさにドキッとする。有紀子はワンピースで来る、と思っていたからなおのことだ。素肌のくびれに目を奪われる。それに、思ったより胸あるんだな、と思った。
「やだ、陸君そんなに見ないでよ」陸の視線に耐えきれず、有紀子が恥ずかしげに言った。
「あ、わりぃ、とてもきれいだったから、つい……」
 学校のプールは始まっていたが、3人ともまだ入っていない。だから、お互いの水着姿を見るのは初めてだ。
 下着を見られるのは恥ずかしいくせに、下着とほぼ同じ水着を大衆の面前に晒せる女の子の気がしれない。女でなくて本当に良かった、と陸は思った。でも綺麗だ。2人共とても可愛い、と同時に思う。
 陸はちゃんと胸筋があって、お腹も6パックだ。鍛えているわけではないから、細マッチョというほどではない。それでも、男子の体格を目の当たりにした有紀子は、陸に見惚れている。とても力強そうな体に、抱きしめられてみたい、と密かに思った。
 加奈子はというと、「さすが男子」と言いながら、ボスボスと陸のお腹を殴っている。見ている(考えている)ところが違う、と有紀子は思った。
 昔からそうだ。プールで男子を見ると、筋肉のつき具合を批評する。「アイツにはまだ勝てる」とか言っていたっけ。
 加奈子は以前、恵まれた体をフルに使わなければ、と言ったことがある。それを思い出した有紀子は、(使いすぎだよ、別の意味で)と心でつっこむ。
「触ってごらんよ、ほら、触ってごらんよ」
 加奈子に促されて、有紀子は渋々(という風を装いながら)触ってみた。湯煙の向こうに一度見てはいたが、太陽の下で見てもっと興奮する。触ってみて石でも入っているんじゃないかと思った。
 それを見ていた2人は、有紀子は顔に出るタイプだと思った。すっごく神剣な眼差しで目を見開き、口をへの字にして陸のお腹の筋肉を揉んでいた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

長い片思い

詩織
恋愛
大好きな上司が結婚。 もう私の想いは届かない。 だから私は…

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...