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7.陸と里美の出会い
1.勇者様
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里美は、ずっと曾祖母のことは忘れていた。健在とはいえ、今は有料老人ホームに入所している。特にこの1年は面会もしていない。里美は、久しぶりに遊びに行こう、と思った。そう思えたのは、陸のおかげだ。
ある時、里美はお気に入りのセレクトショップで買い物(実際は見て楽しんだだけで買っていない)をした帰り道、踏切に差し掛かる手前で、妙にヨタヨタ歩くお婆ちゃんが目に留まった。
既に踏切は鳴っている。お婆ちゃんはまだ踏切の真ん中にも到達していない。隣を歩いていた主婦が、懸命に「急いで急いで」と言っている。里美もマズイんじゃないか、と思った。でも怖くて助けに行けない。そもそも助けるってどうやって?
車道側の遮断機が下りた。まだお婆ちゃんは真ん中を歩いていた。間もなく歩道側も締まって電車が来るだろう。
すぐわきの一橋学園駅を見ると、下りの電車は止まっていない。ということは、上り電車が来るということだ。電車が走ってくるちょうどその頃,電車が走る線路の上をこのお婆ちゃんは歩いているはず。おばあちゃんと里美の間には、正に上り列車の走る線路が横たわっていた。
里美の頭に不安がよぎる。でもまさか、そんなことあるわけ無い。おばあちゃんの足なら、もしかしたら、そこに到達する前に電車が通り過ぎるかもとも思った。そうでなくとも、ホームに停まる電車なのだから減速しているし、お婆ちゃんを見て手前で急停車するもしれない、と。正確には、思ったのではなく願った。
里美は、焦りから足をバタバタさせた。その時、おばあちゃんと歩いていた主婦が歩速を早める。(お婆ちゃんを見捨てないでー)と里美は心の中で叫ぶ。叫び終わるや否や、主婦の後ろから男性が駆け出たのが視界に入った。
「大丈夫ですか? 背負いましょうか?」
転校してきたばかりの陸だった。持っていたリュックを主婦に渡すと、急いでお婆ちゃんをおんぶして、里美のいる遮断機の外側まで駆け足でやってくる。その後ろを陸のリュックとおばあちゃんの手押し車を持った主婦が続く。格好良かった。もちろん陸が。
おばあちゃんは、お笑いのレジェンドが演じるばばあの様にコミカルにワナワナ震えて両手を仰ぎ、ゆっくり手を合わせてお辞儀をした。
命を助けた感動的なシーンだが、可笑しかった。里美は、テレビで見るコントのおばあちゃんみたいな動きをする人が本当にいるなんて知らなかった。
でも、笑うのは堪えた。これから陸と歩いて、面白おかしくこのお婆ちゃんの話で盛り上がる予定があったからだ。
里美は踏切を渡ろうとしていたが、陸に合わせて今来た道を戻る。陸の家はこっちの方のようだ。登校下校は一緒に出来ないな、と里美は残念に思った。
ある時、里美はお気に入りのセレクトショップで買い物(実際は見て楽しんだだけで買っていない)をした帰り道、踏切に差し掛かる手前で、妙にヨタヨタ歩くお婆ちゃんが目に留まった。
既に踏切は鳴っている。お婆ちゃんはまだ踏切の真ん中にも到達していない。隣を歩いていた主婦が、懸命に「急いで急いで」と言っている。里美もマズイんじゃないか、と思った。でも怖くて助けに行けない。そもそも助けるってどうやって?
車道側の遮断機が下りた。まだお婆ちゃんは真ん中を歩いていた。間もなく歩道側も締まって電車が来るだろう。
すぐわきの一橋学園駅を見ると、下りの電車は止まっていない。ということは、上り電車が来るということだ。電車が走ってくるちょうどその頃,電車が走る線路の上をこのお婆ちゃんは歩いているはず。おばあちゃんと里美の間には、正に上り列車の走る線路が横たわっていた。
里美の頭に不安がよぎる。でもまさか、そんなことあるわけ無い。おばあちゃんの足なら、もしかしたら、そこに到達する前に電車が通り過ぎるかもとも思った。そうでなくとも、ホームに停まる電車なのだから減速しているし、お婆ちゃんを見て手前で急停車するもしれない、と。正確には、思ったのではなく願った。
里美は、焦りから足をバタバタさせた。その時、おばあちゃんと歩いていた主婦が歩速を早める。(お婆ちゃんを見捨てないでー)と里美は心の中で叫ぶ。叫び終わるや否や、主婦の後ろから男性が駆け出たのが視界に入った。
「大丈夫ですか? 背負いましょうか?」
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でも、笑うのは堪えた。これから陸と歩いて、面白おかしくこのお婆ちゃんの話で盛り上がる予定があったからだ。
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