23 / 192
6.篠原里美
4.気が付くと成長していた
しおりを挟む
里美は、ニュートラルなポジションに立った。自分の意見を自分に押し付けようとする者には意見をぶつけたが、押し付けてこない者には里美も押し付けない。自分の存在をメタ認知できていたからこそ、偏らなかった。
高校に入ると、アメリカ時代の悪い記憶は忘れた。残っていたのは良い記憶ばかりだ。アメリカに住んでいて本当に良かった。日本に戻って来ると、英語がしゃべれるから羨望の的だ。少なくとも英語だけは成績が良い。逆に英語教師に気を使わせるくらいで、とても気分が良かった。
先生に嫌われていると分かっていても、発音や訳し方の間違いを指摘せずにはいられない。先生を言い負かすのは楽しかった。
アメリカでの生活のおかげで、だいぶ論理的に白黒はっきりした考えを持つようになっていたから、先生を言い負かすのなんて楽勝だ。
戻ってきたのが中学の時で良かった、と里美は心底思った。日本の生徒と比べて独立心と我が強い里美は、自分がクラスで浮いている、と薄々感づいていたからだ。
それでも、その不安定さは思考能力でカバーした。正確には他意見が出る前に自分の意見を言って同意を求める。そうすれば、周りは意見を言わずに、自分に同調してくれる。すぐにその術を身につけられたのは、まだ周りが思春期で不安定だったからだろう。里美の様に性格が出来上がっていなかったから、先んじて手を打つことが出来たのだ。
少し実力主義的なところがある。人種性別で人を別けることはしない代わりに、知らず知らずのうちに頭脳や身体能力で分けるようになった。
ただ単に頭が良いということではない。自分で問題を定義して勉強するとか、身体やチームプレイを訓練するとか、発想力がある者に対して里美は一目置くようになった。結果として、一目置く要素がない者とは付き合わなかった。
同じ目線で見れば、多くの生徒の中心にいるようである。だが、教師の立場から見ると、少し異なっていた。柚奈と萌愛だけが友達で、それ以外とは交流が無いように映った。
英語以外の科目の成績は普通で悪いわけでは無い。そして素行も悪くない。それに加えて校長と教頭が、帰国子女を少し腫れ物のように見ていた。だから教師達は里美になにも言わなかった。実際、校長が「当たり障りないように」、と英語教師に指示していた。
もちろん教師達は、里美にそれを言わなかったが、里美は肌で感じていた。それも里美の防御壁になって、 我が世の春を謳歌していた。
高校に入ると、アメリカ時代の悪い記憶は忘れた。残っていたのは良い記憶ばかりだ。アメリカに住んでいて本当に良かった。日本に戻って来ると、英語がしゃべれるから羨望の的だ。少なくとも英語だけは成績が良い。逆に英語教師に気を使わせるくらいで、とても気分が良かった。
先生に嫌われていると分かっていても、発音や訳し方の間違いを指摘せずにはいられない。先生を言い負かすのは楽しかった。
アメリカでの生活のおかげで、だいぶ論理的に白黒はっきりした考えを持つようになっていたから、先生を言い負かすのなんて楽勝だ。
戻ってきたのが中学の時で良かった、と里美は心底思った。日本の生徒と比べて独立心と我が強い里美は、自分がクラスで浮いている、と薄々感づいていたからだ。
それでも、その不安定さは思考能力でカバーした。正確には他意見が出る前に自分の意見を言って同意を求める。そうすれば、周りは意見を言わずに、自分に同調してくれる。すぐにその術を身につけられたのは、まだ周りが思春期で不安定だったからだろう。里美の様に性格が出来上がっていなかったから、先んじて手を打つことが出来たのだ。
少し実力主義的なところがある。人種性別で人を別けることはしない代わりに、知らず知らずのうちに頭脳や身体能力で分けるようになった。
ただ単に頭が良いということではない。自分で問題を定義して勉強するとか、身体やチームプレイを訓練するとか、発想力がある者に対して里美は一目置くようになった。結果として、一目置く要素がない者とは付き合わなかった。
同じ目線で見れば、多くの生徒の中心にいるようである。だが、教師の立場から見ると、少し異なっていた。柚奈と萌愛だけが友達で、それ以外とは交流が無いように映った。
英語以外の科目の成績は普通で悪いわけでは無い。そして素行も悪くない。それに加えて校長と教頭が、帰国子女を少し腫れ物のように見ていた。だから教師達は里美になにも言わなかった。実際、校長が「当たり障りないように」、と英語教師に指示していた。
もちろん教師達は、里美にそれを言わなかったが、里美は肌で感じていた。それも里美の防御壁になって、 我が世の春を謳歌していた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる