キャンピングカーで異世界の旅

モルモット

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第26話 天女の秘密

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牧場の小屋の扉を開けてみると 農夫と番犬が縛られていた。
「助かったべぇ。・・・魔導都市メキストって言ってたべぇ」
シアノバたちは 農夫たちを縛り上げたときに次は魔導都市メキストへ向かうと話をしていたらしい。

助けたお礼に荷車とチーズを貰ったので 魔導バイクを縛り付けて馬車を作った。
結局手元に残っているのは 魔導バイクと炎と氷のナイフのサヤだ。

完成すると早速荷車にミリーとライラさんが乗り込み、ガネーシャたちも乗り込んだ
「さあ 荷車に乗り込むんだ・・・リザリア?」
リザリアがいない?
「ええ どうしたのショウスケ?」
リザリアは俺の目の前にいたのに気が付かなかった。
俺は思った以上にショックを受けているのか。

「cabin02は 取り戻せばよいのじゃ」
「ショウスケさんなら きっとできます」
「ああ 大丈夫だ。出発しよう」

魔導バイクの運転はハンドルを握るだけでよくて簡単だ。
荷車のほうを見ても ミリーは楽しそうだしクロレラがナイフのサヤをアクセサリーとして利用できないかと
リザリアの首にかけて遊んでいるようで普段のcabin02のときとあまり変わらないようだ。

「どうしたガネーシャ?」
「ワレのシタールがcabin02に積んであったのじゃ・・そうじゃ 代わりに歌おうぞ。川の流れし~スパイスの♪匂いを嗅げば くしゃみ出る~♪・・・」

だけど しばらく進むと
「腰が・・痛いのじゃ・・」
「揺れますね」
「cabin02ってすごかったのね」
そして魔導都市メキストの国境近くのトリデにたどり着くころには
バイクを運転していた俺とは違って荷馬車に乗っていたみんなは腰や尻が痛いようでおじいちゃんのように腰を曲げて歩いていた。

「入り口には兵士も誰もいないな」
不思議に思ったけど 中には街の人たちが座り込んでいて炊き出しが行われている最中だった。
そして外へ出ようと魔導都市メキストの方へ向かうと兵士が立っており出口を出ようとするとゴーレムが現れた。
「メキストへは 向かってはならぬ・・・国は閉鎖されたのだ」
ゴーレムの背中に乗って操縦している兵士が話すには 一部の技術者や権力者たちによって反乱がおき見事なまでに城を追い出されたのだという。
「大量のゴーレムが国中に現れたのだ・・」
国王は逃げ出して無事だったのだが メキストは乗っ取られた。
だけどしばらく経っても新しい政権が建てられることもなく、城にろう城を続けているのだという。

「都はゴーレムの生産施設になっているぜ」
「なぜ 生産施設になったとわかるのじゃ?」

兵士がゴーレムを後ろに下げると出口の外が見える。
そこには 戦闘で破壊されたゴーレムの残骸が散らばっていた。
「きっちり3日に1回のペースで襲ってくる。我が国の紋章を付けたゴーレムが国境を越えて暴れると考えただけでゾッとするぞ」

国の隅にある各トリデには定期的にゴーレムが攻めてくるようで兵士たち各トリデに分散させられているようだった。
先へも進めないし今日は日も傾いてきたしここでキャンプをしよう。

俺たちもトリデに戻り炊き出しを受け取る。
受け取った器は暖かく火を起こしている様子もなかったので大鍋が熱を発するような魔道具だ。
「すごい・・」
「ああ お兄さんは炊き出しよりも鍋の方が気になるのかね?そうさ これは魔道具。ほら 周りもごらん。このトリデは兄さんの好きな物ばかりのはずさ」

周りを見渡すと明かりはローソクじゃないし グルグルと回っている謎の石像まであって穀物がひかれているようだ。それが石造りのトリデにしぜんに溶け込んでいた。
「すごいぞ 見ろよ。リザリア」
俺はリザリアの分のお椀を渡そうと振り返ったけど そこにはリザリアの姿がない。
「ありがとう ショウスケ」

リザリアが 目の前に現れてお椀を受け取っていた。
「どこに行ってたんだ?」
「私は ここにいたわよ。ショウスケ なんだかボーっとしてるわよ 大丈夫かしら?」
「そうだったのか。 あっちで食べよう」

野菜のスープと蒸した野菜に「わーい」とはしゃぐミリーと野菜に舌鼓を打つライラさんは別として炊き出しというのはやっぱり貧相だな。
「ガネーシャ やるか!」
「キャンプめしじゃな?その言葉、待っておったぞ」

ガネーシャは炊き出しのスープをカレーに変えると「カレーは最強 がははは!」と笑い出す。
いい香りがトリデの中に流れて人が集まってきた。

「なんて いい香りなんだ」
「食欲が湧いてくるぞ」

「ワレに鍋を任せるのじゃ うまいカレーを食べさせてやろうぞ がはは」

俺は牧場でもらったチーズと牛乳を鍋に入れてホワイトシチューを作る。
「トリデに白ワインなんてないよな?」
「酒ならあるぞ 実は・・・」
兵士が途中で口をつぐんでしまったが 上の階からお酒を持ってきてくれた。

「この魔道具の鍋はすごい火力だ。みんなのチーズフォンデュを作るから蒸した野菜に使ってくれ」
「ショウスケとやら。鍋が凄いのではない。そなたの魔力がすごいのだ」

トリデの中にチーズの匂いが立ち込めた。

「王様、お戻りください」

トリデの二階から 貧相な服装に見えるが新しい布の服を着た男と付き添いの兵士たちがおりてきた。

「なんじゃ このいい香りは?そなたらは何者なのじゃ?」

俺はリザリアの手を握った。

ギュ!

「俺は・・」

ギュ!

あれ? 握った感触がない。。
でも そのまま挨拶をつづけた。

「俺はショウスケ、cabin02を取り返すためにメキストを目指している。・・・牧場のチーズ・・これはカレーという料理さ」

このトリデに逃げた王様が潜んでいたらしく炊き出しに飽きていたらしく匂いにつられて降りてきたらしい。
しかも 魔道具の都だったこの国は 近くに牧場や農場があることも知らなかったようだった。

「国家単位の引きこもりだな。あはは」
「引きこもりか・・そうかもしれぬ。じゃが ワシはチーズや牧場の事が気に入ったぞ。チーズは伸びる。そしてうまいのじゃ! がはは」

ジャラン♪ ジャラン♪

楽器の音色の方を見ると ガネーシャが楽器を弾いていた。
シタール以外にも弾けるのか?
それなら 俺だって。
俺は トリデの外にあるゴーレムの残骸に「スキル:ネーチャーリバース!!」をかけてゴーレムの外壁を残してゴミを自然物に還す。

コンコン! コン♪ コン♪

「やっぱり いい音がすると思ったんだ」

王様と兵士たちが目を丸くしていた。
「なんじゃ その力は?魔法なのか?」
「自然系の魔法らしいけど さらに発展系もあるらしくて俺にもさっぱりだ。それより楽器が簡単に作れるみたいだ。みんなやらないか?」

弦楽器の音色とゴーレムの破片がリズミカルに叩く音がトリデから響いた。
そして リザリアとクロレラの踊りに合わせてみんなで踊った。

「我が国の奪還とショウスケ殿のcabin02の奪還を願ってみなで踊るのじゃ!!」
「おーう!!」

ジャラン♪ ジャラン♪ コン♪ コン♪

「王様は ここにいたのか!」
トリデの出口から声がする。
みんなが振り向くとそこには ドローンの姿があった。

「ドローンという魔道具はなんと便利なのだ!がははは」
「お前は バルトなのか?どうやってcabin02を奪った?」

「ラスペルがお前を裏切ったからに決まっているだろ?質問が違うであろう。
ラスペルの姉はオレが作った反乱軍でゴーレムを造っていると言えば 理解できたかな?人質ってやつだ。逆らえないだろ?」

さらにドローンからバルトの声が発せられる

「今度はこちらから質問だ。この魔道具は何で動いているのだ?・・」
「え・・・?」
「魔法ではないし・・答えろ!」
「断る!」

ドローンからの声がシアノバに変わった。

「リザリア、あなたまだいたのね。私は女神様のお気に入りのあなたが大嫌いだったのよ。あなたの紅茶に虫が入っていたこと覚えている?あれ 私なの。ふふふ それより明日はこのトリデに3,000体のゴーレムを送り込むわ」

「・・・。」

リザリアを見ると 半透明の幽霊のような姿に変わっている。

「王よ! 最終決戦だ!がははは。 逃げれば隣国を3,000体のゴーレムが襲い、反撃を受けてこの国は無くなるだろう」

ドローンは飛び立っていった。

「リザリア!!」

俺はリザリアを抱き起こした。
「私が 消えてしまってもショウスケは旅を続けてね・・」
しばらくするとリザリアは 少しだけ実体を取り戻したようだったが眠りについてしまった。

トリデは 慌ただしかったけどゴーレムの残骸で作ったコテージでリザリアを寝かせた。
クロレラが現れて呼び出された。

「ショウスケさん。 天女とは何だと思いますか?」
「天使とか天界の住人の事じゃないのか?」
「いいえ 違います。私、クロレラは ガネーシャ様に作られた天女です」

「だけど クロレラはクロレラだしそんな事を言い出したら俺だって元をただせば・・」
「私とリザリアはショウスケさんのように 完全に自然のゆりかごにゆだねられた存在ではありません。神にとってはリザリアを消すことは簡単な事なのです」

クロレラから 涙が流れた。

するとガネーシャが物陰から現れてクロレラの前で倒れこんで四つん這いになった。
ガネーシャの顔から涙が流れる。
クロレラはしゃがみ込むと ガネーシャを優しい手つきで撫で始めた。
「ガネーシャ様、あれはただの説明ですよ。私はあなたと一緒に旅ができて幸せです。でも もう少しわがままを言ってくださってもいいのですよ。オナラでは優しいガネーシャ様の品位が下がってしまいますから」
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