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第8話 ビスナトの村の祭り1日目

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ははは・・
ショウスケは テントから起き出すと
昨日の夕食は可笑しかったとリザリアとドワーフたちの踊りを思い出し笑いして
種火に残しておいた炭に小さな薪をくべる。

ポ ポ ポ・・。

ヤカンに火をかけてお湯が沸くまでの間、静かに目を閉じると鼻から森の空気が入ってくる。
肌にもヒンヤリとした冷たい空気がマッサージするかのように心地よく刺激していた。

お湯が沸く音が聞こえてきた。。

グツグツ グツグツ・・

閉じられた瞳のスクリーンには 再び機能の光景が映し出される
「フン♪フフン♪ フン♪」

はっ!っと気が付くといつの間にかに 昨日のシャワーの流れる音のリザリアに妄想を掻き立てられていた。

「お湯が沸いた音だったのか?似てないよな」

気を取り直してヤカンのお湯でコーヒーを淹れ始めると「おはよう ショウスケは早いのね」と言って香りにつられて起きてきたようだ。
俺は挨拶を返すとコーヒーを落とすドリッパーを取り換えてリザリアのコーヒーを先に淹れ始める。

「飲んでみてくれ?」

改まった様子に首をかしげたが一口飲むと「前より飲みやすいわね」と気が付いたようだ。
「実は ドリッパーの穴の数を増やしたんだ」とドリッパーを双眼鏡のように覗き込んだ。
穴を見ると一つ一つからリザリアや森の景色が見える。
リザリアも貸してほしいとドリッパーを覗き込んで「クスクス」と笑っていた。
そんな姿を眺めるショウスケは リザリアのあどけなさに微笑みを浮かべる。

ただ 二人で飲む朝のコーヒーもいいかもしれないと満足感に浸ってみても
村に着いたリザリアとの旅はそこで終わってしまう。
引き留めないのか? だけど何のために引き留めればいいのかがわからない。
このドリッパーは リザリア専用のドリッパーで村に着いたらプレゼントしようと考えていた。

「村に織物屋があったら羽衣を直すのか?」
「そうね。直せるならそうしたいわ。それよりショウスケ」

リザリアは 俺の頭の匂いを嗅ぎだした。
クンクン クンクン

臭いのか?いいや 昨日はちゃんと洗ったから大丈夫、同じシャンプーを使ったのだからリザリアと同じ匂いがしているはずだ。

「さっきまで 何をしていたの?」
火を起こすところから一通り話をしたけどそう言うことじゃないらしく
キャンピングカーの中で 魔力を感じて目を覚ましてみると俺がお湯を沸かしていたのだと言う話だった。

「魔力?じゃぁ マインドフルネスかな?」
「きっと それよ。あなたから森の匂いがするの」
「・・・そうなんだ」
「そうよ。それがショウスケの魔力の源になっているの。だから本当のショウスケは何百歳なの?」

何百歳?
この自然に身をゆだねて魔力を吸収する魔術は、例えば昆虫のセミが最後の7日間を地上世界で楽しむように
大賢者のなかでも、もうじき土にかえるような高齢の賢者のみが使えるようなレアな魔術らしい。
「調べておいた方がいいわ」
「い・痛ててぇ」

リザリアがホホを引っ張ってきた。
俺よりも何百年も年上のリザリアから見れば生まれて間もない俺がこんな力を持っていたのだから 羨ましいのか?
だけど ホホをツネ終わったリザリアの顔を見ると ホホをほんのり赤らめてスッキリした顔に見えた。
「教えてあげるわ。自然体でいることは 実はとても難しい事なの!」
なんか 説得力はなかったけど、でも 魔力があるなら魔法が使えるかもしれない。

「ショウスケ ビッツさんたちも一緒に村まで行きたいって話をしてたのよ。散歩がてら迎えに行ってくるわ」
「散歩か いいな。でも 俺は片付けがあるから行ってきてくれ」

そして リザリアはいなくなった。
俺にもファンタジーが起きていただなんて 試さずにはいられない。
鳥肌が立ち腕が振るえる。
GAME好きだったあの頃に戻ったみたいだ。。

俺は両手にこぶしを作り 腰のあたりまで下げると気合を入れた
はぁーーー!
両手を前に突き出す。
「行くぞ! キラウエア・ファイア!!!」

色々と試してみたけど 魔法は発動しなかった。
そもそも この世界の魔法って見たことがなかった。

・・・・
ガサガサ 昨日ビッツさんたちが通った道を進めば採掘所の小屋まで続いているはず。
村には初対面の人たちばかりよ。
私が気付かなかったらショウスケは どうするつもりだったのかしら?
「それにしても 遅いわね」

ガサガサ
「久しぶりね リザリア」
「あなたは シアノバ?どうして?」
ローブを被ったシアノバは 人差し指を口元に持ってくると
「手短に聞くわ。あなたはショウスケを狙っているのよね?」

「ええ」

「よかった。だって恋人同士みたいですもの。驚いたわよ。ふふふ」

シアノバは去っていった。

ガサガサ
「よお!姉ちゃん 迎えに来てくれたのか?」

ロバにまたがったビッツたちが現れた。
ロバに乗っていても 茂みに隠れるくらいの背丈しかないようだ。
・・・・
「行くぞ! マウナロア・ファイア!!!」
「何やってんだ兄ちゃん??」
「ショウスケ・・・」

見られてしまった。
鳥肌が解けて冷や汗が湧き出してきた。
村に向かう途中で 会話は魔法の話になった。
俺は自動操縦なのにハンドルを離せない。 

「姉ちゃんは 兄ちゃんにルーンの説明をしてなかったのか?人が悪いぜ がはは」
「あら ルーンだなんてよく知ってるわね。もしかしてビッツさんも魔法を?」
「いいや 結構昔の話になるが村に魔導士の婆さんがいたのさ 」

cabin02のハンドルを強く握ると 慰めてくれるかのようにハンドルが涼しく冷却された。
ビッツは長いヒゲをさすりながら目を細めて楽しそうだ。
「ビスナトの村さ・・・ああ そうさ。村には孫たちがいてナスビパンが大好物さ。可愛い孫だぜ。がはは」
「可愛いお孫さんか?それはいい。ナスビパンって昨日のディップが入ってそうだな」

「よくわかったな 兄ちゃんはパンに詳しいんだな」
「・・・昔 ちょっと手伝っていたことがあってね」

村は ドワーフが多く住んでいて今の時期は異種族も 多く訪れていると言う。
だけどリザリアは村人や家族の話になると時々暗い顔をしていた。
「・・ 村には大切な人達が沢山いるのね。やっぱり・・。」
もしかしたら 神のイカズチの事を気にしているのかもしれない。
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