キャンピングカーで異世界の旅

モルモット

文字の大きさ
上 下
1 / 29

第1話 未来の新型キャンピングカー

しおりを挟む
「何するんだ!」
テレビの画面が真っ暗になりコンセントを抜いた本人の顔を見上げると激怒して顔を真っ赤にしている母親だ。
「ショウスケ!ゲームばっかりやってたらコミュ障になっちゃうわ。友達ができなきゃ彼女だってできないのよ!!」

そのまま引っ張られてドアの外へ 追い出されドアをしめられてしまった。。
実は父親の仕事がうまくいってないみたいで それで最近は母親までカリカリしているのかもしれない。
いっそこのまま1日くらい家出したほうがいいかもしれない。
いいや 無言で家出は・・ それはまずいだろ。。まてよ・・。
俺はキャンプ道具を取りに家に戻ることにした。

「キャンプ道具あったよな?。俺キャンプ行ってくるわ」
「どうしちゃったの?」

息子のトンチンカンな言葉にドアを開けてくれた母親だったけど キャンプ道具の用意を始めると感心したかのようにタオルなんかを用意してくれた。
でも 俺の目的はちょっと違う。
近所に無料のキャンプ場があって誰にも邪魔をされない自分だけの部屋を作ることができる

「GAMEなんて どこだってできるんだから!ははは」

プシュッ!!

俺はスマートフォン片手に切り株に座り 缶コーヒーを開けて勝利の乾杯をした。
「キャンプ最高だぜ!ヒャッホイ! GAMEの中に俺の友達はいる。そして彼女だって・・ おっとそろそろイベントの時間かな?」

そんなとき 声をかけ来た人がいた。
「大丈夫か? お前のテント潰れてるぞ」
振り返ると 折り紙のように倒れたテントの姿があった。
「えええ!」

見たところ 20代のおじさんだろうか?無精ひげに伸びた髪
品は良さそうなのに 無理してホームレスしてますって感じの人だった。
「おじさん誰?」
「オレの名前はカムイ。テント張りなおすんだろ?手伝ってやるよ」

だけど 俺のテントの部品は足りなかったらしく張りなおすことができなかった。
でもカムイが泊めてくれるという話になった。
夜になって焚火を焚くとオレンジ色が俺たちを照らす。
ドリッパーから滴るしずくが琥珀色の特別なものに見えた。

「これが コーヒーなのか?」
「ああ そうさ これがキャンプコーヒーだ。器が熱いから気を付けて・・」
「アッチ・・アッチ・・ でも 大人の味だね」
「そうだな。確かに大人の味だな。じゃぁ 今度は大人の話をしようか?」
「カムイって大学生くらいだろ?大人の話って・・へへへ」
「こう見えても社会人だ。 それより・・」
大人の話と言っても俺の話ばかりだった。
カムイは 大学生っぽい感じがしたけど 自分の事を話すのは得意じゃないようだ。
「・・・ははは。電源を抜かれたのか?オレも昔やられたことがあるぜ。そうだ キャンプを始めたのも何かの縁だ。コレに行ってみないか?」
一枚のビラを渡された。
「未来のキャンピングカー cabin02のモーターショーだって?」
未来という言葉がGAMEに重なるところがあって ロボットに変形しなくても行ってみる価値があると思った。

・・・・
モーターショーのお姉さんの司会に胸が高まる。
「それでは 未来のキャンピングカー「cabin02」のお披露目です。カーテン オープン!!」
喝采と拍手の中cabin02は姿を現した。
パチパチパチ

「うわ~ これが「cabin02」か すごい すごいよ。カッコいい」
学生の頃はすごいの一言だった。 
けど 俺に神が舞い降りた。
そして 手紙を書いた。
「拝啓 cabin02の開発者様。あなたは天才だアインシュタインだ!・・」
だけど 返事が返ってきた。「・・・君ならできるさ。挑戦でうまくいかなくてもそれは失敗じゃない・・」
それから俺はGAMEを全部売った。
・・・・
「そうなんだ カムイ。 GAMEを卒業したんだ俺わ!」
「へぇ~ 思い切ったじゃないか」
「そしたらGAME仲間から 無理だとかコミュ障になるって言われたよ。あと バイトも始めたんだ」
「急にどうしたんだ?すごいじゃないか?それで何を始めたんだ?」
「パン屋さ」
パン屋は学校の近くで 昔は賑わいがあって大きな釜のあるパン屋だったけど
今はお客も少ないし おやじさんも苦労のせいなのか ハゲていた。

「ショウスケ 窯の中を覗いてみろ?ソーセージがカエルに見えるだろ。ははは」
「ソーセージにしか見えませんよ。ははは」
・・・
店番を任されることもあって
「ショウスケくん?私よ 担任のサクラ。働くのは大人になってからで十分よ。それより部活に入らないとぉ コミュ障になっちゃうわよ。聞いてる?」
「イイエ ヒトチガイデス・・」
先生に見つかってしまったりと 色々あったけど卒業の日がやってきてお世話になったパン屋に向かった。

「3年間 お疲れ様。ショウスケにはケーキを作ったぞ」
「これわぁぁぁぁ・・・ cabin02のケーキだ! うわぁぁぁん おやじさん!!」
「がんばれよ。うちも潰れないように頑張るからよ ははは」

男同士で抱き合った。そしてブラック企業で頑張って行こうと決心も付いて意気揚々と家に帰った。
だけど 家の中の様子が明らかにおかしかった。

「ショウスケ・・お父さんの会社潰れちゃったの」
「すまん ショウスケ。生活費の事だが・・」
暗い話だった。

アルバイトで稼いだお金ぐらいじゃ生活費の足しにしかならないだろうけど 両親に通帳を渡した。
家に居づらくなったからキャンプ場にやってくることが増えたそんなある日。
焚火を焚いてコーヒーを飲むことが出来る
オレンジ色の光に揺られながら ドリッパーから一滴 一滴と落ちる液体を見ていると自分の価値感に浸っているような気持になった。

「よう やってるね!」
「カムイじゃないか? コーヒー飲んでいくだろ?」
「ああ でもその前にショウスケ。君に頼みがある」
「改まってどうしたんだ?金はないぜ」
「ははは 安心しろ。駐車場に行くだけさ」

駐車場に着くと キャンピングカーが一台止まっていた。
「これは・・」
「もちろんcabin02さ。 改めましてショウスケ。オレがcabin02の開発者だ」

絶句するしかなかった。
何度もメールを送った開発者がキャンプ仲間のカムイだった。

「実は オレは外国で勉強をやり直そうと考えている。cabin02が出てから03も04も開発されたけど 実は02とほとんど変わらないんだ。」

カムイは コブシを作るとキリリとした顔つきになり急にすごいヤツに見えた。
「だから 私は02を超える車を造るのさ!!応援してくれ」

俺は カムイにcabin02を託された。
詳しくはモニターとして働いてくれと言うことだけど ブログを書いて広告収入を得られるようなキャンプをしろという内容の仕事だった。
俺は カムイに抱き着いた。
男と抱き合うのは2回目だ。

カムイが外国へ行ってから 山や温泉地をめぐってキャンプをしながらブログを始めてみた。
そうだ 今日は海に行って波の音を聞きながら眠ろう。

パソコンを立ち上げて 「海の子守歌で眠ります」と書き込むと
「いいね!」
「俺も行きたい」
とすぐに コメントをくれる人たちも増えてきた。
カムイからも「順調そうで何よりだ」というメールを貰っているけど やっぱり
もう少しだけ 面白いことが起こらないかな?
初対面が苦手な俺には 自分でイベントを企画するなんてことは難しいけど
でも ワクワクする体験はしてみたい。。
思いに更けてから パソコンを閉じて眠りについた。
・・・・
「あははは あははは いやーねぇ~そうなの? 笑わせないでしょ! クシュン!! 
あ~あ~ リザリアが悪いんだからねぇ 落っことしちゃったじゃないのよ」

夢か?いい加減な感じの人の声が聞こえるけど・・気のせいか・・。
・・・・
でも 目覚めて開口一番聞こえてきたのは「コケコッコー」の鳥の声、
あれ?カモメってそんな鳴き声だったっけ?
昨日は海にいたはずなのに ニワトリの声がする。
モニターを付ければ済むことなのに そんな事も忘れて車のドアを開けた。

そこには柔らかい日差しが差し込み、海の代わりに草木が生い茂り、土の道があった。
いったい何が起こったんだ?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

処理中です...