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旅立ち

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キジのキジーが柿の山の上空から帰ってきた。
「ケンケン」
「キジは飛ぶのが苦手なのに すまない。・・そうか ボスのサルサが昼寝をしている今がチャンスだな」

リーダーが眠っているうちに奇襲をかけようと 俺たちは突撃をかけたけど
柿の木に手を触れたそのとき!
手に柿の実が当たる。

「実った柿の実だと?」

「キキー」

ざわざわ

茂みが一斉に揺れ出して サルたちが現れ
あっけに取られていると
「ワンワン」

ワンダが吠える。
「あれ? ないぞ」

気が付いた時には 腰袋ごと団子を奪われていた

サルたちの キーキーという声が笑い声に変わり。
サルサが木の上に上がると 団子をこれ見よがしに食べ始める。
赤いお尻をペンペンと叩いて 山の中に消えてしまった。

「悔しい・・」

・・・・
「ははは モモルよ 今日もダメじゃったか」
「モモル 怪我だけはしないでおくれ・・ほ~ら 新しい腰袋だよ」

「おじいさん おばあさん。今日の柿の実です」
俺は サルサが投げつけてきた 甘い柿の実を一つ。手渡した。
団子を持っていった日は サルサが柿の実を投げつけてくるのは間違いないようだ。

まさか アイツなりのレイなのか・・? 
いいや 違うな。試されているような気がする。
「いいだろう。元地球人の力を見せてやろうじゃないか」

次の日

いつものように柿の山へ
準備を整えると キジーとワンダの代わりにおじいさんがやってきた。
「モモルよ。 ワシが召喚士だと言うことはわかるな?
実はな。こわ~い鬼が現れるようになって おばあさんがモモルを心配しておるのじゃ。
今日はワシの力を最大限にお前に貸してやることにする。
じゃから 今日の柿狩りが失敗したらもう 諦めてほしいのじゃ」

ピキピキピキ!!!

おじいさんは 両手にコブシを作ると 二つの魔方陣を展開させて
キジーとワンダを召喚した。
二匹はいつもの感じとは違って りりしく見える。

「ワンだ!」
「拳 拳!!!」

「す・・すごい迫力だ」

「ほっほほ モモルは魔物を見るのは初めてじゃろう。改めて紹介するぞ。マスターチキンのキジーとワイドウルフのワンダじゃ」

「今日こそ サルサを出し抜くワン!」
「モルル サルサのやろうにかましてやろう拳!」

「こ・・言葉が話せるのか? よろしく頼む」

お婆さんは いつもよりも多めに団子を詰めてくれたし
旅立つ我が子を見送る二人の視線は熱かった。
「期待に こたえたい・・ 柿の実 楽しみに待っててくれ」
「モモルよ オレたちに任せるんだワン」
「そうだ拳! わたくしたちがサルたちを倒す拳」

俺の前を歩く二人は 自信に満ちており二人で作戦を立てようと獣の声で勝手に話始めた。
「まってくれ。サルサの狙いはわかっているんだ。逆手に取ろう」
作戦を話すと二匹は 納得してくれて茂みの中へ隠れた。

そろそろ いいだろう。

「サルサ!! 今日が最後の勝負だ!お前は団子が欲しいのだろ? 一対一で勝負しろ!」

すると茂みから柿の実を持ったサルサが姿を現した。
サルサは 柿の実を持ち上げると いつでも投げられる体制になってこちらへにじり寄ってくる。
一歩・・ また 一歩・・。

サルサが 柿を振りかぶって投げようとした瞬間
俺は左に体を交わす。

「キーキーキキ」
「なに?」

投げるマネ?フェイントだと?!

柿の実を投げなかった サルサは 柿をかかげたまま 一歩一歩こちらに迫り
へたり込んで後づさりをする俺に ねじり寄ると

トン

柿の実を俺の頭の上に乗せて 腰袋を奪い去ろうとした。
カチカチ

しかし 腰袋のカチカチという音を疑問に思ったサルサはその場で袋を開ける。

「そうだ! 石ころさ ははは」

「キキキキー!!」

サルサは 激怒した。

顔色がお尻と同じ赤色に染まると 左手を持ち上げる。

「柿の実だと? 隠し持っていたのか」
熟れてベトベトな感じの柿の実を隠し持っていたサルサは 俺の顔面に目がけてその柿を投げつけようとしてきた。

「サルサよ 後ろをみるがいい拳」
「いくら素早いお前でも この距離なら逃げられないワン!!!」

取っ組み合いのケンカになって 二対一なのに粘りを見せるサルサだったけど
ボスのサルサが 貧弱な声でキーキーと鳴くと
茂みの中から サルたちが現れ
俺の目の前に 熟れた柿の実を置いていった。
一つ・・また 一つ・・。

「ははは やったぞ おじいさんはとおばあさんだけじゃ 食べきれないぞ。」

悔しそうなサルたちに見送られながら俺たちは 優しい二人の元へ帰るのでした。。。

「何だこれは?」
「いったいどうしたのです拳?」
「ワンだと!!」

村から煙が上がっており あちらこちらが壊されていた。
息のある村人を助け起こすと一言じゃなして気絶をしてしまった。
「鬼だ・・ 鬼が現れて おじいさんとおばあさんがさらわれた」

家に走って帰ると家が潰れて 無くなっている。
「なんてことだ」

他の村人を助けると鬼が柿の山の方へ向かったと教えてくれた。
「入れ違いになったワン」
「まだ 柿の実が目的なら間に合う拳」

柿の山へ向かった。
何度も向かった山だけに 地の利を生かせば二人を取り返すチャンスもあるかもしれない。

「拳 拳 拳!!!」

キジーが帰ってくると 理解できない言葉を喋る。
そして ワンダが俺の手を引いて足を止めた。
「モモル お前がただの子供ならここでお別れだ。お前は村へ帰れ。だが サルサを出し抜いた知恵が本物なら一緒に来てほしいワン」

キジーもこちらを見て コクリとうなずいた。。

俺は一歩を踏み出した。
「俺は 地球人だ!おじいさんとおばあさんを取り返しに行くぞ!!」

ワンダは俺の手を掴んだままたち膝になり
キジーも膝を曲げて 頭を下げた。

「オレたちは あなた様に服従します」
「おじいさんは まだ 生きています。私たちが消えない限り二人は無事なはずです。ですが急ぎましょう 山が大変なことになっているのです」

山へ向かうと 柿の山は燃え上がっていた。
炎は意思でも持っているかのように 水分を含んだ生の木を燃やす。
そして 倒されたサルたちの中に一頭だけ 放心状態で立ちすくむサルがいた。

「サルサだ ワン」

声が聞こえた方向に向き直ったサルサは 俺たちを見て死んだ目をすると
再び空を見上げた。
すべてを失ったかのように。

俺はサルサの前に近寄り 腰袋を差し出した。
「俺は 鬼を倒しておじいさんとおばあさんを取り返す旅にでる。仲間になるならこの団子をお前にくれてやろう」

サルサは 団子を受け取り
一本 一本と団子を食べ始めた。
食べるたびに 目から涙がこぼれていく。

ザザザザ ジュジュジュジュ・・

にわか雨が降り出してきた。

「我が名は サルサ。モモル様。神猿である私の力をお使いください・・。そして 仲間のカタキを打つために旅に加わることをお許しください」

「わかった 許そう。。いいや ともに戦おう」

4人は 決意を胸に硬い絆で結ばれたのでした。
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