積立NISAのすれ違い(アプリと一緒に妻を取り戻す話)

モルモット

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積立NISAのすれ違い(アプリと一緒に妻を取り戻す話) 5 最終話

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A子「あ・・あの どうして?」

A子は始めこそ自分の想いを邪魔されて絶望した顔だったが すぐに人としての良心に芽生えたのか目元が震えだし怯えているようだった。 止められると思ったのにつかみどころが悪くて そのまま刺さるとは予想外だった。
そして このフォーク、すっぽり刺さってるぞ。。

ピョンタ「ねえ ちょっと お話ししたいので廊下に行きませんか?」

フォークが刺さったままなので、いきなり抜いて流血しても困る。 
俺とA子は気づかれないように 寄り添うように 歩いた。A子からいい匂いがしてくる。
寄り添うようにゆっくりと廊下の方へ歩いていくと、みんなが俺を羨ましそうな目で見送ってくれた。
言葉こそ発しないが クラッカーやグラスを軽く持ち上げて「お幸せに」と言わんばかりだ。
そうだろう そうだろう。だって こんな若い子と・・って、イヤイヤ ちょっと待て!フォーク刺さってるだけですからねぇ。 奇麗に見えますか?血のお花しか咲かせられませんけどね。

結局廊下で フォークを抜く訳にもいかないと言うことになってトイレットペーパーと水のあるトイレでフォークを抜いてみた。
俺がフォークを両手で握り、A子はティッシュペーパーを両手いっぱいに掴んで出血時にすぐに抑えられるように構えていた

「いくぞ」
「うん!」
スパッ!
意外だったけど 腫れあがっている割に血はほとんど出なかった。
とんでもない目に合ったが これならパーティーに戻っても問題ないだろう。
いきなり手持ちのすべてのチケットを渡してしまうような、A子にも問題はあると思うけど、素敵な人に出会えたのならきっとこの子はいい奥さんになるだろう。
年のせいなのか、彼女の幸せそうな未来が目に浮かんだ、もう責めようとは思わなかった。

「じゃぁ 俺 行くから。 ロビーでお茶でも飲んで落ち着きなさい」

俺にはやらなければいけない事がある。
もう チケットを10枚集めることは時間的に無理だろうけど、でも諦めちゃいけない気がする。
NISAに積み立て続けた人生は 未来のために今を諦める人生だった。
いいや 違うか。NISAを理由に人生を逃げてきたのは俺なんだ。自分にけじめをつけなくちゃいけない!! 

A子「うわぁぁぁぁぁぁぁん どうして。どうして私の人生っていつもこうなの?やっぱり、占い師の言う通りだぁわ。私がお守りを無くしたのが悪かったのね。うわぁぁぁぁぁぁぁん」

A子は 泣きじゃくった。でも A子の言っていることは違うと思った。

ピョンタ「そうかな? 本当に (いつもこんな人生)だったのかな?A子さん。君の人生を話してごらん」

A子は疑うこともなく 素直に自分の人生を語り出した。
ちょっと せっかちな性格だけれどこの子はやっぱり 
つまり与えることが好きな人。神様のような性格だ。
でも それだけに付き合う人間関係には気をつけなくちゃいけないし
占い師と出会ってからの人生は 地獄じゃないか。

ピョンタ「見えてないのか?」
A子「何がですか・・?」

ピョンタ「人にすべてをあげてしまうことは簡単な事なんだ。気分もいいよね?でも それじゃ 一方通行のままじゃないか?人間関係と作るということは。相手を幸せにしつつ、なおかつ自分も幸せにならなくちゃいけない。そういう難しい事なんだ」

老後の資金だけじゃ 生活できないから婚活を始めたような俺とは思えないセリフだ。

A子「そんな計算高い生き方は。。苦手です。。それに チケットも失って。誰も私とお話しをしてくれないの!! 結局チケットがなかったら 私なんて何の価値もないの!お守りを無くした時に占い師にお守りがなくなったように、、あなたは自分の価値を無くしていきますと言われたわ。色々やったけど。もう ダメなのよ」

それは 占い師の言う通りに色々やった結果だろ。っと口から言葉が出てきそうになったけど
それで伝われば 人生は苦労しない。

ピョンタ「お話ししたい人がいたのに相手にされなかったんだね。でもそれはパーティーのルールだから仕方がない事だよ。だけど もう大丈夫。ほらぁ、チケットならあるよ。これを受け取って・・・だから自信をもって話すんだよ。」

チケットをギュっと 握らせた。
A子の手は冷たかったけど 確りとチケットを掴んでくれた。
これで うまくいくかはA子しだいだけど チャンスの数が増えればきっといいこともあるだろう。
さあ ヒロヤを探してチケットを売ってもらうかぁ!

俺はトイレのドアを開けた。

ヒロヤ「あ! いた! 師匠、どこに行ってたんですか?そろそろ戻らなくちゃ 告白タイムが始まっちゃいますよ。」

ガチャン!!!!

俺が出た後にトイレからA子が出てきた。

ヒロヤ「あははは ピョンタ師匠ぉ~ もうぉ~ どんだけ好きなんですか!ちゃんと仕事してくださいよ!」

若造に「ちゃんと仕事をしてください」と言われるとなんだかムッとするな。
それより チケットを売ってくれとヒロヤに交渉してみた。

ヒロヤ「あれれ? 欲しかったんっすか? もう売っちゃいましたよ」

ピョンタ「誰に売ったんだ?」

聞く意味がないかもしれない。

ヒロヤ「ああ 結婚詐欺やってるヤツっす。オレ あいつは大っ嫌いなんすけど!でも大金を出すっていうからつい・・」

結婚詐欺師が 大金を出してでもチケットを手に入れたい理由は・・トモちゃんしかないだろう。
急がなくちゃいけない。。知らせなくちゃいけない。。 
トイレから会場まではそれほどの距離じゃないけど 走っても会場が遠い・・
うっ・・ さっき 刺されたところが痛い・・ あ!風船のように腫れあがってきたぞ・・。
足が重い・・。

司会者「それでは 告白タイムに移らせていただきます。今回の栄えある1位は50枚のチケットを獲得した詐欺男様です!パチパチパチ」

薄暗い会場にたどり着くと 司会者の合図とともに 詐欺男と言う男とトモちゃんにスポットライトが照らされていた。

ヒロヤ「あ!アイツ 50枚もチケットを集めていたのか?トモちゃん元社長ってどれだけすげぇ女なんだよ」

詐欺男「トモちゃんさん。雑誌であなたのことを知ってから私はあなたのファンでした。あなたの様になりたくて私は 色々な人たちと交流をし、そして事業で成功したのです。そのコミュニケーションスキルで50枚ものチケットを集めることが出来ました。あなたのおかげです。これからはあなたを幸せにしたい!付き合ってください」

詐欺男の告白と共に、空からバラの花が降ってきた。
いい香りの演出と音楽が流れた。なんて いい演出なんだぁ トモちゃん・・トモちゃん・・。

ピョンタ「ちょっとまて!!!!」

司会者「ほほぉ~ 」

俺は 詐欺男の前に割って入り、詐欺男のスポットライトを横取りした。

司会者「ピョンタ様、ピョンタ様はチケットを何枚お持ちでしょうか?50枚以下なら お下がりください。。。」

司会者は 俺の腕をグイグイと強い握力でつかんできた。
電気が流れてきたように動けない・・ なんだぁ この司会者。

トモちゃん「いいわ 放してあげて! 話だけでも聞いてあげようじゃないの」

司会者「それはできません。 ルールですから」

トモちゃん「そう。じゃぁ こうしましょう。詐欺男さん!チケットには女性たちの想いが込められているの!50枚の想いを ただの自分のスキルだと考えているあなたとはお付き合いできないわ。ごめんなさい」

詐欺男は 状況が理解できないようだ。キョトンとしている。

司会者「残念ですが 詐欺男さまは脱落です!それでは ピョンタ様。チケット確認させてください。」

トモちゃん「あなた チケットはどうしたのよ!私があげたじゃない」

ピョンタ「それが・・色々あって、ほんと 色々あって一枚も持っていないんだ。てぇへぇ」

トモちゃん「はぁ??」

トモちゃんはポカーンとした顔になった。そして 俺にはトモちゃんの前に立つ権利がそもそもない事になる。

するとA子がスポットライトに入って来て 俺からチケットを貰ったことを話し始めた。
ピョンタ「A子は泣いているのか・・」

A子にとって 親身になって話を聞いてくれたのはピョンタと占い師だけだったらしい。
その話が終わると パーティーで俺と話したことのある女性たちも「ピョンタは話しやすかったわ」と高評価をくれた。

※※「私のチケットを使って!」

※※「私 使わなかったチケットがあるから ピョンタにあげるわ!頑張って!」

とチケットを片手に掲げる女性が現れ始めた。

トモちゃん「どうやら 話をする権利を得たようね。みんながあなたにチケットを渡したがっているようだけど・・本当に 私でイイのかしらぁ?」

トモちゃんは 外国コメディーのように首を傾げた。

ピョンタ「もちろんだよ。今回のことを通して俺は気が付いたんだ。将来のためとか・・積立NISAを積み立てることで 今を生きることを逃げちゃいけないって!小さなキャンピングカーになっちゃったけど。君と旅がしたい・・。どうか 俺との頃の人生を生きてください」

頭が下がってきた。本当に気持ちを伝えたいときは 稲穂が頭を垂れるように頭を下げてしまうものなんだと知った。

トモちゃん「ねえ 今みたいな言葉さ。私たちが付き合い始めた頃にあなたが私に言ってくれてたのよ。」

頭を下げている俺の肩を掴んで起こし上げてきた。
トモちゃんの顔は 涙でウルウルしていた。

トモちゃん「やっと帰って来てくれたのね、おかえりなさい。あなた・・。」

会場は 抱き合う俺たちに歓声と拍手を贈った。

エピローグ・・

俺たちは 小さなキャンピングカーを買って日本一周旅行を始めた。
A子は素敵な男性に出会えたようで 男性はA子名義で積立NISAを始めたらしい。

トモちゃん「次の温泉を目指すわよ!!」

ピョンタ「運転よろしく!!」

アプリ「了解しました! 最適な電力で最適な運転を提供いたします。それから報告があります。Youtubeの広告収入が月30万円を超えました・・・」

老後の旅は まだまだ 続きそうだ。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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