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第10話 最終話、幸福のギフト

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ニワトリの声で目を覚ますと 爽やかな朝日と清々しい霧がボロな小屋の隙間から刺していた。
空気が澄んでいて、ここが墓場だとは思えない。

ジェニーは俺の方を向いて 赤ん坊の様に眠っている。
誰かが守ってあげなきゃいけないけど、それは俺じゃないんだな。
人形を入れるガラスのケースのような壁があるようで ジェニーを触ることはできなかった。

それにしても 清々しいぞ。
神父様じゃないけど 聖なる気を感じてしまいそうだ。

小屋の外に出てみたら あのアンデットが出るほどに荒れていた墓地が奇麗になっていた。
足元を見るとそこにあったのはモルモットのフン。
いたるところに 浄化の効果を宿したフンが落ちていた。
「これじゃ さすがのアンデットも浄化されてしまっただろう」

「おはよう トシユキ」

ジェニーも起きてきて お墓の様子に驚いているようだった。
モルモットたちを使えば こうやってギルドの依頼をこなしてお金を簡単に稼げると話すと
「じゃぁ トシユキと結婚すればよかったわ・・残念 ふふふ」と冗談をいっていた。
朝日に染まるその青い髪、可愛らしいその笑顔はきっと 誰かを幸せにするためにあるんだね。

早朝の元気いっぱいの この瞬間に一世一代の召喚術を披露するしかない。
「実は8匹目のモルモットを召喚できる力が俺にはあるけど 実は一度も成功したことがないんだ。
これから すべての魔力を消費して8匹目を召喚するから見ていてほしい。失敗して気絶しちゃうかもしれないけど。ははは」

「召喚術を見るのは 初めてよ。見てあげる」

地面にサークルを書いて準備をしてみた。
サークルがあれば 意識を集中しやすいと思って書いてみた。

「尊き命の結晶よ、その姿をこの地に表せ!モルモット召喚!!!」

出てこない?


ん?

ドッバン!!!!

で~んと 煙と共に姿を現したのはツムジが7つあるモルモットだった。
初めて成功した

「おめでとう」パチパチパチ

モルモットには「幸せのギフト」という幸せを呼ぶスキルがある。
7つのツムジを持つこの子は ほかのモルモットたちより特別なはずなんだ。

「さあ この子をジェニーに受け取ってほしい。15歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう。私の誕生日はトシユキの次の日なのよね。 この子に名前を付けてあげなくちゃ・・」

こうして俺たちの関係は幕を閉じた。
気絶しなかったのは モルモットがアンデットを退治したせいでレベルが上がってたのかもしれない。
さて 帰ろうとモルモットたちを呼び寄せようと思ったそのとき

「おい! いたぞ!!」

黒い刀を持った男や大楯を持った男たちが走り寄ってきた。
その後ろからも ぞろぞろとくる人たちは 兵士たちだ。

ジェニーを小屋に隠して 俺は兵士たちのところへ駆けていった。
兵士たちはオレを取り囲み 黒い刀の男たちが前に出てきた。
「ジェニーを誘拐したのは お前で間違えないな?」
「ジェニーさんの姿がないところを見ると 昨晩はおたのしみでしたね。あなたにも死んでもらいます」
どうやら 俺を討伐する依頼が出ているようでこいつらは冒険者のようだ。
でも 本当に冒険者なのか? 何か・・違和感がある。

バトルが始まって 素早い動きで攻撃を繰り出してきたけど俺には届かない。
しかも モルモットの力で命中率がほぼ100%の「正拳突き」は 元々メタルなモンスターにダメージを与えられるくらい強力で鎧なんて簡単に砕いてしまう。

バシ!

ドーン!!

「ぐはぁ・・」

警戒した冒険者たちは 今度は距離を取って魔法攻撃をしてきたけど
無駄な事だ。
近距離の魔法攻撃ほど 隙の出来るものはない。
だけど 魔導士に 「正拳突き」を放つと大楯を持った男が魔導士をかばった。

さすがの「正拳突き」も大楯は 貫通できないか?
魔獣の骨なのか?どうやら 特殊な効果が宿っているようだった。

でも 俺には何も迷うものはない。
後ろに沢山の兵士がいても、持久戦なんて考える必要はない。
俺はここで 消えるから!

「体当たり!!」 

体力を消費する体当たりは 大楯の特殊効果を受け付けなかったようで盾を貫いて冒険者を吹き飛ばした。
 
冒険者たちはすべて倒したけど その後の兵士との闘いは消耗戦になってしまい
起き上がることも出来なくなってしまったころ。

あの聖騎士がやってきた。
昨日のアイツを知っている俺は アイツの顔を見ただけでアイツが娼館からの朝帰りだとわかった。
「転生者様たちを 倒したのか? 何と罰当たりな事をする奴よ!」
聖騎士は剣を抜くと 突きの構えをして姿勢を低くした。
「私の妻となる女を辱めた罪は 死をもって償ってもらう。死ね!!」

「まって!!」

グサ!

「ジェニー?」

俺の前に小屋に隠れていたはずのジェニーが現れて 聖騎士の一撃を小さなその身で受け止めた。

「ゆ。。ゆるして。。あげて?。。ぐはぁ・・」

「おお ジェニーではないか?生きていたのだな。だが・・お前の価値はその男に奪われた。もう お前はいらないのだ。 うりゃ!!」

聖騎士は 突進してジェニーを貫くとそのまま俺の体を貫いた。
俺とジェニーは串刺しになった。

「トシユキ・・」
「ジェニー・・」

聖騎士は剣を抜くと 剣を掲げ
「悪は去り なんじらは許された。」

人々は去り 二人は墓地の片隅で 永遠の二人切の時を過ごすことになった・・と思ったけど
おかしい?

「あれ? 私 刺されたはずじゃ?」
「そうだ。 服は破れているのに傷が消えているぞ」

8匹目のモルモットの効果によって 俺たちは助かったみたいだ
しかも 死んだことになっているしどうしたものやら。

「俺たち死んだことになってるよな」
「ねえ トシユキ。責任とってよね?」
「え? 」
「え!じゃないわよ。 私は帰る場所がなくなったのよ。どうしたらいいのかしら??」

「じゃぁ お菓子の階層のあるダンジョンを探しに行こうよ」

「そんなの、あるわけないじゃない ふふふ」
「ははは 知ってたんだ?さすが15歳だね」

俺たちは二人で街を出て 新しい街で農民と商人として末永く暮らしました。
プイプイ

おしまい。。
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