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俺って下手かな
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身体から始まった、同期の佐藤との関係。俺は佐藤の彼氏なんだと、勘違いしていたと思っていたら、佐藤も俺の事が好きだったみたいで恋人同士と確認出来たのは良かったけど……
佐藤はその後も相変わらずの様子だった。
俺たちが働いている会社では知らぬふり。目が合ってもやっぱりそらすし、こちらから挨拶しても張り付いた笑顔で他人行儀のまま。
ただ、いつも午後になると俺の携帯に連絡が一つ来る。
どちらの家に行くか、と言う内容。
今日は俺の所、と一言メッセージが来ていた。佐藤のマンションの事だ。
今までもお互いの家を行き来していたし、特別何も変わらない気がするが、思えば頻度が変わった。
佐藤の都合か1~2週間間隔があいたり、時には一ヶ月近く連絡が来ないなんて事もあったのにここ最近は毎日のように来ている。
佐藤が住むマンションの部屋は、広くて少し落ち着かない。この部屋で佐藤と初めてそういう行為をしたとたまに思い出して、いたたまれなくなる。
同性と関係を結んだ事など無かったから、今でも戸惑う事がよくあった。
二人で会うのは、俺のマンションの部屋になる事が多かったけど、佐藤の気分によって部屋は変わる。
恋人同士になってからも、佐藤が部屋で特に俺に甘えることはない。普段とあまり変わらない気がするから、少しくらいは甘えてきてくれてもいいのに、とも思う。
恋人が外でリアクションが無い場合、部屋で二人きりになった時に反動で凄く甘えてくる、なんてのが世間ではよくあるみたいだから期待したのにな。
でも、会社ではコーヒーばかり飲むみたいなのに、なぜか家ではココアをよく飲んでいるようだ。違う所と言えば、そこかな。
だだ広いリビングは、大きな窓に灰色のカーテン、何の変哲もないテーブルとソファーに、テレビ、ブルーレイ、パソコンなどの電化製品が置かれているだけ。
灰色のカーペットを歩くとふかふかで。どれも丁寧に掃除されているのかピカピカでおよそ生活感が無い。
そこにココアの甘い香りがして、それが違和感だけど妙に安心するのだった。
ソファーに居る佐藤に近付いて、隣に座る。やっぱり佐藤はココアの香りがする。
「お前、いつもそんななの?」
「え?」
「触り方。髪の毛、優しすぎるんだよ。俺の頭、さわるのか、さわらないのかハッキリしろよ」
佐藤のココアの香りを確認するために近付いていたら、いつの間にか佐藤の頭に触っていたようで、怒られた。
「ごめん……」
「前の女にも、こんな触り方していた?」
「それは……おぼえてないけ
ど」
「おぼえてない、か」
怒ったのかな?と思って佐藤の肩に手を置いたら、それを手で振り払われた。しょうがなく、俺は正面を向いて、座り直した。
勝手に触ったのは悪かったかもしれないけど、佐藤だって、俺が着替えたり屈んだりしている時に、俺の背中を触る。
俺が声をあげると、俺の手、冷たいだろって笑っている。冷たいから、頼むからやめてくれって俺が言うと分かったって頷くのに、またすぐ触ってくるんだ……
「そこは、もう一度俺の髪の毛を撫でて、自分の方を向いた時にキスをするのがセオリーだろ?」
「セオリー?」
「こうやって」
佐藤は正面を向いている俺の頭に触れて自分の方へ向けて、俺の唇に自分の唇を重ねた。そして時間を置いてから、そっと俺から唇を離した。
「ほら、どんな気分?」
「どこで、息継ぎを……」
「あー、もう!」
佐藤が声を荒げた後、俺の頭を掴んでやや強引にキスをして、今度は佐藤の舌がちゃんと入ってきた。
その舌が柔らかくて俺の頭の中はふわふわとした感じになった。
「さすがにしたくなった?」
俺はうんうんと赤べこみたいに首を振る。
「したい。やっぱり上手いな、佐藤、キス」
佐藤は何も言わずに、俺の額に自分の額を当ててきた。
いつも恋人同士が交わす行為は、佐藤の仕掛けから始まる事が多い。
俺からもキスをするけど、佐藤は俺みたいにキスをされてしたくなる事はあるのだろうか?俺のキスで?そんな展開があったか、よく思い出してみると無かったような気がした。
「もしかして、俺、下手か
な?」
「キスが、ってこと?」
佐藤は額を俺にくっ付けたまま、俺の質問に答える。
「え、キスが、って、俺が下手なのはキスだけじゃ……ないの?」
佐藤の顔色がサッと変わったのが見えた。かなり近い距離で見ていたから嫌でもよく分かった。
佐藤は俺から額を離し、代わりに俺の首筋に手を回して抱きついてきた。
部屋のどこからともなく時計のカチカチとした音が聞こえ、なんだか妙な空気が流れている気がしてきた。
「なあ、下手かな?」
耐え切れず、俺が再度そう聞いてみると、佐藤は俺の首に回した自分の腕に力を込めただけだった。
「そもそも、お前何人だよ」
「なんにん?」
「やった人数だよ」
そう言いながら佐藤は俺に抱きついている手を片方下ろし、下ろした手で自分の首元にあるネクタイを緩め始めた。
「えーっと……三人?いや、最後までいっていない子がいたから、二人か?」
佐藤は自分のネクタイをはずしてソファー脇のテーブルに放り投げた後、再び両手で俺に抱き付いた。
俺は佐藤に抱きつかれたまま腕を伸ばして指折り数えていた。
そのせっせと指折りしている俺の手を佐藤は掴んだ。
「それ、数える意味あるか」
「佐藤は?した人数」
「言わない」
そう言って佐藤は俺を抱きしめるのをやめて、俺の肩を押した。
俺は反動でソファーに倒れてしまい、起き上がろうとしたら佐藤が俺の身体の上に乗って、自分の身体をあずけてきた。
「ずるいぞ、俺は言ったから。佐藤のした人数、言えって」
俺は佐藤の脇を持って支えるようにして身体を起こさせ、目を合わせて強気にもう一度問い詰めた。
「言え」
「十人くらいかな、覚えてないって。その中で一番、いちばん……」
佐藤は俺に脇を持たれたまま視線をそらし目を伏せた。
「一番、何?いちばん……下手とか?」
「え?ああ……まあいいか、そんなとこ。風呂行く」
佐藤はおもむろに立ち上がって浴室の方へ向かって歩いて行った。
俺はソファーの上に起き上がって座り直した。これまでにした行為の経験人数、佐藤は10人、俺は3人、負けている。
また指折り数えながら、このまま佐藤に負けたままでいいのか。佐藤は上手い、俺は下手?首を下げて少しの間うなだれて考える。
ふとテーブルの上を見ると、佐藤のネクタイがだらんと置いてある。その横に、佐藤のスマートフォンを見つけた。
ちょっと借りようか?
検索エンジンだけ使わせて貰って、他の所は見なければ大丈夫だろう。
佐藤のスマホを手に取って、対策を探す事にした。ブラウザアプリをタップして、検索エンジンを呼び出す。
佐藤がシャワーから帰って来る前に、済ませなければ。どういう語句で探そうか。
セックスの、上手いやり方。うーん。
上手いって、言われるようなやり方を知りたい。
しばらく悩んでいたが、とりあえず彼氏と打ってみた。
彼氏、誘い方、喜ばせ方、下手、傷つけない、伝え方……あれ?
ずらずらと、続いて語句が出てきた。
その時電話の鳴る音がした。ソファーで飛び上がる勢いでびっくりした俺は、思わず佐藤のスマホを耳に当てもしもしと言ってみたが何も音は聞こえない。
音は部屋の隅から聞こえていた。スマホを握ったまま、その方へ歩いていくと部屋の隅に電話があった。子機を手に取って耳に当てる。
「はい、え?いえ、ここは山田って人の家じゃないです。え、佐々木でもないです。……電波が悪い?大丈夫ですか?もしもーし。もしもし?じゃあ山田さんの番号はって?いえ分かりません。俺ですか?吉田ですけど……山田さんの下の名前は?もしもーし」
電話に出ると、ぶっきらぼうな男性の声で、山田さんとしきりに電話口で呼ばれた。
俺は吉田だし、ここは佐藤の家だ。
「もしもーし」
「ちょっと」
「わあー!」
間違いだと電話相手に伝えようとすると、突然後ろから声をかけられた。
「何、間違い電話に付き合ってんの?」
振り返るといつのまにか佐藤が立っていた。
電話の子機を耳にあてると、もう電話は切れてしまったようでツーと言う音しか聞こえない。
「電話、切れたみたい。俺が大きい声出したからかな?どうしよう」
「切れたのならいいだろ?ほっとけよ」
「急な用事だったら……」
「いいって」
佐藤は俺から電話の子機を取り上げて、充電器の上に置いた。
佐藤からはココアの香りが消えて、いつものシャンプーの香りがしていた。
「で、俺のスマホを持っているのは何?」
しまった。電話に出ていたら忘れていたけど、検索をしている最中なのだった。
「か、借りて、検索していただけだから。ごめん、他は見てないから。信じて」
「いや、別に見てもいいけど。やましいものは無いし」
慌てて俺は姿勢を正して、佐藤のスマホを元のテーブルの位置に置きに行こうとしたら、佐藤は俺の肩を掴んでスマホも俺から取り上げて画面を見ていた。
「検索って、何を?」
「何をって……まあ、いいだろ、何でも」
「……言えない事?」
突然、佐藤が目を潤ませて不安そうな顔をしてみせたので、俺は思わず口を割ってしまった。
「あれの……上手い仕方……俺、下手、みたいだから……その」
俺が仕方なくそう答えると、佐藤は突然下を向いて手を口に当てて、肩を振るわせ始めた。
「くく、お前、ほんと……チョロいな。まじかよ、ははは」
佐藤はまだ手を口にあてうつむいたままだ。どうやら俺は笑われているようで、失敗した。
「……笑うことないのに」
「はは、ごめん」
恥ずかしくなった俺は姿勢を正したままソファーに向かい、とりあえず座って身の置き場を確保したが、佐藤は笑いながら俺の後をついてきたので軽く屈辱を感じた。
「……かわいいなお前。くそ、やりてえ」
佐藤は俺をかわいいと形容する事が多いが、俺の顔は不細工でもないが美男子でもない、フツメンだと思うので、
俺のどの部分が可愛いのか未だに分からない。
「ん?やるんだろ?今日」
そう佐藤に声をかけた俺が座っている前に佐藤が回り込んで来て、俺の前にしゃがみ、俺と目線を合わせるようにして俺の膝に両手を置いた。
「うん、やるけど。そっちの意味より、入れたいって意味。」
「入れた……ええ?!」
佐藤はニコと笑って、立ち上がった。
「冗談だよ。付き合う前からそう思っていたけど……諦めた。」
「あきらめた?!」
「うん。女しか抱いた事ないんだろ?お前」
佐藤は俺の手を取ってソファーから立たせた。それから、無理をさせたくないから、って呟いた。
俺は立たせてもらった佐藤の手を握ったまま、少し考えた。
「俺、佐藤が望むなら、俺……」
「ほら、そうなるだろ。いいよ、気にすんな。俺は別に入れようが受け入れようがどっちでもいいんだから」
佐藤はうつむいている俺の手を引き寄せて慰めるようなキスをしてきた。
その後笑っていたから、俺は佐藤に何かしてやりたいって思った。せめて……
「佐藤、俺さ、上手くなりたい」
「は?」
俺は佐藤の両手をぎゅと握って言った。
「佐藤は違うって、言っていたじゃない?いつもは入れる方だって」
「違う?何が?……ああ、それか、そうだよ。普段はタチで、ネコじゃない。
経験はあるから、お前よりは受ける方も慣れてはいるかな。お前とも結構やったし」
「きっと、俺よりかは上手いだろ。多分。だから……」
◇◆
「力任せにしても、だめなんだって、つけばつくほど気持ちがいいわけじゃない。声が出ているから、だって?」
うんうん、と俺は頷く。
自分がそういう行為をするのが
下手なんじゃないかって、実は前にも思ったことがあって、昔付き合った子に聞いてみたことがある。
その時に一回だけ、うんと頷かれた。
その時のことを思い出して、流石に昔よりかは幾分上手くはなっているだろうと思っていたのに、佐藤の様子から見ると、俺はまるで上達していないみたいで。
それで、佐藤に俺のセックスのやり方で悪いところを教えて欲しい、と頼んでみたのだ。
俺もシャワーを浴びて、リビングで何やらスマホを見ている佐藤を後ろから抱きしめ、寝室へと誘った。
佐藤もその気はあったようで、今日は上手く出来るのではないか?そう思ったのだけど……
「どうしたの、浩一、早く来いよ」
こういちと言うのは俺の名前だ。佐藤は少し前から俺の事を浩一と呼ぶようになった。
「アレは、どこだっけ。えっと」
アレと言うのは挿入時に装着させるアレの事だ。
「いいよ、別に。つけなくても」
「お前が体調を崩したら駄目だから」
「……そこに無かったら、その下」
「あった!」
ベッド脇の引き出しを探って、お目当てのモノを見つけた。佐藤が、じっと俺を見つめているので、どうしても焦ってなかなか包装が破けない。自分の口に当てて、カッコよく破けたらなあといつも思う。
「浩一、大丈夫?つけてやろうか?」
「大丈夫、いけた!」
やっとつける事が出来たので、慌てて佐藤の上に覆いかぶさる。
「時間、かかり過ぎ。……くすぐったい」
佐藤が上に乗る俺の口に手をあてて笑ったので、がっつくなと言われているような気がした。
他の奴は、好きな人に見つめられて、それでもスマートに出来たりするのだろうか。
その後やっと挿入出来た所で、力任せにするなと早速指摘をされたのだった。
挿入して動いている最中、相手の声が出ているのだから気持ちがいいはず、誰でもそう思うだろう。
「声か、ほとんどが演技の可能性がある。よく見ろ」
寝室にある広めのベッドで俺の下に横たわっている佐藤が、手を伸ばしその手で俺の頬に触れていた。
俺が佐藤の顔の横に手をついて体重をかけると少しベッドがきしむ音がする。
「演技かどうか、本当に感じている奴など全体の三割もいるかどうか。眉が寄ったりしているのか、手に力が入っているかどうか、
ベッドに相手の体を押し付けるふりをして、手を触れ。首を触って、相手の身体の温度を確かめるんだ」
俺は頬に触れられている佐藤の手をつかんでから、佐藤を上から抱きしめてその首元に顔を埋めて見た。
自分の顔に感じる佐藤の体温は温かくて、実家にいた猫を抱っこしていた時のことを思い出した。
「うん、佐藤あたたかい、でも熱はなさそう」
「そんなあからさまな触り方があるか」
佐藤の首元から顔を上げて佐藤を見た。佐藤は少し顔が赤らんでいる気がしたけど、行為の熱が上がってきただけだろう。
「感じると、反対に声が出ない可能性もあるかも。……俺の経験からか、だって?」
うんうんと俺は頷く。
「言う必要あるか?」
あるあると、俺はまた頷いたが、結局佐藤は言ってくれなくて、さぼるなと言いたげに俺の腰を軽く叩いただけだった。
「力任せにして、じきに良くなる時もある、だけど相当慣らしている人じゃないとただ痛みが増していくだけだと思う。
そうなると、次何だかしたくないな、みたいな気持ちになる。それでも好きだから応えないと、みたいになる。する、痛い、悪循環だ」
「強弱をつけるんだ。そう、止めてみる、時間を計れ」
佐藤があまりにも喋ってくれるので、やっぱり気持ち良くないのかなと俺が身体をかがめてキスをしようとすると、佐藤が目を見開いた。
「いいぞ、そのまま!真っ直ぐ!」
身体をかがめたから、挿入して当たるところが変わったのだろうか。
佐藤は表情の変わらなかった綺麗な顔を一変させて、俺の腕を掴んできた。
「あはは!なんか、自動車教習所の教官みたいだな佐藤。免許を取った時を思い出す」
「あっ、笑うな!せっかく来そうだったのに、くそ!またポイントがずれた」
佐藤がそう叫んだひょうしに、俺は佐藤の中で果ててしまったのだった。
「……ごめん、佐藤、いけなかったの?」
俺がそう聞くと、佐藤はベッドから起き上がって、その場から離れようとしたから俺は佐藤の手を掴んで引き留めた。
「佐藤、終わったらすぐそうやって……ここ、座って」
「終わったんだから、いいだろ」
「もう少しだけいい?何もしなくていいから」
引き留めた佐藤をベッドに座らせると、佐藤はイラついた表情を見せた。
「あー、もう。浩一のそばにいると、また、したくなるから。エンドレスに終わらない」
「え?」
俺の隣に座った佐藤は、俺の腕に自分のひじを当てて俺をにらんできた。
「だからだよ。すぐ終わったらシャワーしに行くようにしてるんだ。そこで切る、食べた後、歯磨きをする、あんな感じで強引に切るんだ」
「でも、俺、下手だろ?だから、佐藤は呆れて終わった後に
すぐ行ってしまうのかと思ってた。今日、最後いけなかったんだろ?」
「……いいよ、いく事が目的じゃないし」
佐藤はこう言ってくれたけど、もしかして今までも何回か、いけない事があったのだろうか?
そういえば、佐藤は何回もしているのに俺を下手だと責めた事は無い。
「佐藤は俺が下手だって、分かっていたんだよな?なんで、言ってくれなかったの?」
「いちいち言うか?面倒」
「そっかあ……」
「気にしてるんだろ」
「うん……」
「そんなに、下手でもないよ」
「そうかな」
「ちょっと、下手だけど」
「やっぱし」
「佐藤さ、今までもいけない事あった?俺で?」
「あった」
「い、いつもじゃ……ないよな?」
「いつも、ではないよ」
いつもいけないわけじゃないんだ。良かった、とホッと胸を撫で下ろした俺に、佐藤は続ける。
「技術が無いなら、雰囲気を作ってみろよ。俺の脳みそを感じさせる為に」
佐藤は俺の顔を覗き込んでから、自分の頭を指でトントン叩いた。
「俺の頭を感じさせて、痛みを快感に変えるんだ。脳内麻薬を出させるんだよ。ここから、俺の頭の中から」
俺がそう言われて佐藤の頭をボーっと見ていると、佐藤の中指で額を軽く弾かれた。いわゆるデコピンってやつをされた。痛かったので、俺は自分の額を撫でていた。
痛みを、快感に変えるか、うーん。
佐藤は俺が額を撫でている手を触った後、自分の左耳にかぶさっている髪を耳にかけるように指で梳いた。
「よくあるだろ。ほら、耳元で、何か言ってみるとか」
「何か、かあ。うーん」
「俺のこと、何かないの」
佐藤は俺の手を取って、自分の胸元に押し当てた。その時に左耳にかけた髪がまた耳から落ちて揺れた。
「好きだよ、最初はそうじゃなかったけど。今はどんどん好きになるんだ。佐藤のことを」
「それから?」
ああ好きだなんて、恥ずかしいこと言っちゃった。ちょっと、佐藤の顔、見れないなと思ったから、言った後佐藤の耳元から
顔を離して、すぐ下を向いた。
だけど、いま俺の恥ずかしい台詞を聞いて顔を赤らめた佐藤を見たいって思い直して、顔を上げたら、
どこの顔の部分も赤くない無表情の佐藤が目の前にいて、俺に冷えた視線を投げていた。
心底がっかりした、想像の中の佐藤と違う……
想像の中の佐藤はこう、頬を染めて、俺の目を見て、俺も好き……なんて、言ってくれたりしてて……
「えっ、それからって?もう無い……」
俺は消え入るような声で言った後、また下を向いた。かなり、本気の本当で言ったのにな。
「それにこう言う時は、……エッチしているような時は、あんまり喋らない方がいいって、梨花が……あっ」
「リカ?」
しまったって、口を滑らせた事をまずいって思って俺が再度顔を上げると、無表情だった佐藤が眉を上げている。
気持ち、さっきより目が細まったような気もする。反応があった。
「いや、あの……」
「リカって誰。前の女か?」
「あ……その、えっと……うん……」
眉を上げていた佐藤が、ゆっくりと俺に微笑みかけた。
「ふーん。やるじゃん、その手があったか。リカ、ね。……燃えてきた」
佐藤はそう独り言のように言って、俺の胸をどんと手で押した。
「リカに言われたの?下手だって?」
「違う、梨花はそんな事言ってない。……梨花の前に付き合っていた子が、うん」
「……俺も言わなかったよな?浩一?下手だって?」
「うん」
「いく時に、リカって言ってみるか?あ?」
佐藤は俺を下から睨み、すごんできた。
俺はたじたじになった。まさか自分でも別れた彼女の名前が出てくるなんて思ってもみなかったのだ。
「ごめん、ごめんって!光!」
「ひかるって名前で呼ぶな!」
光と言うのは佐藤の名前だ。
女みたいな名前だからって、佐藤は自分の名前を嫌っていて、俺は極力その名前で呼ぶなと言うお達しを受けている。
でも、つい光と呼んでしまうので、たびたび怒られる。
俺はきれいな名前だなと思っているのだけど、
そう伝えるとお前の感想など求めていないと、バッサリ切られる事になる。
「次やる時、リカって間違えて呼んでみろよ、俺の事」
佐藤は俺に向かってニヤリと笑って見せたけど、俺には笑顔に見えなかった。
「梨花の名前はあまり言いたくない。大切な人の名前だったから」
「…………」
「あ、怒ってる?聞いて!」
「聞きたくない、リカの話なんか。名前を言いたくないんだろ?話すんなよ」
佐藤はベッドの隅に転がる枕を掴んで俺にぶつけてから立って離れようとした。だから手を掴んだ。
「聞いてって、過去形だろ?今じゃないんだ。今の大切な人の名前は光になったから」
「はあ!?その名前も言うなよ!」
「ひかる、ここに座って。俺の近く」
俺が掴んだ佐藤の手を引き寄せたら、佐藤は大人しく俺の隣に座った。
「もう一回だけしていい?今度は上手くやるから。お願い、ひかる、ねえ」
承諾してくれるまで、何度だって名前を呼んでやる。
「ひかる~」
「あー、もう一回だけだからな」
と言って、俺の手を佐藤は握り返してくれたのだった。
◇◆
今度は積極的にこちらからキスをしてみた。いつまでもマグロじゃないぞと言う意志を示す為に。
技術が無いなら……の佐藤の言葉を胸にこちらの熱が佐藤の身体に伝わるように精一杯身体をくっつけて。
しばらくしたら佐藤の身体の力が抜けたので、今だって押し倒した。灰色のシーツに溶け込んだ佐藤の身体。
そうだ、体温を確かめよう。佐藤の身体がどうなっているのか、理性が残っている内にちゃんと見ておくんだ。
そう思って、佐藤の指に自分の指を絡め、佐藤の唇を触ってから、首すじにキスをした。
そしたら佐藤が喘ぐように「早く」って言った。
まあまあのペースか今度は雰囲気作りと、佐藤の耳元で、ひかる可愛いって言ってみた。
よしよしって、佐藤の顔を覗いてみたら、ムッとした顔をしていたから慌ててローションのボトルを置いた位置を確認した。
俺には可愛いばかり言うくせに、自分が言われるのは嫌なのかな。でも、俺は本当に可愛いと思ったから、気にしない事にする。
「ここ、濡らしておく?今からいっぱい入れるからさ、何、恥ずかしいの?」
俺はすかさず言葉責めと言うものをしてみた。これで佐藤の頭の中はとろけるはずだ。
出来るだけかっこいいと思われそうな笑顔を作りながら佐藤を見ると、
佐藤は先程の不機嫌顔をますます不機嫌にしていて、
眉を眉間に寄せ始めた。
あぶない、このままでは一定のラインをこえてしまう。
佐藤は「早く」と同じ言葉を繰り返した。
そして、首を傾け窓の方を見てカーテンを閉めないと、と言った。
「早く、光のなかに入りたい。カーテンなんかどうでもいい。俺の方を見て、光」
もう小細工はやめにして、思ったそのままを口にする事にした。
俺に気持ちの余裕が無くなってきたから。
佐藤の表情が少し柔らかくなった気がしたので、そのまま何やかやをした。
佐藤のなかは思ったより温かくなっていて、俺の余裕が限界を迎えた時、佐藤が爆弾を放り投げてきた。
「気持ちいいか?そろそろリカって呼んでみるか?なあ?」
突然に梨花の名前を持ってこられて、一瞬ひるんだけど、俺は佐藤の目を真っ直ぐに見て言った。
「呼ばない。ひかるがいい。ずっとひかるって、名前を呼んでいたい」
佐藤は少しびっくりしたような顔をした。
「リカって、言えばいいだろ。言えってば!」
「嫌だ、ひかるだけ。お前だけだから」
何故か俺がひかるって呼ぶと、佐藤の温かい部分が反応するような気がして、佐藤の耳元でありったけの気持ちで何回も名前を呼んだ。
「ひかる、そんなに締めたら、優しく出来ない」
佐藤は目をつぶって、少し息が荒くなった。
「俺を呼んでよ、俺に集中して」
そう俺が促したら、佐藤は俺の首元にしがみ付いて来た。
「うん、浩一」
佐藤は俺の名前を呼んで、好き、好きって繰り返してくれた。
そんな感じで二回戦は終わった。
◇◆
佐藤から俺をゆっくりと引き抜いてから、何か佐藤が痛がっているか様子をうかがっていると、俺の手が熱い手に握られた。
「……今度はいけた?」
そう聞いてみると、佐藤は横に首を振った。駄目だったかって俺はガッカリと下を向いてしまった。
「……立てそう?何か拭くもの持ってこようかな」
下ばかり向いてもいられないのでベッドから降りようとすると、後ろから佐藤に抱きしめられた。
「佐藤どうしたの?先に風呂行く?」
「いいよ、ひかるで。まだこのままでもいい?浩一、こっち向いて」
佐藤は俺を解放したから、俺は佐藤の方へと向き直った。いかすことが出来なかったから、怒られるのを覚悟した。
だけど、佐藤は俺を見つめた後、口付けをしてきた。唇を離した佐藤の髪を俺は恐る恐る撫でた。
「風呂行かないの?ごめん、痛くなった?二回したから、疲れた?」
佐藤はまた首を横に振った。それから、俺にまたぎゅうと抱きついてきた。
「ちょっと、取ってこようか」
「いい、ここに居て」
佐藤はなかなか俺から離れようとしなくて、でも早くお風呂に入らせないとなあと思っていた。
「今度は上手くいったかと思ったんだけど……ごめん」
「いいよ、下手のままでもいいから」
佐藤は顔を上げて俺を見上げてから、またぎゅうぎゅう俺を抱きしめた。
そうは言っても、やっぱり上手くなりたい、ひかるをなんとか喜ばせたいと思っている俺だった。
佐藤はその後も相変わらずの様子だった。
俺たちが働いている会社では知らぬふり。目が合ってもやっぱりそらすし、こちらから挨拶しても張り付いた笑顔で他人行儀のまま。
ただ、いつも午後になると俺の携帯に連絡が一つ来る。
どちらの家に行くか、と言う内容。
今日は俺の所、と一言メッセージが来ていた。佐藤のマンションの事だ。
今までもお互いの家を行き来していたし、特別何も変わらない気がするが、思えば頻度が変わった。
佐藤の都合か1~2週間間隔があいたり、時には一ヶ月近く連絡が来ないなんて事もあったのにここ最近は毎日のように来ている。
佐藤が住むマンションの部屋は、広くて少し落ち着かない。この部屋で佐藤と初めてそういう行為をしたとたまに思い出して、いたたまれなくなる。
同性と関係を結んだ事など無かったから、今でも戸惑う事がよくあった。
二人で会うのは、俺のマンションの部屋になる事が多かったけど、佐藤の気分によって部屋は変わる。
恋人同士になってからも、佐藤が部屋で特に俺に甘えることはない。普段とあまり変わらない気がするから、少しくらいは甘えてきてくれてもいいのに、とも思う。
恋人が外でリアクションが無い場合、部屋で二人きりになった時に反動で凄く甘えてくる、なんてのが世間ではよくあるみたいだから期待したのにな。
でも、会社ではコーヒーばかり飲むみたいなのに、なぜか家ではココアをよく飲んでいるようだ。違う所と言えば、そこかな。
だだ広いリビングは、大きな窓に灰色のカーテン、何の変哲もないテーブルとソファーに、テレビ、ブルーレイ、パソコンなどの電化製品が置かれているだけ。
灰色のカーペットを歩くとふかふかで。どれも丁寧に掃除されているのかピカピカでおよそ生活感が無い。
そこにココアの甘い香りがして、それが違和感だけど妙に安心するのだった。
ソファーに居る佐藤に近付いて、隣に座る。やっぱり佐藤はココアの香りがする。
「お前、いつもそんななの?」
「え?」
「触り方。髪の毛、優しすぎるんだよ。俺の頭、さわるのか、さわらないのかハッキリしろよ」
佐藤のココアの香りを確認するために近付いていたら、いつの間にか佐藤の頭に触っていたようで、怒られた。
「ごめん……」
「前の女にも、こんな触り方していた?」
「それは……おぼえてないけ
ど」
「おぼえてない、か」
怒ったのかな?と思って佐藤の肩に手を置いたら、それを手で振り払われた。しょうがなく、俺は正面を向いて、座り直した。
勝手に触ったのは悪かったかもしれないけど、佐藤だって、俺が着替えたり屈んだりしている時に、俺の背中を触る。
俺が声をあげると、俺の手、冷たいだろって笑っている。冷たいから、頼むからやめてくれって俺が言うと分かったって頷くのに、またすぐ触ってくるんだ……
「そこは、もう一度俺の髪の毛を撫でて、自分の方を向いた時にキスをするのがセオリーだろ?」
「セオリー?」
「こうやって」
佐藤は正面を向いている俺の頭に触れて自分の方へ向けて、俺の唇に自分の唇を重ねた。そして時間を置いてから、そっと俺から唇を離した。
「ほら、どんな気分?」
「どこで、息継ぎを……」
「あー、もう!」
佐藤が声を荒げた後、俺の頭を掴んでやや強引にキスをして、今度は佐藤の舌がちゃんと入ってきた。
その舌が柔らかくて俺の頭の中はふわふわとした感じになった。
「さすがにしたくなった?」
俺はうんうんと赤べこみたいに首を振る。
「したい。やっぱり上手いな、佐藤、キス」
佐藤は何も言わずに、俺の額に自分の額を当ててきた。
いつも恋人同士が交わす行為は、佐藤の仕掛けから始まる事が多い。
俺からもキスをするけど、佐藤は俺みたいにキスをされてしたくなる事はあるのだろうか?俺のキスで?そんな展開があったか、よく思い出してみると無かったような気がした。
「もしかして、俺、下手か
な?」
「キスが、ってこと?」
佐藤は額を俺にくっ付けたまま、俺の質問に答える。
「え、キスが、って、俺が下手なのはキスだけじゃ……ないの?」
佐藤の顔色がサッと変わったのが見えた。かなり近い距離で見ていたから嫌でもよく分かった。
佐藤は俺から額を離し、代わりに俺の首筋に手を回して抱きついてきた。
部屋のどこからともなく時計のカチカチとした音が聞こえ、なんだか妙な空気が流れている気がしてきた。
「なあ、下手かな?」
耐え切れず、俺が再度そう聞いてみると、佐藤は俺の首に回した自分の腕に力を込めただけだった。
「そもそも、お前何人だよ」
「なんにん?」
「やった人数だよ」
そう言いながら佐藤は俺に抱きついている手を片方下ろし、下ろした手で自分の首元にあるネクタイを緩め始めた。
「えーっと……三人?いや、最後までいっていない子がいたから、二人か?」
佐藤は自分のネクタイをはずしてソファー脇のテーブルに放り投げた後、再び両手で俺に抱き付いた。
俺は佐藤に抱きつかれたまま腕を伸ばして指折り数えていた。
そのせっせと指折りしている俺の手を佐藤は掴んだ。
「それ、数える意味あるか」
「佐藤は?した人数」
「言わない」
そう言って佐藤は俺を抱きしめるのをやめて、俺の肩を押した。
俺は反動でソファーに倒れてしまい、起き上がろうとしたら佐藤が俺の身体の上に乗って、自分の身体をあずけてきた。
「ずるいぞ、俺は言ったから。佐藤のした人数、言えって」
俺は佐藤の脇を持って支えるようにして身体を起こさせ、目を合わせて強気にもう一度問い詰めた。
「言え」
「十人くらいかな、覚えてないって。その中で一番、いちばん……」
佐藤は俺に脇を持たれたまま視線をそらし目を伏せた。
「一番、何?いちばん……下手とか?」
「え?ああ……まあいいか、そんなとこ。風呂行く」
佐藤はおもむろに立ち上がって浴室の方へ向かって歩いて行った。
俺はソファーの上に起き上がって座り直した。これまでにした行為の経験人数、佐藤は10人、俺は3人、負けている。
また指折り数えながら、このまま佐藤に負けたままでいいのか。佐藤は上手い、俺は下手?首を下げて少しの間うなだれて考える。
ふとテーブルの上を見ると、佐藤のネクタイがだらんと置いてある。その横に、佐藤のスマートフォンを見つけた。
ちょっと借りようか?
検索エンジンだけ使わせて貰って、他の所は見なければ大丈夫だろう。
佐藤のスマホを手に取って、対策を探す事にした。ブラウザアプリをタップして、検索エンジンを呼び出す。
佐藤がシャワーから帰って来る前に、済ませなければ。どういう語句で探そうか。
セックスの、上手いやり方。うーん。
上手いって、言われるようなやり方を知りたい。
しばらく悩んでいたが、とりあえず彼氏と打ってみた。
彼氏、誘い方、喜ばせ方、下手、傷つけない、伝え方……あれ?
ずらずらと、続いて語句が出てきた。
その時電話の鳴る音がした。ソファーで飛び上がる勢いでびっくりした俺は、思わず佐藤のスマホを耳に当てもしもしと言ってみたが何も音は聞こえない。
音は部屋の隅から聞こえていた。スマホを握ったまま、その方へ歩いていくと部屋の隅に電話があった。子機を手に取って耳に当てる。
「はい、え?いえ、ここは山田って人の家じゃないです。え、佐々木でもないです。……電波が悪い?大丈夫ですか?もしもーし。もしもし?じゃあ山田さんの番号はって?いえ分かりません。俺ですか?吉田ですけど……山田さんの下の名前は?もしもーし」
電話に出ると、ぶっきらぼうな男性の声で、山田さんとしきりに電話口で呼ばれた。
俺は吉田だし、ここは佐藤の家だ。
「もしもーし」
「ちょっと」
「わあー!」
間違いだと電話相手に伝えようとすると、突然後ろから声をかけられた。
「何、間違い電話に付き合ってんの?」
振り返るといつのまにか佐藤が立っていた。
電話の子機を耳にあてると、もう電話は切れてしまったようでツーと言う音しか聞こえない。
「電話、切れたみたい。俺が大きい声出したからかな?どうしよう」
「切れたのならいいだろ?ほっとけよ」
「急な用事だったら……」
「いいって」
佐藤は俺から電話の子機を取り上げて、充電器の上に置いた。
佐藤からはココアの香りが消えて、いつものシャンプーの香りがしていた。
「で、俺のスマホを持っているのは何?」
しまった。電話に出ていたら忘れていたけど、検索をしている最中なのだった。
「か、借りて、検索していただけだから。ごめん、他は見てないから。信じて」
「いや、別に見てもいいけど。やましいものは無いし」
慌てて俺は姿勢を正して、佐藤のスマホを元のテーブルの位置に置きに行こうとしたら、佐藤は俺の肩を掴んでスマホも俺から取り上げて画面を見ていた。
「検索って、何を?」
「何をって……まあ、いいだろ、何でも」
「……言えない事?」
突然、佐藤が目を潤ませて不安そうな顔をしてみせたので、俺は思わず口を割ってしまった。
「あれの……上手い仕方……俺、下手、みたいだから……その」
俺が仕方なくそう答えると、佐藤は突然下を向いて手を口に当てて、肩を振るわせ始めた。
「くく、お前、ほんと……チョロいな。まじかよ、ははは」
佐藤はまだ手を口にあてうつむいたままだ。どうやら俺は笑われているようで、失敗した。
「……笑うことないのに」
「はは、ごめん」
恥ずかしくなった俺は姿勢を正したままソファーに向かい、とりあえず座って身の置き場を確保したが、佐藤は笑いながら俺の後をついてきたので軽く屈辱を感じた。
「……かわいいなお前。くそ、やりてえ」
佐藤は俺をかわいいと形容する事が多いが、俺の顔は不細工でもないが美男子でもない、フツメンだと思うので、
俺のどの部分が可愛いのか未だに分からない。
「ん?やるんだろ?今日」
そう佐藤に声をかけた俺が座っている前に佐藤が回り込んで来て、俺の前にしゃがみ、俺と目線を合わせるようにして俺の膝に両手を置いた。
「うん、やるけど。そっちの意味より、入れたいって意味。」
「入れた……ええ?!」
佐藤はニコと笑って、立ち上がった。
「冗談だよ。付き合う前からそう思っていたけど……諦めた。」
「あきらめた?!」
「うん。女しか抱いた事ないんだろ?お前」
佐藤は俺の手を取ってソファーから立たせた。それから、無理をさせたくないから、って呟いた。
俺は立たせてもらった佐藤の手を握ったまま、少し考えた。
「俺、佐藤が望むなら、俺……」
「ほら、そうなるだろ。いいよ、気にすんな。俺は別に入れようが受け入れようがどっちでもいいんだから」
佐藤はうつむいている俺の手を引き寄せて慰めるようなキスをしてきた。
その後笑っていたから、俺は佐藤に何かしてやりたいって思った。せめて……
「佐藤、俺さ、上手くなりたい」
「は?」
俺は佐藤の両手をぎゅと握って言った。
「佐藤は違うって、言っていたじゃない?いつもは入れる方だって」
「違う?何が?……ああ、それか、そうだよ。普段はタチで、ネコじゃない。
経験はあるから、お前よりは受ける方も慣れてはいるかな。お前とも結構やったし」
「きっと、俺よりかは上手いだろ。多分。だから……」
◇◆
「力任せにしても、だめなんだって、つけばつくほど気持ちがいいわけじゃない。声が出ているから、だって?」
うんうん、と俺は頷く。
自分がそういう行為をするのが
下手なんじゃないかって、実は前にも思ったことがあって、昔付き合った子に聞いてみたことがある。
その時に一回だけ、うんと頷かれた。
その時のことを思い出して、流石に昔よりかは幾分上手くはなっているだろうと思っていたのに、佐藤の様子から見ると、俺はまるで上達していないみたいで。
それで、佐藤に俺のセックスのやり方で悪いところを教えて欲しい、と頼んでみたのだ。
俺もシャワーを浴びて、リビングで何やらスマホを見ている佐藤を後ろから抱きしめ、寝室へと誘った。
佐藤もその気はあったようで、今日は上手く出来るのではないか?そう思ったのだけど……
「どうしたの、浩一、早く来いよ」
こういちと言うのは俺の名前だ。佐藤は少し前から俺の事を浩一と呼ぶようになった。
「アレは、どこだっけ。えっと」
アレと言うのは挿入時に装着させるアレの事だ。
「いいよ、別に。つけなくても」
「お前が体調を崩したら駄目だから」
「……そこに無かったら、その下」
「あった!」
ベッド脇の引き出しを探って、お目当てのモノを見つけた。佐藤が、じっと俺を見つめているので、どうしても焦ってなかなか包装が破けない。自分の口に当てて、カッコよく破けたらなあといつも思う。
「浩一、大丈夫?つけてやろうか?」
「大丈夫、いけた!」
やっとつける事が出来たので、慌てて佐藤の上に覆いかぶさる。
「時間、かかり過ぎ。……くすぐったい」
佐藤が上に乗る俺の口に手をあてて笑ったので、がっつくなと言われているような気がした。
他の奴は、好きな人に見つめられて、それでもスマートに出来たりするのだろうか。
その後やっと挿入出来た所で、力任せにするなと早速指摘をされたのだった。
挿入して動いている最中、相手の声が出ているのだから気持ちがいいはず、誰でもそう思うだろう。
「声か、ほとんどが演技の可能性がある。よく見ろ」
寝室にある広めのベッドで俺の下に横たわっている佐藤が、手を伸ばしその手で俺の頬に触れていた。
俺が佐藤の顔の横に手をついて体重をかけると少しベッドがきしむ音がする。
「演技かどうか、本当に感じている奴など全体の三割もいるかどうか。眉が寄ったりしているのか、手に力が入っているかどうか、
ベッドに相手の体を押し付けるふりをして、手を触れ。首を触って、相手の身体の温度を確かめるんだ」
俺は頬に触れられている佐藤の手をつかんでから、佐藤を上から抱きしめてその首元に顔を埋めて見た。
自分の顔に感じる佐藤の体温は温かくて、実家にいた猫を抱っこしていた時のことを思い出した。
「うん、佐藤あたたかい、でも熱はなさそう」
「そんなあからさまな触り方があるか」
佐藤の首元から顔を上げて佐藤を見た。佐藤は少し顔が赤らんでいる気がしたけど、行為の熱が上がってきただけだろう。
「感じると、反対に声が出ない可能性もあるかも。……俺の経験からか、だって?」
うんうんと俺は頷く。
「言う必要あるか?」
あるあると、俺はまた頷いたが、結局佐藤は言ってくれなくて、さぼるなと言いたげに俺の腰を軽く叩いただけだった。
「力任せにして、じきに良くなる時もある、だけど相当慣らしている人じゃないとただ痛みが増していくだけだと思う。
そうなると、次何だかしたくないな、みたいな気持ちになる。それでも好きだから応えないと、みたいになる。する、痛い、悪循環だ」
「強弱をつけるんだ。そう、止めてみる、時間を計れ」
佐藤があまりにも喋ってくれるので、やっぱり気持ち良くないのかなと俺が身体をかがめてキスをしようとすると、佐藤が目を見開いた。
「いいぞ、そのまま!真っ直ぐ!」
身体をかがめたから、挿入して当たるところが変わったのだろうか。
佐藤は表情の変わらなかった綺麗な顔を一変させて、俺の腕を掴んできた。
「あはは!なんか、自動車教習所の教官みたいだな佐藤。免許を取った時を思い出す」
「あっ、笑うな!せっかく来そうだったのに、くそ!またポイントがずれた」
佐藤がそう叫んだひょうしに、俺は佐藤の中で果ててしまったのだった。
「……ごめん、佐藤、いけなかったの?」
俺がそう聞くと、佐藤はベッドから起き上がって、その場から離れようとしたから俺は佐藤の手を掴んで引き留めた。
「佐藤、終わったらすぐそうやって……ここ、座って」
「終わったんだから、いいだろ」
「もう少しだけいい?何もしなくていいから」
引き留めた佐藤をベッドに座らせると、佐藤はイラついた表情を見せた。
「あー、もう。浩一のそばにいると、また、したくなるから。エンドレスに終わらない」
「え?」
俺の隣に座った佐藤は、俺の腕に自分のひじを当てて俺をにらんできた。
「だからだよ。すぐ終わったらシャワーしに行くようにしてるんだ。そこで切る、食べた後、歯磨きをする、あんな感じで強引に切るんだ」
「でも、俺、下手だろ?だから、佐藤は呆れて終わった後に
すぐ行ってしまうのかと思ってた。今日、最後いけなかったんだろ?」
「……いいよ、いく事が目的じゃないし」
佐藤はこう言ってくれたけど、もしかして今までも何回か、いけない事があったのだろうか?
そういえば、佐藤は何回もしているのに俺を下手だと責めた事は無い。
「佐藤は俺が下手だって、分かっていたんだよな?なんで、言ってくれなかったの?」
「いちいち言うか?面倒」
「そっかあ……」
「気にしてるんだろ」
「うん……」
「そんなに、下手でもないよ」
「そうかな」
「ちょっと、下手だけど」
「やっぱし」
「佐藤さ、今までもいけない事あった?俺で?」
「あった」
「い、いつもじゃ……ないよな?」
「いつも、ではないよ」
いつもいけないわけじゃないんだ。良かった、とホッと胸を撫で下ろした俺に、佐藤は続ける。
「技術が無いなら、雰囲気を作ってみろよ。俺の脳みそを感じさせる為に」
佐藤は俺の顔を覗き込んでから、自分の頭を指でトントン叩いた。
「俺の頭を感じさせて、痛みを快感に変えるんだ。脳内麻薬を出させるんだよ。ここから、俺の頭の中から」
俺がそう言われて佐藤の頭をボーっと見ていると、佐藤の中指で額を軽く弾かれた。いわゆるデコピンってやつをされた。痛かったので、俺は自分の額を撫でていた。
痛みを、快感に変えるか、うーん。
佐藤は俺が額を撫でている手を触った後、自分の左耳にかぶさっている髪を耳にかけるように指で梳いた。
「よくあるだろ。ほら、耳元で、何か言ってみるとか」
「何か、かあ。うーん」
「俺のこと、何かないの」
佐藤は俺の手を取って、自分の胸元に押し当てた。その時に左耳にかけた髪がまた耳から落ちて揺れた。
「好きだよ、最初はそうじゃなかったけど。今はどんどん好きになるんだ。佐藤のことを」
「それから?」
ああ好きだなんて、恥ずかしいこと言っちゃった。ちょっと、佐藤の顔、見れないなと思ったから、言った後佐藤の耳元から
顔を離して、すぐ下を向いた。
だけど、いま俺の恥ずかしい台詞を聞いて顔を赤らめた佐藤を見たいって思い直して、顔を上げたら、
どこの顔の部分も赤くない無表情の佐藤が目の前にいて、俺に冷えた視線を投げていた。
心底がっかりした、想像の中の佐藤と違う……
想像の中の佐藤はこう、頬を染めて、俺の目を見て、俺も好き……なんて、言ってくれたりしてて……
「えっ、それからって?もう無い……」
俺は消え入るような声で言った後、また下を向いた。かなり、本気の本当で言ったのにな。
「それにこう言う時は、……エッチしているような時は、あんまり喋らない方がいいって、梨花が……あっ」
「リカ?」
しまったって、口を滑らせた事をまずいって思って俺が再度顔を上げると、無表情だった佐藤が眉を上げている。
気持ち、さっきより目が細まったような気もする。反応があった。
「いや、あの……」
「リカって誰。前の女か?」
「あ……その、えっと……うん……」
眉を上げていた佐藤が、ゆっくりと俺に微笑みかけた。
「ふーん。やるじゃん、その手があったか。リカ、ね。……燃えてきた」
佐藤はそう独り言のように言って、俺の胸をどんと手で押した。
「リカに言われたの?下手だって?」
「違う、梨花はそんな事言ってない。……梨花の前に付き合っていた子が、うん」
「……俺も言わなかったよな?浩一?下手だって?」
「うん」
「いく時に、リカって言ってみるか?あ?」
佐藤は俺を下から睨み、すごんできた。
俺はたじたじになった。まさか自分でも別れた彼女の名前が出てくるなんて思ってもみなかったのだ。
「ごめん、ごめんって!光!」
「ひかるって名前で呼ぶな!」
光と言うのは佐藤の名前だ。
女みたいな名前だからって、佐藤は自分の名前を嫌っていて、俺は極力その名前で呼ぶなと言うお達しを受けている。
でも、つい光と呼んでしまうので、たびたび怒られる。
俺はきれいな名前だなと思っているのだけど、
そう伝えるとお前の感想など求めていないと、バッサリ切られる事になる。
「次やる時、リカって間違えて呼んでみろよ、俺の事」
佐藤は俺に向かってニヤリと笑って見せたけど、俺には笑顔に見えなかった。
「梨花の名前はあまり言いたくない。大切な人の名前だったから」
「…………」
「あ、怒ってる?聞いて!」
「聞きたくない、リカの話なんか。名前を言いたくないんだろ?話すんなよ」
佐藤はベッドの隅に転がる枕を掴んで俺にぶつけてから立って離れようとした。だから手を掴んだ。
「聞いてって、過去形だろ?今じゃないんだ。今の大切な人の名前は光になったから」
「はあ!?その名前も言うなよ!」
「ひかる、ここに座って。俺の近く」
俺が掴んだ佐藤の手を引き寄せたら、佐藤は大人しく俺の隣に座った。
「もう一回だけしていい?今度は上手くやるから。お願い、ひかる、ねえ」
承諾してくれるまで、何度だって名前を呼んでやる。
「ひかる~」
「あー、もう一回だけだからな」
と言って、俺の手を佐藤は握り返してくれたのだった。
◇◆
今度は積極的にこちらからキスをしてみた。いつまでもマグロじゃないぞと言う意志を示す為に。
技術が無いなら……の佐藤の言葉を胸にこちらの熱が佐藤の身体に伝わるように精一杯身体をくっつけて。
しばらくしたら佐藤の身体の力が抜けたので、今だって押し倒した。灰色のシーツに溶け込んだ佐藤の身体。
そうだ、体温を確かめよう。佐藤の身体がどうなっているのか、理性が残っている内にちゃんと見ておくんだ。
そう思って、佐藤の指に自分の指を絡め、佐藤の唇を触ってから、首すじにキスをした。
そしたら佐藤が喘ぐように「早く」って言った。
まあまあのペースか今度は雰囲気作りと、佐藤の耳元で、ひかる可愛いって言ってみた。
よしよしって、佐藤の顔を覗いてみたら、ムッとした顔をしていたから慌ててローションのボトルを置いた位置を確認した。
俺には可愛いばかり言うくせに、自分が言われるのは嫌なのかな。でも、俺は本当に可愛いと思ったから、気にしない事にする。
「ここ、濡らしておく?今からいっぱい入れるからさ、何、恥ずかしいの?」
俺はすかさず言葉責めと言うものをしてみた。これで佐藤の頭の中はとろけるはずだ。
出来るだけかっこいいと思われそうな笑顔を作りながら佐藤を見ると、
佐藤は先程の不機嫌顔をますます不機嫌にしていて、
眉を眉間に寄せ始めた。
あぶない、このままでは一定のラインをこえてしまう。
佐藤は「早く」と同じ言葉を繰り返した。
そして、首を傾け窓の方を見てカーテンを閉めないと、と言った。
「早く、光のなかに入りたい。カーテンなんかどうでもいい。俺の方を見て、光」
もう小細工はやめにして、思ったそのままを口にする事にした。
俺に気持ちの余裕が無くなってきたから。
佐藤の表情が少し柔らかくなった気がしたので、そのまま何やかやをした。
佐藤のなかは思ったより温かくなっていて、俺の余裕が限界を迎えた時、佐藤が爆弾を放り投げてきた。
「気持ちいいか?そろそろリカって呼んでみるか?なあ?」
突然に梨花の名前を持ってこられて、一瞬ひるんだけど、俺は佐藤の目を真っ直ぐに見て言った。
「呼ばない。ひかるがいい。ずっとひかるって、名前を呼んでいたい」
佐藤は少しびっくりしたような顔をした。
「リカって、言えばいいだろ。言えってば!」
「嫌だ、ひかるだけ。お前だけだから」
何故か俺がひかるって呼ぶと、佐藤の温かい部分が反応するような気がして、佐藤の耳元でありったけの気持ちで何回も名前を呼んだ。
「ひかる、そんなに締めたら、優しく出来ない」
佐藤は目をつぶって、少し息が荒くなった。
「俺を呼んでよ、俺に集中して」
そう俺が促したら、佐藤は俺の首元にしがみ付いて来た。
「うん、浩一」
佐藤は俺の名前を呼んで、好き、好きって繰り返してくれた。
そんな感じで二回戦は終わった。
◇◆
佐藤から俺をゆっくりと引き抜いてから、何か佐藤が痛がっているか様子をうかがっていると、俺の手が熱い手に握られた。
「……今度はいけた?」
そう聞いてみると、佐藤は横に首を振った。駄目だったかって俺はガッカリと下を向いてしまった。
「……立てそう?何か拭くもの持ってこようかな」
下ばかり向いてもいられないのでベッドから降りようとすると、後ろから佐藤に抱きしめられた。
「佐藤どうしたの?先に風呂行く?」
「いいよ、ひかるで。まだこのままでもいい?浩一、こっち向いて」
佐藤は俺を解放したから、俺は佐藤の方へと向き直った。いかすことが出来なかったから、怒られるのを覚悟した。
だけど、佐藤は俺を見つめた後、口付けをしてきた。唇を離した佐藤の髪を俺は恐る恐る撫でた。
「風呂行かないの?ごめん、痛くなった?二回したから、疲れた?」
佐藤はまた首を横に振った。それから、俺にまたぎゅうと抱きついてきた。
「ちょっと、取ってこようか」
「いい、ここに居て」
佐藤はなかなか俺から離れようとしなくて、でも早くお風呂に入らせないとなあと思っていた。
「今度は上手くいったかと思ったんだけど……ごめん」
「いいよ、下手のままでもいいから」
佐藤は顔を上げて俺を見上げてから、またぎゅうぎゅう俺を抱きしめた。
そうは言っても、やっぱり上手くなりたい、ひかるをなんとか喜ばせたいと思っている俺だった。
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