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踏み切り
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「さ~あ!お待ちかねの[呪い歌]まであと5分を切りました!」
学校からほど近い所にある踏み切り前。
僕達は昨日決定した[夏休み充実計画]の一つである[呪い歌]を実戦すべき為、ここへやってきた。
「ほんとに大丈夫なの?」
やはり律は未だに不安でいるそうだ。
「何心配してんだよ、皆いるじゃねーか」
と遊佐が笑って返していた。
そしてそれと同時に
「やっぱり怖いな…」
愛純が僕の服を掴む。
「大丈夫だよ、遊佐も言ってたけど…皆いるしさ、所詮は都市伝説だ」
「……そう、だよね!」
「うん、だから大丈夫」
僕の言葉に愛純は笑顔を見せた。
………可愛い。
なんて、みんなには言えないけど。
「あと1分だぞお前ら!紙人形だ!ほれ!」
遊佐がリュックの中から取り出したのは、例の紙人形には程遠い、歪な形をした紙人形だった。
「なにこれ!ハサミの使い方もわかんないわけ?!」
「遊佐、お前にその仕事を任せた俺が馬鹿だった」
と、律と薫はその紙人形を見るなり爆笑し始める。
「なんだよ、うっせーな!これでも一応頑張ったんぞ!」
遊佐は顔を真っ赤にしながら返す。
「じゃ、掴もっか」
僕の言葉で皆がコクリ、と頷く。
「目、閉じとけよ」
遊佐の言葉を最後に、僕達はその時を待った。
あたりはシン…と、静まり返っていて、なんだかこの世界には僕達しかいないようにも思えた。
…………少しの沈黙のあと
カンカンカンカン…
…来た……!
次で三回目。
カンカン…
今だ!
ビリッ………!
僕は手の感覚を頼りに紙人形を引っ張った。
カンカンカンカン…
…まだ踏み切りの音は続いている。
そして電車があっという間に通り過ぎていった。
「…目、開けるか」
遊佐が呟き、皆が一斉にゆっくりと目を開く。
手にはそれぞれ体のパーツが切り放された状態であの紙人形を持っていた。
「歌うぞ」
遊佐はあのサイトの画面を開き、中央に手を伸ばした。
「せーの」
「赤いランドセル背負ったのは
小さな子供だほら走れ
魂が消える夜の前に
子供を探して見つけ出せ
囁き声が聞こえたら
そなたの命はもう無いぞ
1本貰うぞお終いだ
踏み切り前のオトモダチ」
…みんなの目が合った。
「いいのか…これで」
紙人形の左手をひらひらとみせ、薫が尋ねる。
「あぁ、これで呪い歌は完成だ」
遊佐が右足、愛純が右手、律が左足。
そして僕が頭。
なんとなく僕の感がざわめいた気がした。
「きゃっ!」
ザアァッと大きな風が僕達を通り過ぎる
ますます悪い予感がして来た。
「な、遊佐、今日は遅いしもう帰ろう!な?」
慌てて僕は遊佐に言った。
このままではまずい。
直感的に、僕はそう思った。
特に根拠や理由はないけれど。
「え~?まだ何も起こってねーだろ、もう少し待てよ」
言いだしっぺということもあり、遊佐は呪い歌に相当期待していたのだろう。
「女の子だってまだ来てないしよぉ~」
注意事項に書かれてた事か。
成功したら女の子が迎えに来る…と。
「遊佐、僕も虹希に賛成だ、所詮は都市伝説。もうかれこれ5分は経ってるだろうに何も起こんなかっただろ?」
薫が短くため息をついて微笑む
「逆に言えば何もなくて良かったけどな、帰るぞ」
その一声で僕達は皆納得し、踏み切りを離れようとしたその時
「オトモダチニナロウヨ」
後ろから聞こえた幼い声に僕はすぐさま振り返る。
…が、そこには何も立っていなかった。
学校からほど近い所にある踏み切り前。
僕達は昨日決定した[夏休み充実計画]の一つである[呪い歌]を実戦すべき為、ここへやってきた。
「ほんとに大丈夫なの?」
やはり律は未だに不安でいるそうだ。
「何心配してんだよ、皆いるじゃねーか」
と遊佐が笑って返していた。
そしてそれと同時に
「やっぱり怖いな…」
愛純が僕の服を掴む。
「大丈夫だよ、遊佐も言ってたけど…皆いるしさ、所詮は都市伝説だ」
「……そう、だよね!」
「うん、だから大丈夫」
僕の言葉に愛純は笑顔を見せた。
………可愛い。
なんて、みんなには言えないけど。
「あと1分だぞお前ら!紙人形だ!ほれ!」
遊佐がリュックの中から取り出したのは、例の紙人形には程遠い、歪な形をした紙人形だった。
「なにこれ!ハサミの使い方もわかんないわけ?!」
「遊佐、お前にその仕事を任せた俺が馬鹿だった」
と、律と薫はその紙人形を見るなり爆笑し始める。
「なんだよ、うっせーな!これでも一応頑張ったんぞ!」
遊佐は顔を真っ赤にしながら返す。
「じゃ、掴もっか」
僕の言葉で皆がコクリ、と頷く。
「目、閉じとけよ」
遊佐の言葉を最後に、僕達はその時を待った。
あたりはシン…と、静まり返っていて、なんだかこの世界には僕達しかいないようにも思えた。
…………少しの沈黙のあと
カンカンカンカン…
…来た……!
次で三回目。
カンカン…
今だ!
ビリッ………!
僕は手の感覚を頼りに紙人形を引っ張った。
カンカンカンカン…
…まだ踏み切りの音は続いている。
そして電車があっという間に通り過ぎていった。
「…目、開けるか」
遊佐が呟き、皆が一斉にゆっくりと目を開く。
手にはそれぞれ体のパーツが切り放された状態であの紙人形を持っていた。
「歌うぞ」
遊佐はあのサイトの画面を開き、中央に手を伸ばした。
「せーの」
「赤いランドセル背負ったのは
小さな子供だほら走れ
魂が消える夜の前に
子供を探して見つけ出せ
囁き声が聞こえたら
そなたの命はもう無いぞ
1本貰うぞお終いだ
踏み切り前のオトモダチ」
…みんなの目が合った。
「いいのか…これで」
紙人形の左手をひらひらとみせ、薫が尋ねる。
「あぁ、これで呪い歌は完成だ」
遊佐が右足、愛純が右手、律が左足。
そして僕が頭。
なんとなく僕の感がざわめいた気がした。
「きゃっ!」
ザアァッと大きな風が僕達を通り過ぎる
ますます悪い予感がして来た。
「な、遊佐、今日は遅いしもう帰ろう!な?」
慌てて僕は遊佐に言った。
このままではまずい。
直感的に、僕はそう思った。
特に根拠や理由はないけれど。
「え~?まだ何も起こってねーだろ、もう少し待てよ」
言いだしっぺということもあり、遊佐は呪い歌に相当期待していたのだろう。
「女の子だってまだ来てないしよぉ~」
注意事項に書かれてた事か。
成功したら女の子が迎えに来る…と。
「遊佐、僕も虹希に賛成だ、所詮は都市伝説。もうかれこれ5分は経ってるだろうに何も起こんなかっただろ?」
薫が短くため息をついて微笑む
「逆に言えば何もなくて良かったけどな、帰るぞ」
その一声で僕達は皆納得し、踏み切りを離れようとしたその時
「オトモダチニナロウヨ」
後ろから聞こえた幼い声に僕はすぐさま振り返る。
…が、そこには何も立っていなかった。
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