呪い歌 ―踏み切りで起きた悲劇―

峡 翡翠

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元通り

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なんとか線路から家まで辿り着き、僕はすぐさま自分の部屋へと駆け込んだ。
そしてバフっと大きく布団を被り、廃人のようにスマホを開く。
すると案の定皆からのLINEが溜まっていた。

薫『なあ、呪い歌について皆で調べないか』

と、予期していなかった薫のその一言に

愛純『ちょっとまってよ、律は死んだんだよ』

と愛純がすぐさま返していた。
そこからトントン拍子に会話が続く。

薫『律のことはわかる、でも僕らだって今止めないとまた次の犠牲者を生むことになるんだ』
遊佐『今じゃなくてもいいだろ』
薫『呪い歌の発祥元でも歌の解釈でもなんでもいいんだ、とにかく調べてくれ頼む』
愛純『嫌よ、そんな気分じゃない』
遊佐『みんな律のことで辛いんだ、俺達はお前みたいにそんなにすぐ気持ちの変換が出来るやつじゃない』
薫『…なら、僕が一人でやる』
そして恐らく僕の既読を確認した薫が
薫『虹希も、ごめんな』
と付け足した。

そのLINEに僕は何一つとして返信はしなかった。
薫の言いたいことは痛いほどわかるが、正直他の二人と同じくして僕も今はそんな気ではない。
律が死んだ。
僕の頭の中は何時間時が経とうと、それだけで目一杯だった。
「調べるって何をだよ……」
窓の外には大きな満月が輝いていた。
それはまるで僕らの破滅を嘲笑うかのように、綺麗で不気味な神々しいものだった。
闇に包まれた今夜の静寂は、いつもの何倍も不穏な空気に触れていた。
調べて呪いを止めたって、律はもう戻らない。
怖い話が苦手だった律、優しかった律、進路に向けて人一倍努力をしていた律………。
ブワッと大粒の涙がボツボツと零れ落ちる。
あの時律の言う通りに、
「呪い歌をやめていれば……」
熱い涙と自責の念に押され、
そう呟いたまま僕は静かに目を閉じた。
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