呪い歌 ―踏み切りで起きた悲劇―

峡 翡翠

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電話

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律からの連絡が途絶えたまま、午後21時を回った。
携帯の電源が切れただけか、はたまた何が大きな事件に巻き込まれたか。
律を抜いた4人であれこれ話しても、事実その結果は分かるまい。
不穏な時間が淡々と過ぎていったその時。
バンッ、と部屋のドアを勢いよく開いたのだった。
「ノックぐらいしてくれよ」
いきなりの事で肩を竦めて驚いた僕がドアの向こうへと顔を向けると、そこには受話器片手に涙で顔を歪めた母親が居た。
「ちょ……どうしたんだよ」
慌てて腰を上げ、母の方へと近付くと、ぱくぱくと口を開け、母は受話器を僕へと差し出した。
つまり母は僕に代われと言いたいのだろう。
「……もしもし?」
電話の相手にやや警戒しつつも、耳を受話器に押し付けた。
「………もしもし」
向こうからは微かに啜り泣いた声が聞こえ、一層僕は耳を強く受話器に押し付けた。
「…律の……小野寺律の母です」
………え?

その後僕はどうやって電話を切ったのか、はっきりとは覚えてない。
あの通話から覚えていることは、ただ二つ。
律は講習帰りに何者かに襲われ、左足を切り落とされたということ。
そしてその事件現場が小さな路地裏という事により発見が遅れ、出血多量で律はそのまま帰らぬ人となってしまったこと。
この二つだけ。あとはもう何も覚えていないし考える気力もない。
律が死んだ。
その出来事は僕達が楽しみにしていた夏休みを、一瞬にして絶望へと塗り変えてしまったのだった。
ピコン。
LINEか。
今は正直見る気にもならない。
ピコン、ピコン。
無視をしても立て続けに音を鳴らすその通知に、
僕はやや怒りを込めて画面を開いた。
それやはり、あの5人のグループからだった。
しかし気分が気分でないため、LINEの内容がいまいち頭に入ってこない。
もちろんその題材が律の死であることは明らかであるが、そこに返信する気力も今の僕には0に等しかった。
そんな中、最後の一文だけはしっかりと僕の目に届いた。
それは遊佐からのメッセージだった。
遊佐『一旦みんなで集まろう』

遊佐『場所はあの呪い歌を実行した線路だ』

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