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第70話 記者会見
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外は騒がしいがダンジョンの中は静かなものだ。
いいやモンスターの叫び声がするが、こんなのは苦情の電話と比べたら赤子のようなものだ。
どこで調べたのか俺や藤沢のスマホにも掛かってきたからな。
まったく困ったものだ。
通路のモンスターを撃ち殺す。
スカッと爽快だぜ。
うっぷんが少し晴れたようだ。
一時間ほどの討伐の仕事を終えて、コンビニの回廊を歩いていくと、事務所の前に人だかりができているのが見えた。
うわっ、行きたくない。
俺がやったんなら謝りようもあるが、他人のしたことを俺が謝る筋合いはない。
だが、ここでにべもなく邪険に扱うと会社の評判が下がる。
ただでさえ、尻手の横領暴露でイメージが悪いのに。
白丸はそういうことも計算のうちだろう。
「みなさん、あとで記者会見を開きます! ただ、これだけは言わせて下さい! うちは白丸社長とはなんの関係もありません!」
俺は群衆に向かって叫んだ。
人をかき分け事務所に入って施錠した。
インターホンの電源も切った。
新しい番号に変えたスマホで、香川さんに電話する。
「記者会見することになった。助けてくれ金は払う」
『では500万円頂きます』
「回収プランとやらはそれも回収できるんだろうな」
『もちろんです』
「ならオッケーだ」
香川さんは2時間で場を作ってくれた。
有能過ぎるだろう。
まあ、5000万円をポンと出す人だからな。
テレビを見ると、白丸の逮捕の瞬間いまかいまかとカメラが撮影している。
警察官が白丸の部屋に入る。
だが一向に逮捕される気配がない。
どうしたんだ。
どうやら白丸社長は逃げたようですとレポーターが言っている。
逃げたのか。
詐欺師だからな逃げることもあるだろう。
捜査は警察がやるだろう。
詐欺の全貌が分かったところで俺には関係ない。
会場のホテルに入った。
「もちろん関係を否定しますよね」
控室で香川さんにそう言われた。
「それはそうだな」
「被害者の弁護費用を全部持つと言って下さい」
「回収プランとやらに関係がありそうだな」
「もちろん」
香川さんはにんまりと笑った。
さあ、行くぞ。
会場に入ると一斉にフラッシュが焚かれた。
そして、リポーターが固唾を飲んで見守っている。
「ええと、ダンジョン分譲コーポレーション。略してダブコー社長の戸塚です」
そう言って俺は頭を下げた。
「逃げた白丸社長とうちの会社は一切関係がございません。納得いかないかも知れませんが、それが事実です。警察の捜査と裁判でもそれが分かるでしょう」
債権者達は納得いった顔をしてないのが分かった。
今にも叫びそうだ。
「当社と致しましてはここで記者会見を終わらすのはあまりにも不人情。つきましては白丸を訴えたいが裁判はちょっとという方を全面バックアップします。手始めに裁判費用を当社が全て負担します」
債権者が呆気にとられた。
そんな手を打つとは思ってなかったらしい。
「質問を受け付けます」
債権者の一人がマイクを握った。
「あんたは白丸とグルか黒幕だと思っている。白丸はあんたに騙されたと言っていた。調べたら、あんた横領で示談しているらしいじゃないか」
「その件は横領の真犯人が見つかっていま裁判中です。調べればすぐに判ります」
「無関係ならなんで、裁判費用を出す?」
「民事は勝てれば裁判費用は相手に請求できるのですよ。勝ちを確信してますから、お金を出せます。これでも当社は人々のお役に立つということをモットーにしています。上級ポーションの寄付で助かった人もたくさんおります」
「そんなの信じられるか」
「信じられないなら私を訴えたり、白丸社長を訴えるのは個人でやれば良い。どうぞ好きにして下さい」
債権者は黙った。
債権者の半数ぐらいが、白丸社長を訴えてくれと言って、連絡先を書いて帰った。
ふぅ、こんなのでいいのかな。
「上出来ですよ」
香川さんが太鼓判を押してくれた。
「そろそろ、回収プランを教えて下さい」
回収プランを聞いて、俺は口をあんぐり開けた。
ええー、そんなのありかよ。
いや犯罪じゃないけど道義的にどうなんだ。
問題ありませんじゃないだろう。
こんなことしていいのかな。
ええい、ここまで来たら毒喰らわば皿までよだ。
明日から忙しいな。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し 68,606万円
上級ポーション3個 924万円
彫像10体 10万円
弁護士費用 1,000万円
記者会見 500万円
ファンド出資 5億円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 51,500万円 69,540万円 18,040万円
パーティ収支メモ
支出 収入 収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し 5,642万円
オーク10体 650万円
キングウルフ12体 640万円
ライフル6丁 462万円
弾丸60発 6万円
弾丸用魔石 150万円
付与魔法依頼 50万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 668万円 6,832万円 6,164万円
ファンド収支メモ
俺の出資1150口 115億円
客の出資119口 11億9千万円
支出 収入 収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し 32,362万円
カイザーウルフ60体 4,500万円
ドッペルオーク12体 600万円
シャーマンオーク12体 720万円
エンペラータランチュラ12体 1,056万円
メイズスパイダー12体 1,020万円
エレファントスレイヤー12体 1,440万円
オーガ96体 5,280万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 0円 46,978万円 46,978万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -64億円
出資金 110億円
ファンドの出資金が10億を超えた。
じゅうぶん全国ニュースになる金額だ。
これでスタンピードが起こってはじけたら、俺は極悪人だろうな。
ファンドはそろそろ一口1万のボーナス配当を出すつもりだ。
良い釣り餌になると良いな。
いいやモンスターの叫び声がするが、こんなのは苦情の電話と比べたら赤子のようなものだ。
どこで調べたのか俺や藤沢のスマホにも掛かってきたからな。
まったく困ったものだ。
通路のモンスターを撃ち殺す。
スカッと爽快だぜ。
うっぷんが少し晴れたようだ。
一時間ほどの討伐の仕事を終えて、コンビニの回廊を歩いていくと、事務所の前に人だかりができているのが見えた。
うわっ、行きたくない。
俺がやったんなら謝りようもあるが、他人のしたことを俺が謝る筋合いはない。
だが、ここでにべもなく邪険に扱うと会社の評判が下がる。
ただでさえ、尻手の横領暴露でイメージが悪いのに。
白丸はそういうことも計算のうちだろう。
「みなさん、あとで記者会見を開きます! ただ、これだけは言わせて下さい! うちは白丸社長とはなんの関係もありません!」
俺は群衆に向かって叫んだ。
人をかき分け事務所に入って施錠した。
インターホンの電源も切った。
新しい番号に変えたスマホで、香川さんに電話する。
「記者会見することになった。助けてくれ金は払う」
『では500万円頂きます』
「回収プランとやらはそれも回収できるんだろうな」
『もちろんです』
「ならオッケーだ」
香川さんは2時間で場を作ってくれた。
有能過ぎるだろう。
まあ、5000万円をポンと出す人だからな。
テレビを見ると、白丸の逮捕の瞬間いまかいまかとカメラが撮影している。
警察官が白丸の部屋に入る。
だが一向に逮捕される気配がない。
どうしたんだ。
どうやら白丸社長は逃げたようですとレポーターが言っている。
逃げたのか。
詐欺師だからな逃げることもあるだろう。
捜査は警察がやるだろう。
詐欺の全貌が分かったところで俺には関係ない。
会場のホテルに入った。
「もちろん関係を否定しますよね」
控室で香川さんにそう言われた。
「それはそうだな」
「被害者の弁護費用を全部持つと言って下さい」
「回収プランとやらに関係がありそうだな」
「もちろん」
香川さんはにんまりと笑った。
さあ、行くぞ。
会場に入ると一斉にフラッシュが焚かれた。
そして、リポーターが固唾を飲んで見守っている。
「ええと、ダンジョン分譲コーポレーション。略してダブコー社長の戸塚です」
そう言って俺は頭を下げた。
「逃げた白丸社長とうちの会社は一切関係がございません。納得いかないかも知れませんが、それが事実です。警察の捜査と裁判でもそれが分かるでしょう」
債権者達は納得いった顔をしてないのが分かった。
今にも叫びそうだ。
「当社と致しましてはここで記者会見を終わらすのはあまりにも不人情。つきましては白丸を訴えたいが裁判はちょっとという方を全面バックアップします。手始めに裁判費用を当社が全て負担します」
債権者が呆気にとられた。
そんな手を打つとは思ってなかったらしい。
「質問を受け付けます」
債権者の一人がマイクを握った。
「あんたは白丸とグルか黒幕だと思っている。白丸はあんたに騙されたと言っていた。調べたら、あんた横領で示談しているらしいじゃないか」
「その件は横領の真犯人が見つかっていま裁判中です。調べればすぐに判ります」
「無関係ならなんで、裁判費用を出す?」
「民事は勝てれば裁判費用は相手に請求できるのですよ。勝ちを確信してますから、お金を出せます。これでも当社は人々のお役に立つということをモットーにしています。上級ポーションの寄付で助かった人もたくさんおります」
「そんなの信じられるか」
「信じられないなら私を訴えたり、白丸社長を訴えるのは個人でやれば良い。どうぞ好きにして下さい」
債権者は黙った。
債権者の半数ぐらいが、白丸社長を訴えてくれと言って、連絡先を書いて帰った。
ふぅ、こんなのでいいのかな。
「上出来ですよ」
香川さんが太鼓判を押してくれた。
「そろそろ、回収プランを教えて下さい」
回収プランを聞いて、俺は口をあんぐり開けた。
ええー、そんなのありかよ。
いや犯罪じゃないけど道義的にどうなんだ。
問題ありませんじゃないだろう。
こんなことしていいのかな。
ええい、ここまで来たら毒喰らわば皿までよだ。
明日から忙しいな。
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俺の収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 68,606万円
上級ポーション3個 924万円
彫像10体 10万円
弁護士費用 1,000万円
記者会見 500万円
ファンド出資 5億円
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計 51,500万円 69,540万円 18,040万円
パーティ収支メモ
支出 収入 収支
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繰り越し 5,642万円
オーク10体 650万円
キングウルフ12体 640万円
ライフル6丁 462万円
弾丸60発 6万円
弾丸用魔石 150万円
付与魔法依頼 50万円
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計 668万円 6,832万円 6,164万円
ファンド収支メモ
俺の出資1150口 115億円
客の出資119口 11億9千万円
支出 収入 収支
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繰り越し 32,362万円
カイザーウルフ60体 4,500万円
ドッペルオーク12体 600万円
シャーマンオーク12体 720万円
エンペラータランチュラ12体 1,056万円
メイズスパイダー12体 1,020万円
エレファントスレイヤー12体 1,440万円
オーガ96体 5,280万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 0円 46,978万円 46,978万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -64億円
出資金 110億円
ファンドの出資金が10億を超えた。
じゅうぶん全国ニュースになる金額だ。
これでスタンピードが起こってはじけたら、俺は極悪人だろうな。
ファンドはそろそろ一口1万のボーナス配当を出すつもりだ。
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