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第49話 青
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大船さんは今日は休み。
俺は自分ひとりで討伐しようとした。
成長を確かめたかったのだ。
いたのは、青いカイザーウルフか。
強敵の匂いがプンプンする
明日、大船さんが来てからの方がいいか。
ここで、やめるのは逃げなのかな。
ちらりと思った。
そうだな、逃げるのは良くない。
よしやろう。
「【リフォーム】、槍」
俺が部屋の外から攻撃を加えたところ、青いカイザーウルフは飛び退いた。
そして、着地してから、踏ん張る姿勢で、大きく息を吸った。
いかん、大技が来る。
「【リフォーム】、盾」
大技は青い炎のブレスだった。
ダンジョン製の盾で防いでいるから良いようなものの、後ろに隠れている俺の所にまで熱気が押し寄せている。
こういう時は待つに限る。
息を吸ったということは、息が切れる瞬間がきっとあるはず。
それを待つ。
焦って動くのは愚の骨頂だ。
まだかよ。
盾が真っ赤に色づき始めた。
溶け崩れたら。
ちらりとそういうことを思った。
そうしたら、盾をまた出す。
その間に息継ぎされたら。
いいやネガティブになったらいけない。
相手の方が先に根を上げるに違いない。
きっとそうだ。
スタングレネードを投げ込もうかと少し思った。
俺が盾の端からカイザーウルフを覗き込もうとしたら、ブレスの方向が少し変わった。
うひっ、覗き込んだら頭が真っ黒焦げになっていたところだ。
そして時間にして永遠に思える20秒が終わった。
「【リフォーム】、槍」
息継ぎで息を吸い込んでいたカイザーウルフは避けられず、槍を食らって串刺しになった。
ふぅ、強敵だった。
盾が溶かされたら危なかったかも知れない。
「先輩、隠れて何かしていると思ったら、討伐してたんですね」
「ふ、藤沢」
「もう、目を離すとすぐに危ないことをするんですから」
「いや、これはだな。成長の度合いを確かめようと」
「問答無用、ハグの刑です」
藤沢にハグされた。
何かが吸い取られている気がしないでもない。
吸い取られているのは闘争心だな。
「えへへ、堪能しました。これに懲りたらもうしないことです」
「分かったよ」
すっかり戦いの気分から抜け出せた。
まあ2連戦するほど馬鹿じゃないが。
モンスター素材のマークが出来上がったので業者が持ってきた。
ドラゴンの頭があって尻尾が輪切りになったマークだ。
あまり良いマークとは言えないな。
インパクトがあるのは認めるが。
俺のが使うわけでもないからいいか。。
「海外の毛皮の売り先の開拓に成功したぜ」
「へぇどこ?」
「アジアの富裕層だよ。動物保護団体はいないからな。それに長い目で見れば、これは動物を救うことになるはず。質のいいモンスターの毛皮が広く流通すれば、殺される動物は減るはずだからな」
「良貨は悪貨を駆逐するか」
「オーク革が手に入らないか」
「四角大ハムがオーク養殖事業を始める。皮は使わないはずだ」
「分かった。担当者と話してみるぜ」
どんどんと仕事の幅が広がっていく気がするな。
動物保護団体はモンスター素材も使うなと言ってくるのだろうか。
でも牛革や豚革を使うなとは言ってない。
そういう団体に理解が得られて大々的に商売出来ればな。
業者が帰ったので、俺はメッセージの録画を始めた。
「モンスターの革を使うことをどう思いますか。残酷でしょうか。私は殺されている動物の代わりにモンスターの毛皮をもっと使うべきだと思います」
カメラを停止した。
藤沢はそれを編集して、殺される動物の映像を付けた。
モンスター素材があまり活かされていないのは、モンスターの死骸を運び出すのが手間だからだ。
電動の台車を使っているそうだが、持ち帰る最中に襲撃にあうと放棄せざるを得ないことが多いと聞く。
Fランクダンジョンならともかく。
品質の良い革が採れるCランクから上だと持ち帰るのは至難の業だ。
だから、ほとんど流通していない。
俺はモンスター素材に革命を起こしたかも知れない。
動画のコメントを見ると動物を殺すのはみな反対だ。
モンスターを殺すのも抵抗がある人達が少なからずいる。
ダンジョン討伐が進まない原因はこういう所にあるのかな。
自分とその身内が殺されたりすると、問題が降り掛かるが、そうでない時は他人事だ。
スタンピードの記録を調べると、ほとんどが死者数名だ。
中には怪我人数名で終わっているのもある。
Aランクのスタンピードで死者が1000人を超えるのは稀だ。
Sランクのスタンピードの被害者10万人はいちどしかない。
よくも悪くも慣れているのだな。
画期的な何かを発見しないといけないようだ。
その何かは分からない。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し 42,236万円
上級ポーション2個 604万円
彫像10体 10万円
カイザーウルフ61体 6,000万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 0円 48,950万円 48,950万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -74億円
スタンピード積み立て金 100億円
順調だ。
毎日6000万の収入があるなんて信じられない。
幸事魔多しとも言うし、気をつけよう。
俺は自分ひとりで討伐しようとした。
成長を確かめたかったのだ。
いたのは、青いカイザーウルフか。
強敵の匂いがプンプンする
明日、大船さんが来てからの方がいいか。
ここで、やめるのは逃げなのかな。
ちらりと思った。
そうだな、逃げるのは良くない。
よしやろう。
「【リフォーム】、槍」
俺が部屋の外から攻撃を加えたところ、青いカイザーウルフは飛び退いた。
そして、着地してから、踏ん張る姿勢で、大きく息を吸った。
いかん、大技が来る。
「【リフォーム】、盾」
大技は青い炎のブレスだった。
ダンジョン製の盾で防いでいるから良いようなものの、後ろに隠れている俺の所にまで熱気が押し寄せている。
こういう時は待つに限る。
息を吸ったということは、息が切れる瞬間がきっとあるはず。
それを待つ。
焦って動くのは愚の骨頂だ。
まだかよ。
盾が真っ赤に色づき始めた。
溶け崩れたら。
ちらりとそういうことを思った。
そうしたら、盾をまた出す。
その間に息継ぎされたら。
いいやネガティブになったらいけない。
相手の方が先に根を上げるに違いない。
きっとそうだ。
スタングレネードを投げ込もうかと少し思った。
俺が盾の端からカイザーウルフを覗き込もうとしたら、ブレスの方向が少し変わった。
うひっ、覗き込んだら頭が真っ黒焦げになっていたところだ。
そして時間にして永遠に思える20秒が終わった。
「【リフォーム】、槍」
息継ぎで息を吸い込んでいたカイザーウルフは避けられず、槍を食らって串刺しになった。
ふぅ、強敵だった。
盾が溶かされたら危なかったかも知れない。
「先輩、隠れて何かしていると思ったら、討伐してたんですね」
「ふ、藤沢」
「もう、目を離すとすぐに危ないことをするんですから」
「いや、これはだな。成長の度合いを確かめようと」
「問答無用、ハグの刑です」
藤沢にハグされた。
何かが吸い取られている気がしないでもない。
吸い取られているのは闘争心だな。
「えへへ、堪能しました。これに懲りたらもうしないことです」
「分かったよ」
すっかり戦いの気分から抜け出せた。
まあ2連戦するほど馬鹿じゃないが。
モンスター素材のマークが出来上がったので業者が持ってきた。
ドラゴンの頭があって尻尾が輪切りになったマークだ。
あまり良いマークとは言えないな。
インパクトがあるのは認めるが。
俺のが使うわけでもないからいいか。。
「海外の毛皮の売り先の開拓に成功したぜ」
「へぇどこ?」
「アジアの富裕層だよ。動物保護団体はいないからな。それに長い目で見れば、これは動物を救うことになるはず。質のいいモンスターの毛皮が広く流通すれば、殺される動物は減るはずだからな」
「良貨は悪貨を駆逐するか」
「オーク革が手に入らないか」
「四角大ハムがオーク養殖事業を始める。皮は使わないはずだ」
「分かった。担当者と話してみるぜ」
どんどんと仕事の幅が広がっていく気がするな。
動物保護団体はモンスター素材も使うなと言ってくるのだろうか。
でも牛革や豚革を使うなとは言ってない。
そういう団体に理解が得られて大々的に商売出来ればな。
業者が帰ったので、俺はメッセージの録画を始めた。
「モンスターの革を使うことをどう思いますか。残酷でしょうか。私は殺されている動物の代わりにモンスターの毛皮をもっと使うべきだと思います」
カメラを停止した。
藤沢はそれを編集して、殺される動物の映像を付けた。
モンスター素材があまり活かされていないのは、モンスターの死骸を運び出すのが手間だからだ。
電動の台車を使っているそうだが、持ち帰る最中に襲撃にあうと放棄せざるを得ないことが多いと聞く。
Fランクダンジョンならともかく。
品質の良い革が採れるCランクから上だと持ち帰るのは至難の業だ。
だから、ほとんど流通していない。
俺はモンスター素材に革命を起こしたかも知れない。
動画のコメントを見ると動物を殺すのはみな反対だ。
モンスターを殺すのも抵抗がある人達が少なからずいる。
ダンジョン討伐が進まない原因はこういう所にあるのかな。
自分とその身内が殺されたりすると、問題が降り掛かるが、そうでない時は他人事だ。
スタンピードの記録を調べると、ほとんどが死者数名だ。
中には怪我人数名で終わっているのもある。
Aランクのスタンピードで死者が1000人を超えるのは稀だ。
Sランクのスタンピードの被害者10万人はいちどしかない。
よくも悪くも慣れているのだな。
画期的な何かを発見しないといけないようだ。
その何かは分からない。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し 42,236万円
上級ポーション2個 604万円
彫像10体 10万円
カイザーウルフ61体 6,000万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 0円 48,950万円 48,950万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -74億円
スタンピード積み立て金 100億円
順調だ。
毎日6000万の収入があるなんて信じられない。
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