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第47話 大型契約

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 大船おおぶねさんからヘルプ要請だ。
 行ってみると高速戦闘していた。
 大船おおぶねさんも、モンスターもほんとんど残像だ。
 辛うじてモンスターが赤いということが分かった。

 下手に手を出すとバランスが崩壊するな。
 大船おおぶねさんの足を引っ張るのは避けたい。
 こういう時にやる手段は。

「スタングレネード投げます。3、2、1、今!」

 大船おおぶねさんは部屋から出て目をつぶったらしい。
 俺が目をつぶって、光が治まったら、隣にいた。

「キャイン」

 赤いカイザーウルフが目をこすっている。

「【リフォーム】、槍」

「ギャン!」

 カイザーウルフは槍に貫かれて死んだ。

「お疲れ様です」

 藤沢ふじさわ大船おおぶねさんをねぎらった。

「おう、お疲れ。危なかったぜ。駆け付けるのが遅かったらやられていた」
「互角のように見えましたけど」
「全力を出せるのは短時間だ。モンスターとスタミナでは張り合えない」

 これからは養殖の時間だ。
 来た見積書を見る。

 殺処分ロッカーの設計は34万円らしい。
 このぐらいの金なら惜しくない。

 殺処分ロッカーの設置の見積もりは527万円だった。
 早速発注、工事に入ってもらう。
 殺処分ロッカーは今後どんどん作りたい。
 まだ、スタンピードまで時間はあるはずだ。
 急がずにいこう。
 2階層は殺処分ロッカーだけでも良いかも知れない。

 追加で、モンスター養殖部屋オークキングを5部屋作るつもりだ。

 橋本はしもとさんから電話を貰った。
 モンスター養殖部屋の事業をやってもいいという会社があるそうだ。

 ギフトなどでおなじみの四角大ハムという会社だ。
 上場企業だぞ。
 担当者と会うことになった。

 名刺交換も済み、世間話を終え、相手は話を切り出した。

「定期的にオークキングの肉が手に入るとなれば多少のリスクは構いません」
「スタンピードの補填もやむを得なしですか」
「スタンピードが来ても、次のスタンピードまではただで肉が手に入ります。これは実に大きい」
「スタンピード後を見据えているわけですね」
「ええ」

 スタンピード後を考えている人とは初めて会ったな。

「1部屋20億円を考えていますが、よろしいですか」
「はい、契約書も作ってあります」

 やけに手回しがいいな。
 俺は契約書のデータを弁護士に送ってチェックして貰って、問題ないということで契約はなった。

 100億が手に入ったぞ。
 オークキング以上に美味い肉が手に入らないかな。
 肉最強伝説始まるか。
 浮かれているのが自分でも分かるが、にやけ顔が止まらない。
 最低の補填予想金額を手に入れた。

「ひゃっほい」

 事務所に帰って藤沢ふじさわと手を取り合って浮かれた。

「先輩、ついにやりましたね」
「でも、まだ最低ラインだ。オークの出る部屋はあと二部屋しかない。次の階層に行かないと肉が手に入らない」

 賃貸契約の改訂を始めた。
 補填が100億を超えたら、一部屋につきその50分の1を補填することにした。
 前より有利な契約になったので、住民全員が同意してくれた。

 カイザーウルフの殺処分ロッカーを金属製にする。
 ありものの部品を流用しているので、1日で済んだ。

 オーガの養殖部屋がなんとかなったらな。
 オーガの皮は安い。
 5万円じゃちょっと。

 商品価値を高める方法か。
 何かあるだろうか。
 俺は1部屋、オーガの殺処分部屋を作った。

 オーガの死骸を前に考える。
 悪い革じゃないんだよな。
 ただ、柔らかくないから加工がしづらくて、財布などの小物にも向かない。

「【リフォーム】、皮の盾。おお、出来るのか」

 試しに持ってみると軽くてかなり良い。
 売れても加工するのが俺のスキルありきじゃな。
 それに盾ならジュラルミンとかもっと良いのがある。

 硬い革だと何があるんだろう。
 硬い革はワニ革とかあるけど、それだと財布とか小物だな。
 ただオーガはそれよりももっと硬い。
 スーツケースみたいな大きい鞄の表かな。

 でも良い鞄は安いのでたくさんある。
 競合のいない硬い革の用途かぁ。
 冒険者用にプロテクターとか売れるかな。

 ネットでチェックしてみると、そういう商品はあった。
 確かに高いが、加工賃が高いのだろうな。
 俺はスキルで出来るが、それならモンスター殺していた方が効率が良い。

 結局のところオーガの皮を高く売ることは出来なかった。
 俺達用に名刺入れを作った。
 非売品だ。
 こんなのしか出来ない。
 リフォームスキルで出来る加工は、たいがいは人の手で出来る。
 ダンジョンの中のリフォームが例外なだけだ。

 同じ魔力を使うのならダンジョンをリフォームしてなんぼなんだろうな。
 オーガの革製品も趣味だな。
 オーガの付加価値は上げられなかったけど、物作りの趣味が増えたと思えば良いか。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
              支出       収入       収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し               24,575万円
依頼金          100万円
上級ポーション2個             606万円
彫像10体                  10万円
カイザーウルフ60体          6,000万円
設計依頼          34万円
殺処分ロッカー5つ  2,635万円
契約書のチェック      10万円
殺処分部屋5部屋分譲            100億円
スタンピード積み立て金  100億円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計      1,002,779万円 
                1,038,211万円 35,432万円

遺産(不動産)         0円
ダンジョン        -74億円
スタンピード積み立て金  100億円

 スタンピード積み立て金を始めることにした。
 銀行に寝かしておくのも勿体ないので、株でも始めたいが、そんなのより利回りの良い投資がある。
 殺処分部屋ビジネスだ。

 やるなら別会社だな。
 別会社を作ると俺がさらに忙しくなる。

 誰かに仕事を振りたいが、会社を経営できるような人物に心当たりはない。
 とりあえず、1階層を制覇するまでは計画だけにしておこう。
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