殺人推理:配信案内~プログラマー探偵:路軸《ろじく》九美子《くみこ》 第1章:愛憎の反転《桁あふれ》~

喰寝丸太

文字の大きさ
上 下
29 / 56

第29話 情報収集《関数一覧》

しおりを挟む
 次は人事課の富鈴とみすず 美麗みれい

「お待たせ」
「無理を言っているのはこっちだから」

「で何が聞きたいの? またデータ?」
「去年の2月17日に休んだよな。なんの理由で?」
「なんだったっけ。……覚えてないわ。旅行に行ったのかもね」

 旅好きなら、旅行の日は覚えているはずだ。
 彼女は少しためらったような気がする。
 言いたくないという事かな。

【もっちん:むっ、少し間があったな。怪しい】
【勝手ソンソン:記憶を探ったんだよ。一年前のことだからな】
【やすピー:うーん、どうでしょうね。棋士なら棋譜は覚えている。旅行好きなんでしょ。ちょっと違和感】
【ハイレックス:美人だな好みだ。よって無罪】
【ば7:どうだろうな。これだけじゃ何とも言えない】
【蟹鎌:ちっちっちっ、全てを疑うのだ。そして真実は証拠と共にある】
【アーラヨット:九美子様はただ聞いているだけだけど、どうなんだろう】

「休みに関して要望はある?」
「今はないわ」
「満足している?」
「ええ」

 意外な答えだ。
 でも何となく見えてくるものがある。
 『今は』と言ったから前または将来的には休みがもっと欲しかった。
 そう考えるのが自然だろう。
 プログラムの事は分からないが、人間の機微なら多少分かる。

【やすピー:休みがなくて良いなんて変だわ】
【ハイレックス:仕事が楽しいってことあるじゃないか。きっとそうなんだよ】
【勝手ソンソン:どうだろうな。怪しいような怪しくないような】
【ば7:こういうちょっとした会話が糸口になるんだよな】
【蟹鎌:ちっちっちっ、素人推理なぞ一銭にもならん。証拠を持ってこい】
【アーラヨット:早く、九美子様の推理を聞きたい】
【もっちん:俺には分からん。推理小説読まないもん】

「アンケートありがと」
「どういたしまして」

「何か噂とかない?」
「ゴシップとか気にするように思えないけど、まあ良いわ。社内の噂としては産業スパイ、横領、不倫があるわ」
「ありきたりだね」

【もっちん:ゴシップいいね。こういう話は好き】
【アーラヨット:九美子様の情報がほしい】
【勝手ソンソン:いろいろと事件がある会社だ。だがどれもありそうな事件ばかりだ】
【ば7:この3つの事件は俺の会社でもあった】
【蟹鎌:ちっちっちっ、小さい事件を追っても本丸に辿り着くとは限らない】
【やすピー:どれかが関係してるかもよ。意味のない手はないの】
【ハイレックス:美麗みれいをもっと見つめるのだ。できればアップで】

「産業スパイには散々よ。データとにらめっこして、怪しい奴を探せって言われてもね。勤務表から産業スパイを見抜けるようなスキルはないわ」
「そんな仕事を振られたのか」
「ええ、他社に似たような製品が発売されると、この手の仕事が発生するの。いい迷惑だわ。コピー商品なんて今の時代簡単にできるのに」

【アーラヨット:九美子様がきっと産業スパイを片付けてくれるはずだ】
【勝手ソンソン:産業スパイなら殺しに発展するかもな】
【やすピー:そうね。大金が動きそう】
【ハイレックス:少し困った顔も素敵】
【ば7:捜査してみるしかないな。でないと真実は分からん】
【もっちん:もっと色っぽい話がいいな】
【蟹鎌:ちっちっちっ、殺人に関係していると考えるのは無理がある。産業スパイは計算高い。殺人は忌避するはずだ】

「へぇ、横領は?」
「経理の方から流れてきた噂よ」
「監査が入るのかな?」
「それが変なのよ。数字が合わないらしいけど、上が止めているの。横領に上の人が関わっているとの噂だわ」

【蟹鎌:ちっちっちっ、幹部が関わった横領か。社長に直訴でもするんだな】
【アーラヨット:これも九美子様が解決してくれるはずだ】
【勝手ソンソン:横領というと女性社員のイメージがあるな。経理を一手に任されている女性。それと幹部の男。最近は社長も横領するな】
【もっちん:色っぽくないな。美人社員が横領して貢いだって話なら興味あるけど】
【やすピー:女性社員は偏見よ。男性も同じぐらい横領してる】
【ハイレックス:うんうん、ニュースになりそうなネタだ。金一封は無理かな】
【ば7:殺人と横領ね。殺されたのが経理の男性ならありだけど。広報じゃ可能性は低いかな】

「不倫は?」
「その噂はしょっちゅうね。途切れた事の方が珍しい。工場勤務も入れたら必ず誰か不倫している」
「そんなもんかな」

【もっちん:待ってました。でもそれだけの情報。不倫しそうな女性の情報カモン】
【蟹鎌:ちっちっちっ、不倫は殺人に関係あるかもな。ただ証拠がないことには】
【アーラヨット:九美子様はこういう話題は苦手そう。知的美女だから。清純派のイメージだけど合っているよね】
【勝手ソンソン:うん、清純派だと思う】
【やすピー:クール系の女は意外と】
【ハイレックス:九美子様には当てはまらないはず】
【ば7:不倫は良くないね。会社でみつかると左遷される】

「じゃあ行くね。データを渡したんだから、こんど焼肉を奢ってよ」
「分かったよ。月末にでも行こう」
「やった」

 『産業スパイ、横領、不倫の噂』とスマホに書き込んだ。

 うーん、ありがちな噂だ。
 他社の知り合いの話でもこの手の噂は良く出てくる。
 産業スパイを恐れて電子ロックにしたなんて話も良く聞く。

 部屋の出入りを管理すれば、確かにスパイはあぶり出せるかもな。
 電子ロックは何となく嫌だ。
 プログラムに管理されているような気になるからだ。

 横領もそれなりに聞く。
 金額と日付が白紙の領収書を切ってもらって、出張の時とかに、上手く清算したりする。
 小さいのだとこんな手口らしい。
 大きいのだとかだとニュースになるけどな。

 不倫はまあね。
 それなりに噂は聞く。
 実際にしてた人とは会ったことがないが、左遷されたりすると、そういう噂が出る事もある。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

【完結】共生

ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。 ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。 隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

お狐様の言うとおり

マヨちくわ
ミステリー
犯人を取り逃したお巡りさん、大河内翔斗がたどり着いたのは、小さな稲荷神社。そこに住み着く神の遣い"お狐様"は、訳あって神社の外には出られない引きこもり狐だけれど、推理力は抜群!本格的な事件から日常の不思議な出来事まで、お巡りさんがせっせと謎を持ち込んではお狐様が解く、ライトミステリー小説です。 1話完結型のオムニバス形式、1話あたり10000字前後のものを分割してアップ予定。不定期投稿になります。

この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―

至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。 二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。 彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。 信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。 歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。 幻想、幻影、エンケージ。 魂魄、領域、人類の進化。 802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。 さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。 私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。

白昼夢 - daydream -

紗倉亞空生
ミステリー
ふと目にした一件の新聞記事が、忘れていた遠い昔の記憶を呼び覚ました。 小学生時代の夏休みのある日、こっそり忍び込んだ誰もいないはずの校舎内で体験した恐怖。 はたしてあれは現実だったのだろうか? それとも、夏の強い陽射しが見せた幻だったのだろうか? 【主な登場人物】 私………………語り手 田母神洋輔……私の友人      ※ シンジ…………小学生時代の私 タカシ…………小学生時代の私の友人 マコト…………同上 菊池先生………小学校教師 タエ子さん……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...