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第16話 飲み会《ログ参照》
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「去年のバレンタインデーに飲み会? ないね。強制したら文句が出る。そんな話は出るはずもない」
「そんな飲み会を主催したら、寂しい奴だと思われる」
「一人だとしてもプライドがあるからね」
同僚に聞いたが、答えのあった人は全員が全否定だった。
幻の飲み会か。
謎としては陳腐だな。
密会の言い訳だろう。
去年の2月14日に蜂人はどこに行ったのかな。
密会だとすれば店を予約したに違いない。
数ある店からそれを探すのは難しい。
仕方ない九美子に考えさせるか。
「去年のバレンタインデーの飲み会はなかった」
配信を始めて、少し間を置いてから僕はそう言った。
【もっちん:やっぱりね。そんな日に飲み会するのは独身の寂しい男だけ】
【ふんすか:まあそうだと思う】
【いっぽっぽ:バレンタインデーの飲み会、確かに怪しい】
【勝手ソンソン:そんな日に居酒屋いくとカップルがムカつくこと】
【やすピー:経験があるのね】
【ハイレックス:俺もある。学生の時だけど】
【やんまま:私もそんな日の飲み会は行くなら彼氏ね】
【アーラヨット:九美子様とバレンタインデートできたら死んでも良い】
「蜂人が2月14日に店を予約したらどこかな?」
九美子にテレビ電話を繋いで問い掛けた。
「簡単よ。プログラム的には『ログ』の問題ね。ネットの接続情報を探すの。社内のザーバーを管理している人に掛け合えばいいわ」
【勝手ソンソン:そんなことまで分かっちゃうんだ】
【やんまま:接続ログってみんな分かる物なの】
【やすピー:ええ、パソコンを消去しても分かる記録はある】
【ハイレックス:怖いな】
【アーラヨット:九美子様、博識、尊い】
【もっちん:俺、秘密のアクセスはネットカフェからしてる】
【勝手ソンソン:お前、それ危ないぞ。ウィルスとか仕組まれている可能性がある】
【やすピー:テレビでやってたね。ネットバンキングの情報を取られちゃうんだよね】
【ハイレックス:俺も見た】
【いっぽっぽ:そういえばそういう事件もあったね】
【ふんすか:今回の事件とは関係なさそうだけど】
「なんで社内のパソコンを使って予約を取ったと判る?」
「スマホは家族に見られる危険性があるもの」
【もっちん:家族に見られて困るのなら、会社のパソコンは良いかもね】
【ふんすか:会社なら家族は来ないからね】
【いっぽっぽ:俺も会社のパソコンの履歴には気をつけよう】
【やすピー:他の社員にはばれるかもだけど】
【勝手ソンソン:密会の店の予約なら、会社でしても問題ないな】
【アーラヨット:九美子様と密会したい】
【ハイレックス:そうだよね】
【やんまま:案外と抜けてるものなのよね。うちの旦那もキャバクラ行った証拠とかポロっと出てくる】
「会社だって見られたら困るだろう」
「そうかしら、席を二つ用意するだけなら、見られても邪推はされないわ。男女のカップルだとは限らないのだし」
「分かった掛け合ってみる」
さて、なんて言おう。
「蜂人が亡くなったのは知っているよね」
「ええ」
「蜂人が亡くなる前にレストランを予約したんだけど、キャンセルしたい。頼まれたんだ。でどこのホームページか調べたい。今回、予約したのは自宅だけど、同じ店に去年バレンタインデー近くに予約したらしい」
「ええと、去年の記録ですね。これかな」
そのホームページはレストランだった。
うん、当たりだ。
これに間違いない。
そこは会社がいつも接待として使う店ではなかったから怪しいと思う。
その店の外装は落ち着いた雰囲気の店でとても高そうだ。
ドアを開けるとチリンとベルが鳴り、ウェイターが出迎えてくれた。
照明も少し暗くしてあり、ムードを出すには良い店だ。
テーブルにキャンドルとか置いたら映えること間違いなしだ。
店内も綺麗で、ゴミひとつ落ちてない。
「まだ、食事はお出しできません。うちはディナーだけなんで」
「ええと、去年のバレンタインデーに蜂人という者が食事したと思うんですが」
「去年のバレンタインデーの蜂人さんの予約ですか? お客さんの情報は喋れません」
「ええと、その席が素晴らしかったというので僕も同じ席を予約したい」
「そういう事でしたら。お客さん運が良かったですね。その席は空いてますよ」
ウェイターが帳簿をチェックして教えてくれた。
この店に蜂人が来たのは間違いない。
それにしても万札が飛ぶ出費は痛い。
2人で予約したから、無駄にしない為には、九美子に頼まないといけない。
バレンタインデーにレストランを予約したなんて言ったらどんな顔をするだろう。
僕はきっと顔を真っ赤にして、九美子にそれを告げるに違いない。
事件よりこっちの方が難問に思える。
さて問題は蜂人がここに誰と来たかだ。
店員から上手く聞き出す糸口がつかめない。
なんて言おう。
こういう時は九美子に相談しよう。
予約の相談をしているなら、電話も問題ないだろう。
「ええと、一緒に来る予定の女生と電話したい。振られたりすると恰好悪いから外で掛けてくるよ」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
一度、店の外に出る。
「そんな飲み会を主催したら、寂しい奴だと思われる」
「一人だとしてもプライドがあるからね」
同僚に聞いたが、答えのあった人は全員が全否定だった。
幻の飲み会か。
謎としては陳腐だな。
密会の言い訳だろう。
去年の2月14日に蜂人はどこに行ったのかな。
密会だとすれば店を予約したに違いない。
数ある店からそれを探すのは難しい。
仕方ない九美子に考えさせるか。
「去年のバレンタインデーの飲み会はなかった」
配信を始めて、少し間を置いてから僕はそう言った。
【もっちん:やっぱりね。そんな日に飲み会するのは独身の寂しい男だけ】
【ふんすか:まあそうだと思う】
【いっぽっぽ:バレンタインデーの飲み会、確かに怪しい】
【勝手ソンソン:そんな日に居酒屋いくとカップルがムカつくこと】
【やすピー:経験があるのね】
【ハイレックス:俺もある。学生の時だけど】
【やんまま:私もそんな日の飲み会は行くなら彼氏ね】
【アーラヨット:九美子様とバレンタインデートできたら死んでも良い】
「蜂人が2月14日に店を予約したらどこかな?」
九美子にテレビ電話を繋いで問い掛けた。
「簡単よ。プログラム的には『ログ』の問題ね。ネットの接続情報を探すの。社内のザーバーを管理している人に掛け合えばいいわ」
【勝手ソンソン:そんなことまで分かっちゃうんだ】
【やんまま:接続ログってみんな分かる物なの】
【やすピー:ええ、パソコンを消去しても分かる記録はある】
【ハイレックス:怖いな】
【アーラヨット:九美子様、博識、尊い】
【もっちん:俺、秘密のアクセスはネットカフェからしてる】
【勝手ソンソン:お前、それ危ないぞ。ウィルスとか仕組まれている可能性がある】
【やすピー:テレビでやってたね。ネットバンキングの情報を取られちゃうんだよね】
【ハイレックス:俺も見た】
【いっぽっぽ:そういえばそういう事件もあったね】
【ふんすか:今回の事件とは関係なさそうだけど】
「なんで社内のパソコンを使って予約を取ったと判る?」
「スマホは家族に見られる危険性があるもの」
【もっちん:家族に見られて困るのなら、会社のパソコンは良いかもね】
【ふんすか:会社なら家族は来ないからね】
【いっぽっぽ:俺も会社のパソコンの履歴には気をつけよう】
【やすピー:他の社員にはばれるかもだけど】
【勝手ソンソン:密会の店の予約なら、会社でしても問題ないな】
【アーラヨット:九美子様と密会したい】
【ハイレックス:そうだよね】
【やんまま:案外と抜けてるものなのよね。うちの旦那もキャバクラ行った証拠とかポロっと出てくる】
「会社だって見られたら困るだろう」
「そうかしら、席を二つ用意するだけなら、見られても邪推はされないわ。男女のカップルだとは限らないのだし」
「分かった掛け合ってみる」
さて、なんて言おう。
「蜂人が亡くなったのは知っているよね」
「ええ」
「蜂人が亡くなる前にレストランを予約したんだけど、キャンセルしたい。頼まれたんだ。でどこのホームページか調べたい。今回、予約したのは自宅だけど、同じ店に去年バレンタインデー近くに予約したらしい」
「ええと、去年の記録ですね。これかな」
そのホームページはレストランだった。
うん、当たりだ。
これに間違いない。
そこは会社がいつも接待として使う店ではなかったから怪しいと思う。
その店の外装は落ち着いた雰囲気の店でとても高そうだ。
ドアを開けるとチリンとベルが鳴り、ウェイターが出迎えてくれた。
照明も少し暗くしてあり、ムードを出すには良い店だ。
テーブルにキャンドルとか置いたら映えること間違いなしだ。
店内も綺麗で、ゴミひとつ落ちてない。
「まだ、食事はお出しできません。うちはディナーだけなんで」
「ええと、去年のバレンタインデーに蜂人という者が食事したと思うんですが」
「去年のバレンタインデーの蜂人さんの予約ですか? お客さんの情報は喋れません」
「ええと、その席が素晴らしかったというので僕も同じ席を予約したい」
「そういう事でしたら。お客さん運が良かったですね。その席は空いてますよ」
ウェイターが帳簿をチェックして教えてくれた。
この店に蜂人が来たのは間違いない。
それにしても万札が飛ぶ出費は痛い。
2人で予約したから、無駄にしない為には、九美子に頼まないといけない。
バレンタインデーにレストランを予約したなんて言ったらどんな顔をするだろう。
僕はきっと顔を真っ赤にして、九美子にそれを告げるに違いない。
事件よりこっちの方が難問に思える。
さて問題は蜂人がここに誰と来たかだ。
店員から上手く聞き出す糸口がつかめない。
なんて言おう。
こういう時は九美子に相談しよう。
予約の相談をしているなら、電話も問題ないだろう。
「ええと、一緒に来る予定の女生と電話したい。振られたりすると恰好悪いから外で掛けてくるよ」
「はい、ごゆっくりどうぞ」
一度、店の外に出る。
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