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第2話 九美子登場《関数呼び出し》
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僕はビル一階のレストランの野外席を借りてノートパソコンを開いた。
そして、配信を開始、テレビ電話のソフトを起動させる。
「今、大丈夫」
僕が繋いだのはもちろん九美子だ。
「どちら様?」
【もっちん:うわ、美女が開かずの4枠に】
【やすピー:この女流は誰? きーっ、悔しい。投了です。参りました】
「モニターに僕の顔が映っているだろ。分かっている癖に」
「知っている? 符号付きの変数のプラスが続き過ぎると、どうなるか?」
九美子はたまにプログラムの話題を出して煙に巻く。
そういう時は少しもやっとしている時だ。
すねる前の前兆と言っても良い。
今、入学のお子さんの件を持ち出すのは不味い。
完全にすねる。
【もっちん:謎かけね。分からんちんよ】
【やすピー:無限に増えるじゃないの】
【勝手ソンソン:おっ、タスチューバーが増えている。デュオだったのか】
【もっちん:ソンソンさん、ちーす】
【やすピー:いらっしゃいませ】
【勝手ソンソン:おー、こんちは】
「増えるのが止まるんじゃないかな。カンストとか言うじゃないか」
「違うわ」
「じゃあゼロになる」
「惜しいわね。符号無しだとそうなるわ」
【勝手ソンソン:話が見えないんだけど】
【もっちん:数が増えすぎるとどうなるかの話】
【勝手ソンソン:海に落ちる】
【やすピー:ネズミじゃないですよ】
「教えてくれよ」
「符号付きだとやがてマイナスになるの。符号が反転するのよ。【桁あふれ】現象と呼ばれているわ」
「プログラムの事は分からない」
「適度な距離感が大切なのよ。何事も限度を過ぎると良くないわ」
「じゃあ、切るぞ」
そろそろ会いに行かないとすねるかもな。
でも、今日はその前に仕事を熟さないと。
【もっちん:あー、美女が行ってしまった】
【勝手ソンソン:スクショ撮って保存した】
【もっちん:俺も保存した】
【やすピー:男はこれだから】
「お前ら、違法なことは駄目だよ。保存したスクショを変な事で使うなよ。切り札は凄かっただろう。ちょっと調子が悪くて仕事の話は出来なかったけど」
【もっちん:初雄、さっきの美女とチェンジ】
【勝手ソンソン:だな、そうしたら、チャンネル登録者数うなぎ上りだぞ】
「おっ、チャンネル登録者数が凄い勢いで伸びてる」
【どら焼き:美女がいると聞いて】
【もっちん:お初だよね】
【カルメランコ:なんだ男じゃないか】
【焼きラーメン:詐欺だ】
【勝手ソンソン:動画の時間をちょっと戻してみ】
【どら焼き:うおっ】
【カルメランコ:ぎょ】
【焼きラーメン:そんな魔魚】
チャンネル登録者数が更に増える。
もうコメントが目に追えない。
配信を終了した。
九美子は不味かったかな。
でも前に配信に登場させていいかと聞いたら良いと言っていたからな。
登録者数激増が終わるまでには駅に着いていた。
ううっ寒っ。
電車の中は暖かいだろう。
ICカードを取り出して改札の機械にタッチ。
ピピッと音がした。
電車が来るまでにあと10分か。
僕は入学の抽出を考え始めた。
配信もしよう。
【もっちん:配信が始まったが、美女はいずこ】
【勝手ソンソン:美女のお名前は?】
「九美子だよ」
【ちくわ部:名前だけ知っても。がっくり】
【ポールペン:がっくり】
【ハイレックス:もう来ないよ。うわーーん】
コメントはがっかりの文字ばかり。
「入学の抽出やるぞ」
【キャタピラ:誰も頼んでない。引っ込め】
「そう言わずに。ええと、前に聞いた九美子によれば一つずつ考えるだったな。複数同時に考えるからややこしくなる。とすれば、まずは入学年齢の子供を全て抽出だ。そして早生まれの年齢設定。普通生まれとやって」
【素間歩:フリーズしたな】
「あれっ? ええと、何だかおかしい。入学が遅れた子供はどうするんだ。これをどうしたら良い」
電車のライトが僕を照らし、風が吹いた。
配信を辞めて、ノートパソコンを閉じる。
電車に乗り込むと暖気が僕を包んだ。
蜂人の家の最寄り駅まではまだ時間がある。
カメラのスイッチに手をやって、ノートパソコンを開く。
「うーん、条件の絞り方が分からない。九美子に頼まないと」
【ハイレックス:美女の登場時間を教えてくれるとありがたい】
【もっちん:おっ、九美子様降臨予言か】
【ちくわ部:全裸待機】
【素間歩:期待してる】
【キャタピラ:早くそれを言えよ】
【勝手ソンソン:来るのか】
【カルメランコ:やっほー】
【焼きラーメン:待ってました】
【ポールペン:わくわく】
【どら焼き:レギュラー出演してくれるといいな】
「仕事のアドバイスしてくれよ」
【もっちん:そんなことしたら、九美子様が降臨しないだろ】
くそっ、九美子にはこんなのが分からないのと言われそうだ。
1つ条件を設定するだけでも、こっちは一苦労なんだぞ。
九美子の条件判断は真か偽しかないのよという声が浮かんだ。
人間は大体という曖昧な感覚で生きているんだよ。
単純に割り切れたりしない。
そして、配信を開始、テレビ電話のソフトを起動させる。
「今、大丈夫」
僕が繋いだのはもちろん九美子だ。
「どちら様?」
【もっちん:うわ、美女が開かずの4枠に】
【やすピー:この女流は誰? きーっ、悔しい。投了です。参りました】
「モニターに僕の顔が映っているだろ。分かっている癖に」
「知っている? 符号付きの変数のプラスが続き過ぎると、どうなるか?」
九美子はたまにプログラムの話題を出して煙に巻く。
そういう時は少しもやっとしている時だ。
すねる前の前兆と言っても良い。
今、入学のお子さんの件を持ち出すのは不味い。
完全にすねる。
【もっちん:謎かけね。分からんちんよ】
【やすピー:無限に増えるじゃないの】
【勝手ソンソン:おっ、タスチューバーが増えている。デュオだったのか】
【もっちん:ソンソンさん、ちーす】
【やすピー:いらっしゃいませ】
【勝手ソンソン:おー、こんちは】
「増えるのが止まるんじゃないかな。カンストとか言うじゃないか」
「違うわ」
「じゃあゼロになる」
「惜しいわね。符号無しだとそうなるわ」
【勝手ソンソン:話が見えないんだけど】
【もっちん:数が増えすぎるとどうなるかの話】
【勝手ソンソン:海に落ちる】
【やすピー:ネズミじゃないですよ】
「教えてくれよ」
「符号付きだとやがてマイナスになるの。符号が反転するのよ。【桁あふれ】現象と呼ばれているわ」
「プログラムの事は分からない」
「適度な距離感が大切なのよ。何事も限度を過ぎると良くないわ」
「じゃあ、切るぞ」
そろそろ会いに行かないとすねるかもな。
でも、今日はその前に仕事を熟さないと。
【もっちん:あー、美女が行ってしまった】
【勝手ソンソン:スクショ撮って保存した】
【もっちん:俺も保存した】
【やすピー:男はこれだから】
「お前ら、違法なことは駄目だよ。保存したスクショを変な事で使うなよ。切り札は凄かっただろう。ちょっと調子が悪くて仕事の話は出来なかったけど」
【もっちん:初雄、さっきの美女とチェンジ】
【勝手ソンソン:だな、そうしたら、チャンネル登録者数うなぎ上りだぞ】
「おっ、チャンネル登録者数が凄い勢いで伸びてる」
【どら焼き:美女がいると聞いて】
【もっちん:お初だよね】
【カルメランコ:なんだ男じゃないか】
【焼きラーメン:詐欺だ】
【勝手ソンソン:動画の時間をちょっと戻してみ】
【どら焼き:うおっ】
【カルメランコ:ぎょ】
【焼きラーメン:そんな魔魚】
チャンネル登録者数が更に増える。
もうコメントが目に追えない。
配信を終了した。
九美子は不味かったかな。
でも前に配信に登場させていいかと聞いたら良いと言っていたからな。
登録者数激増が終わるまでには駅に着いていた。
ううっ寒っ。
電車の中は暖かいだろう。
ICカードを取り出して改札の機械にタッチ。
ピピッと音がした。
電車が来るまでにあと10分か。
僕は入学の抽出を考え始めた。
配信もしよう。
【もっちん:配信が始まったが、美女はいずこ】
【勝手ソンソン:美女のお名前は?】
「九美子だよ」
【ちくわ部:名前だけ知っても。がっくり】
【ポールペン:がっくり】
【ハイレックス:もう来ないよ。うわーーん】
コメントはがっかりの文字ばかり。
「入学の抽出やるぞ」
【キャタピラ:誰も頼んでない。引っ込め】
「そう言わずに。ええと、前に聞いた九美子によれば一つずつ考えるだったな。複数同時に考えるからややこしくなる。とすれば、まずは入学年齢の子供を全て抽出だ。そして早生まれの年齢設定。普通生まれとやって」
【素間歩:フリーズしたな】
「あれっ? ええと、何だかおかしい。入学が遅れた子供はどうするんだ。これをどうしたら良い」
電車のライトが僕を照らし、風が吹いた。
配信を辞めて、ノートパソコンを閉じる。
電車に乗り込むと暖気が僕を包んだ。
蜂人の家の最寄り駅まではまだ時間がある。
カメラのスイッチに手をやって、ノートパソコンを開く。
「うーん、条件の絞り方が分からない。九美子に頼まないと」
【ハイレックス:美女の登場時間を教えてくれるとありがたい】
【もっちん:おっ、九美子様降臨予言か】
【ちくわ部:全裸待機】
【素間歩:期待してる】
【キャタピラ:早くそれを言えよ】
【勝手ソンソン:来るのか】
【カルメランコ:やっほー】
【焼きラーメン:待ってました】
【ポールペン:わくわく】
【どら焼き:レギュラー出演してくれるといいな】
「仕事のアドバイスしてくれよ」
【もっちん:そんなことしたら、九美子様が降臨しないだろ】
くそっ、九美子にはこんなのが分からないのと言われそうだ。
1つ条件を設定するだけでも、こっちは一苦労なんだぞ。
九美子の条件判断は真か偽しかないのよという声が浮かんだ。
人間は大体という曖昧な感覚で生きているんだよ。
単純に割り切れたりしない。
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