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ダンジョン奮闘編

第30話 危機一髪

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「ファイヤーランス」

 御花畑の魔法を発動する元気な声がダンジョンに響く。
 オークの腹に穴が空いてオークは黒い霧になった。

「私も、えいっ」

 爆弾が炸裂しオーガが吹き飛ばされる。
 小前田の爆弾も相変わらず高威力だ。
 俺も負けじと爆弾を投げる。
 魔物のパーティは瞬く間に殲滅された。



「だいぶ魔物は強くなったが、まだまだ余裕だな」
「油断していると危ないわよ。3階層で最初に苦戦したの忘れたの」
「そうだよ。命大事にだよ」
「それより宝箱が出ているぞ」
「はい、罠鑑定水晶」
「ええっと、罠はテレポートか。御花畑さわるなよ。やばい奴だ」
「私もそれほど馬鹿じゃないわ」

 俺達はそんな見え見えの罠には掛からない。
 宝箱を無視して進んで行った。

 次の魔物のパーティもテレポートの宝箱を落とした。
 ダンジョンはこの階層でよっぽどテレポートさせたいらしい。
 お金なら魔石だけで充分稼げるし、魔物がたまに牙や毛皮や装備を落とすから無視しても問題ない。
 危険を冒してまで挑戦するほどじゃないな。



 俺達が何の変哲も無い通路を進んでいると、突然床が光った。
 何が起きたんだもの凄く苦しい。
 ここから早く出してくれと思ったら、砂の小山に埋もれていた。

「ぺっ、ぺっ。砂が口の中に入った」
「最悪、服の中も砂だらけ」
「なに、なにが起こったの」

「状況から見るに、ワープの罠を踏んだんだろう」
「それにしては変ね。魔物の群れの中とかもっと危険な場所がいくらでもあるでしょ」
「そうだな、御花畑」



「私、分かっちゃった。石の中に飛ばされたのよ。そして、とんでも物理現象で石を粉々に破壊したのよ」
「俺には何で石が砂になったのか理由が分かる」
「えっ、物体が重なってなんちゃら爆発して不壊の装備で助かったとかじゃないの」
「違うぞ、小前田。俺が腰にぶら下げているトンカチのおかげだ」

「また、スキルで変な物を作ったのね」
「土精霊のトンカチだ。『ディグ民話』に出てくる鉱夫のお守りだよ」
「どんな効果なの」
「どんな硬い岩でも一撃で粉々だ。ちなみに材料はトンカチに精霊への祈りだよ」

「あなた、人助けの為にしか能力を使わないんじゃなかったの」

 御花畑から突っ込みが入った。

「そうは言うけど人を助ける前に自分を助ける。それとダンジョンの収益の一部は寄付するよ。それに魔物退治は人の役に立っている」
「そういう事にしておいてあげるわ。服を着替えるから後ろを向いてて」
「ダンジョンの中で裸になるのは嫌だな」
「良美、つべこべ言わない。服がじゃりじゃりでも良いの?」
「絶対良くない」



 俺は慌てて後ろ向いた。
 衣擦れの音が艶めかしいがパラパラと落ちる砂の音が台無しにしている。
 今突然振り返ったらとかしょうもない想像をしてしまった。

「きゃ、いたい。もっと優しくして」
「奥まで行くわよ」
「そっとね」
「じっとして。動くともっと痛いわよ」
「お風呂に入りたい」
「そうね、髪の毛の奥まで砂だらけ、ひとっぷろ浴びたいわね」



 それにしても時間が掛かる。
 何やってるんだ。
 振り返りたい衝動と戦う事、三十分。

「もう良いわよ」
「おまたせ」
「遅いよ」

「しょうがないじゃない。髪の毛の中にも砂が入ったんだから」
「そう、そう、シャンプーしたいぐらい」
「洗浄の魔法とかそういうのはないのか」
「無いわね」
「錬金術にも洗剤のレシピはあっても、一瞬で身体を洗う道具はないよ」

「そうか、不便だな。これを一応渡しとく」

 俺はアイテム鞄からトンカチを取り出して二人に渡した。

「さて、こうなったらダウジングで階段に向かって一直線だ。邪魔な壁はトンカチで砕いてショートカットするぞ」
「そうね。それが早いわ」
「は~い」

 俺達は壁を壊しながら進み下の階へ辿りついた。
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