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第5章 アンデッドでざまぁ

第243話 おっさん、ジーナを見つける

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 踏み込んで来た増援を、瞬く間に血祭りに上げた。
 増援が途切れた所で見覚えのあるシルエットが現れた。

「また派手にやったわね」

 ジャスミン達が現れた。

「序の口だよ。ダンジョンの時はもっと凄かった」
「うっぷ」

 カイルが吐き気をこらえている。
 外で待っておけばいいものを。

「まだ、ジーナの捜索はしてないが。それらしい人はいたか?」
「適当に覗いてみたけど居ないわ」

「カイルを護衛して、調べて回ってくれないか。俺は兵士達を処理する」
「ええ」

 ジャスミンが答えたと同時に俺の腹に穴が開いた。
 この感じは聖杭ミスランター。

「ほっほっほ。どうじゃ、わしの作った聖杭ミスランター改は」

 老人が聖杭を構えて出て来た。

「みんな隠れてろ」
「しぶといの。腹に穴を開けられても動じないとは」

 俺は聖杭を奪うべく踏み込んだ。
 聖杭から七色のビームが飛んだのが見えた。

「ぐっ。またか俺のスピードについてこられるとは」

 俺の頭の半分が吹き飛んだ。

「お前、人間じゃないな」
「ばれては仕方ない」

 俺は血を飲んだ。
 瞬く間に傷が元通りになった。

「ヴァンパイヤかのう。噂に聞く最上位種とやらか。相手にとって不足はないわい」

 俺はコアを右足のくるぶしに移した。
 そして、老人に撃たれるのも構わず踏み込んで聖杭を奪った。

「驚いた。体中に穴を開けられても平気だとは。研究したいのう」
「みんな出てきていいぞ」

 俺は血を飲んで体の穴を塞いでから言った。

「ムニさん、ヴァンパイヤだったんですね。でも僕は敵対感情は持ちません。体中が穴だらけになっても守ってくれた」
「そうか。だが、ヴァンパイヤはモンスターだ。忘れるな」
「ええ。こ、これは。ジーナの声が聞こえる」

 カイルがとんでもない事を言い出した。
 俺は何にも聞こえないんだが。

「どこから聞こえる?」
「あなたの手の辺りから」

 手に持っているのは聖杭ミスランター改だ。
 これがジーナなのか。

「おいじじい。オレンジ色の髪の女性から聖杭ミスランター改を作ったのか」
「そうじゃ、聖杭は人間を魔力タンクに変える技術じゃ」
「なんて外道な事を」

 ジャスミンがそう口を挟んだ。

 こんな状態でも生きているのか。
 そう言えば聖杭ってどんな状態だ。
 魔力の流れが分かる魔力回路の上に聖杭を置いた。

 なるほど、魔力回路が幾つも刻んである。
 これを解除したらどうなるかな。
 爆発する可能性が高い。
 だが、人間に戻る可能性もある。

 実験の前に。
 俺は老人を殺すべく手刀を構えた。

「何をするんじゃ。聖杭ミスランター改のすばらしさが分からんのか。一撃必殺の聖杭を何度でも使えるようにしたのじゃぞ。遠距離攻撃も出来るし、照準も自動じゃ」
「死んどけ」

 老人を血祭りに上げた。

「魔力回路を解除したら、ジーナさんが人間に戻るかもしれない。爆発する可能性もある。どうする?」
「やって下さい。ジーナもそう言ってます」

「よし、この場から離れろ」
「僕は残ります。ジーナと死ねるなら本望です」
「そうか。決めたなら何も言わない」

 カイルと二人で聖杭を前にする。

「やるぞ」
「覚悟はできてます」

 俺は聖杭の魔力回路を解除した。
 まばゆい光が出て、一瞬見えなくなって。
 目が見えた時にはオレンジの髪の半透明な女性が浮かんでいた。

 これはどういう状態だ。

「ジーナ、こんなになっちゃって」
「カイル、心配しないで。これでも生きているの」

 コアがジーナの中にあるのが見えた。
 そうか、聖杭ってのはゴーストの一種か。
 ゴーストの最上位種辺りだな。
 レイスとでも呼ぼうか。

「二人はこれからどうするんだ?」
「ジーナと二人いつまでも暮らします」
「聖杭を解放したいわ」

「解放できるんだな」
「ええ、通常の聖杭は眠っているけど私なら起こせる。そんな気がするの」
「確かか」
「私は聖杭にされてから意識が起きていたけど、これは改良に失敗したせいだと思うわ。他の聖杭に話し掛けたけど、その時も反応はあったのよ。完全に起きなかったのは、パワーが自由に使えなかったからだと思うわ」

「よし、やってみてくれ」

 俺は兵士から奪った聖杭を並べた。
 ジーナが半透明の手で触れた。

「起きたわ」
「よし、解放しよう」

 聖杭は全てがレイスになった。

「カイル、試したい事があるの」
「何だいジーナ」
「魔力が少し欲しいわ?」
「いいよ、持っていっても」

 カイルとジーナが抱き合うと、ジーナのコアが分かれて、赤ん坊のレイスを作り出した。

「おぎゃあ、おぎゃあ」

 おいおい、魔力から同族を作り出したってのか。
 他のレイスが祝福の声を上げる。

「ジーナと子供が持てるなんて。大変だ。この子供は何を食べるんだろう」
「あなた、魔力を与えればいいわ。魔力はモンスターから吸い取りましょう」

 レイスの能力が少し分かった。
 人間がこの種族に取って代わられる日も遠くないかもな。
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