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第5章 アンデッドでざまぁ

第242話 おっさん、大暴れする

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 製造工場までは皇都から馬で一日の距離だった。
 案外、近い所にあるのだな。

 遠くから双眼鏡で観察する。
 分かってはいたが、厳重な警備だ。

「俺一人で侵入してみる」
「それしかないかもね」
「気をつけて」
「必ずジーナを見つけて下さい」

「吉報を待ってろ」

 俺は少し離れた場所で全裸になり、複数のコウモリに化けた。
 俺が化けたコウモリの群れは、製造工場の壁を乗り越え中に入った。

 合体して人間の姿に戻る。
 さて、兵士の装備を探すとしますか。

 たぶんこの平屋は宿舎だな。
 見張りも立っていないし、入ってみるか。

 ビンゴ。
 やはり宿舎だった。
 ロッカールームを漁り、兵士の装備を身に着けた。
 工員の制服も見つけたので頂いておく。

 重要施設だと思われる建物の入口が見える所にやってきた。
 歩哨に立っていると思わせて観察する。

 重要施設に入ろうとしている兵士がいる。
 聞き耳を立てた。

「所属と階級と名前を言え」
「北方軍第11師団所属、兵士長のジャックであります」

 魔道具を操作して何やら見ている。

「通ってよし」
「ご苦労様であります」

 所属と名前か。
 適当な名前では駄目みたいだな。
 しょうがない、通気口から侵入するか。

 霧に変身して通気口に入る。
 段々と食べ物の匂いがしてきた。
 これは食堂に通じているのかな。

 それだと、密かに侵入できない。
 ええい、ままよ。
 光が見えて来た。
 出口で止まる。

「おい、鍋が噴いてるぞ」
「すいません」
「いつもの二丁上がり」

 どうやら厨房のようだ。
 重要施設に厨房とはおかしいな。
 有り得ないかと言われれば、そんな事もあるかもと言わざるを得ないが。
 とにかく侵入だ。

 アイテムボックスから世界一臭い缶詰の中身をぶちまけた。

 怒号と臭いという声が聞こえる。
 俺は通気口から少し出て中を覗いた。

 しめしめ、みんな出て行ったみたいだ。
 俺は人間形態になり工員の制服を身に着ける。
 そして、厨房から出た。

「異臭が物凄いんです」
「何か食い物を放置したんだろう。今から調べるちょっと待て」

 厨房の外ではコックと兵士が話をしていた。
 俺の侵入がばれるのも時間の問題だな。
 ジーナはオレンジの髪に緑の目だ。
 該当者を探すとするか。

 料理を運ぶワゴンが幾つも置かれていた。
 俺はその一つを押す事にした。

「ぼやぼや、するな。料理はあっちだ」

 コックの一人が俺に言った。
 偉そうに殺すか。

 指差された方向には扉がある。
 あの先が食堂かな。

 食堂には用がないが、ワゴンを押していかないとコックが不審に思うだろう。
 今もさぼったら承知しないという目で睨んでいる。
 食堂で皆殺しにしたら気が晴れるだろう。

 俺はワゴンを押して扉の先に入った。
 扉の先は食堂では無かった。

 モンスターが魔力回路の上で鎖に縛られていて、魔力回路は虹色の液体を作っていた。
 ワゴンで運ばれた料理がモンスターの口に強引に入れられてた。

 人間が台に固定され、口を閉じらる事が出来ないようにされて、虹色の液体を流し込まれている。
 何だこれは。
 モンスターの下の魔力回路は生贄の物とよく似ている。
 たぶんだが、魔力を抽出して液体にする物だろう。
 それを人間に与えるとどうなるんだ。
 ろくな事にならない気がする。

属性魔導アトリビュートマジック、刃よ回転して切り刻め」

 ダイヤモンドカッターの刃で鎖を切る。
 モンスターが自由になり、暴れ始めた。

「何をする」
「見て分からないか。このけったくそ悪い施設を壊すんだよ」
「聖杭をありったけ持ってこい。モンスターを仕留めるぞ」

 やっぱり、聖杭ミスランターを使うのだな。
 今のうちに。
 俺は台に固定された男を自由にしてやった。

「喋れるか」
「苦しい。体中が火で焙られているいるようだ。殺してくれ」
「待ってろ。たぶん、体に入った魔力のせいだ」

属性魔導アトリビュートマジック、魔力を吸い取れ」

 魔力は吸い取られない。
 魔力がもう男の物になっているらしい。
 男は体をかきむしると舌を噛んだ。

 助けられなかった。
 せめてその魔力は俺が復讐に使ってやる。

属性魔導アトリビュートマジック、魔力を吸い取れ」

 高密度の魔力が俺に入ってくる。
 俺は魔力を衝撃波に変えて四方に放ち始めた。
 風通しが良くなり、俺は少し落ち着いた。

 兵士が慌ただしく入ってくる。
 手には聖杭ミスランターを持っていた。
 ヴァンパイヤのスピードで聖杭ミスランターを奪い取る。
 アイテムボックスに容れようとしたが、入らない。
 何だ。
 まあ良いか。
 アイテムボックスから背負い鞄を出してその中に容れる。

「敵は魔導で加速を使ってます! 手練れです! 増援を!」

 増援か良いぞもっと来い。
 皆殺しだ。
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