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第5章 アンデッドでざまぁ

第235話 おっさん、正体がばれる

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 深い森に差し掛かったところ、目当ての盗賊が出て来た。
 さてとお仕事しますかね。

属性魔導アトリビュートマジック、刃よ回転して切り刻め」

 俺があげたダイヤモンドカッターの刃をジャスミンとアニータはまだ使っているらしい。
 盗賊が鎧ごと切断されていく。
 楽勝だな。

 俺の出番は無いようだ。

「ポチ、適当に盗賊と遊んでやれ」

 ポチを参戦させると、盗賊は大混乱に陥った。

「お頭、不味いですぜ」
「あれを持ってこい」
「あれですか。死にそうな時以外には、使うなって言われてませんでしたっけ」
「馬鹿野郎、いまがその時だ」

 手下が箱を開ける。
 おい、その輝きは不味いだろ。
 よりによって聖杭ミスランターかよ。

 ポチが危ない。

「ポチ、ホーム」

 その時何を思ったのか盗賊の手下は聖杭ミスランターをジャスミンに向かって投げた。
 間に合うか。
 俺はジャスミンの前に立ちふさがった。

 聖杭ミスランターはヘルメットに当たり爆発を引き起こす。
 あー、食らってしまった。
 コアは現在、下腹にある。
 問題は頭の半分が抉れたって事だ。

 人間なら致命傷、間違いなし。
 誤魔化しようがない。
 ヘルメットは吹き飛んだしな。

 俺はアイテムボックスから血を出すと飲み始めた。
 急速に傷が元通りになる。

「やっぱり、ムニだったのね。人間を辞めているとは予想外だわ。通りで朝方、野営地に血の匂いをさせて帰ってくるはずだわ」

 あれを気づかれていたのか。

「すまん、こんな訳で人間とは仲良くできない」
「モンスターになってもムニはムニだよ」
「アニータ、感動の再会より、先に盗賊を片付けよう」

 俺は抜き手で盗賊達の心臓を貫いて回った。
 頭目だけは生かしてある。

 聖杭ミスランターをなぜ一介の盗賊が持っていたのか、非常に気になったからだ。

「ひっ、化け物」
「そうだ、化け物だ。血を吸われてヴァンパイヤになりたくなければ、素直に答えるんだな。聖杭をどこで手に入れた」
「人を買ってくれる役人から、ピンチになったら使えと渡された」
「よくあるのか」
「いいや初めてだ。俺も気になったが。何百人も人をさらったから、重要視されていると思った」
「役人の名前は」

 その時矢が飛んできて盗賊の頭目に刺さった。

「ポチ、行け」

 ポチが森の中に駆け出して行く。
 しばらくして悲鳴が聞こえ、口を真っ赤にしたポチが帰ってきた。
 用意周到な事だ。
 たぶんポチが殺した殺し屋は何も知らないだろう。
 頭目が捕まったら口封じしろとだけ言われているに違いない。

「ムニ、包み隠さず教えて」
「改革が成功した後に転移の罠に掛かった。モンスター退治をやらされて、奴隷にされた。もちろん逃げ出そうとしたが、殺された。そして、アンデッドになった」
「もう、人間には戻れないの」
「いや一度だけ人間に戻れる。だが、今、戻っても殺される可能性大だ」

「なーんだ。心配して損しちゃった。人間に戻ったら、改革が進んだ国を見てもらわなきゃ」
「とにかく今は人間に戻れない。二人とも国へ帰るんだ。俺が暴走して二人を手に掛ける事もあり得る」
「脅しても駄目よ。この国も改革するんでしょ。手伝うわ」
「アニータも手伝うよ」
「仕方ないな。言って聞くような気がしない。一緒に行動しよう」

「懐かしいわね」
「ダンジョンにはよく行ったなぁ。山下りは面白かった。最近は面白い事がないので、あきあきしてた」

 問題は乗合馬車の乗客に俺がモンスターだとばれているって事だ。

「耳を」

 俺は耳打ちした。

「ヴァンパイヤとしてよみがえった仲間を今、葬らん」

 ジャスミンが杭を心臓の場所に打ち込んだ。
 俺はヴァンプニウムをアイテムボックスに入れ、骨になって横たわった。
 コアは頭に移動してある。
 ぱっと見は白骨死体だ。

 乗合馬車の乗客は穢れると思ったのか近づいてこない。
 しばらくして乗合馬車は出発した。
 俺はそれを見送ってからヴァンプニウムを纏った。

 ヘルメットがトレードマークみたいになっているから、それを辞めよう。
 そうすれば街で偶然俺を見かけても気づかないはずだ。

 さて、どんな変装にしよう。
 目出し帽は不気味だな。
 ホッケーマスクもちょっとな。
 ピエロのマスクのイマイチだな。

 ああ、そうだ。
 風邪をひいた時にするマスクにサングラスでどうだ。
 犯罪者が良く使う手口だ。
 きっと人相を上手く誤魔化す事ができるはず。
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