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第5章 アンデッドでざまぁ

第233話 おっさん、任務について行く

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「露店、ご苦労様。あの、美味しいクッキーはどうしたの。私、買えなかったのよね」
「余った奴があるから。どうぞ」

 イリスがリスみたいにクッキーを頬張る。
 もっとゆっくり食えよ。

「おいひい。初めてよ。こんなに美味しいのは」

 そうだろな。
 激戦の菓子業界で戦いを勝ち抜いて定番になっている奴だからな。

「これどこで売ってるの。教えなさいよ。買いに行きたいわ」
「あー、秘伝だ」
「あなたが作ったの」
「一応な」

 スキルでだが、俺が作った事に変わりはない。

「と言う事はもっと美味しい物もあるんじゃない」
「また今度な」

「そうそう、ジャスミンとアニータがレジスタンスに加わったわ。何でもムニの知り合いだとか」

 二人はレジスタンスに加わったのか。
 どういうつもりなんだろな。

「二人に仕事を何か振ったんだろう。教えてくれ。俺もついて行きたい」
「過保護ね。二人とも凄腕の魔導士だから、心配は要らないと思うわ」
「それでもだ」
「今回の任務は盗賊退治ね。どうやら襲われて捕まった人達が、生贄に売られているらしいの」

 詳細を教わってジャスミン達の下にスクーターで乗り付けた。
 ついでにポチも出しておく。
 密かに護衛する乗合馬車はあまり金を持ってなさそう人達が大勢乗り込んでいた。
 少し離れた所にジャスミンとアニータが馬に乗って佇んでいた。

「よう」
「ムニ、来てくれたの。やっぱり、ムニね」
「ムニが優しいのは、分かっていたよ」
「お前達が知っているムニは死んだ」
「はいはい、そう言う事にしておくわ」
「しておく」

「その乗り物は。やっぱり、ムニじゃないの」
「ムニと呼ばれる男から買ったんだ。同名のよしみでな」

 仕方ないだろ。
 馬には乗れないんだからさ。

「いつの間にか、テイマーになってる」

 アニータが目を丸くして言った。

「元からだよ」
「そういう事にしておくわ。馬車が動き始めたわ」
「おう、俺達も出発しよう」

 乗合馬車の歩みは遅い。
 そりゃ、10人以上乗っていればそうなるよな。
 人の重さもだが、馬車が長くて相当な重量だ。

 乗合馬車には護衛がいない。
 モンスターが出て来たらどうするんだよ。
 俺が心配することもないか。

 馬車が停まった。
 狼のモンスターが出てきたらしい。
 御者が鞭で撃退する。

 狼ぐらいの奴だと、鞭で撃退できるのか。
 だが、倒すには至らない。
 痛みを与えて退かせるという訳だな。

 中々に考えている。
 乗客はクロスボウを持って窓から狼を狙っていた。
 どうしても退かない場合は撃つように言われているのだろうな。

「俺達の尾行は気づかれてもいいのか」
「ええ、御者と話がついているの。私達は賞金稼ぎで、盗賊が出て来たら、私達の出番という事になっているわ」
「なるほどね」

「なんで急に居なくなったのかは聞かないわ。何か事情があるんでしょう。でも、心配かけた事は謝って。特にアニータにね」
「何の事やら、俺はクッキー売りのムニだ。誰かと間違えているんだろう」
「この国の状況はイリスから聞いたわ。酷いんだってね。巻き込みたくないって事は分かってる」
「そうか。なら早く国に帰るんだな」

 それから、ジャスミンは黙った。
 納得したふうもないので帰らないんだろうな。

 俺はブラッドソーセージを齧った。
 血の渇きが少し緩和される。

「腹減った。私にも頂戴」

 アニータがソーセージを見つめる。

「これは駄目だ」
「けち」
「どうしてって言うなら分けてやらん事もないが、やめとけ」

「くんくん、あれっソーセージの匂いがしない」

 アニータがいくら鼻が良くても離れた所のソーセージの匂いは嗅ぎ取れない。
 んっ、もしかして不味い。
 焼いたソーセージは良い匂いをさせるものだ。
 生で食っているのを気づかれたら、めんどくさい。

「魚肉ソーセージがある。美味いぞ」

 魚肉ソーセージを出してやった。

「はむはむ、薄味だけど美味しい。抜群の旨味。歯ごたえがもう少しあれば満点」
「他の人が食えるソーセージがそれしかない。夕飯にはウィンナーを出してやるよ」
「うん、約束」

 馬車が再び動き始める。
 俺達は尾行を再開した。
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