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第5章 アンデッドでざまぁ
第217話 おっさん、月夜草の採取に行く
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宿で昼を過ごし、日が落ちた頃、ギルドの扉をくぐった。
「依頼の報告をしたい」
「はい、結構です。報酬の銀貨5枚になります」
俺はお金を受け取り、息が掛からない様に少し身を引いた。
血を出がけにしこたま飲んだからな。
液体歯磨きでうがいしたが、臭わないだろうか。
「家を借りたいのだが、ギルドで斡旋してないか」
「ございます。家具付きで、期間は1週間単位となっております。どう致しましょう」
「とりあえず、1週間だ」
「保証金が金貨2枚で、家賃が銀貨20枚になります」
俺は金を払って鍵を受け取った。
「この辺りでヴァンパイヤの噂はないか」
「ありませんね」
「依頼を出したい。ヴァンパイヤの出現情報だ」
「それですと、銀貨10枚になります」
「それで頼む」
さて今日も警備の仕事に行きますか。
警備の仕事は楽なもんだった。
たまに泥棒が強襲してくるぐらいで、これといった困難はない。
この街に長居するつもりはなかったが、居心地がいいので一ヶ月も過ごしてしまった。
「依頼の報告をしたい」
「はい。指名依頼が入っております」
指名依頼だと。
ヴァンパイヤであることがばれたか、それとも皇帝の手の者か。
「どんな依頼だ」
「月夜草の採取です」
「なぜ俺なんだ」
「夜に強いからです。月夜草は満月の夜の一瞬しか咲きません。その瞬間を逃すと次の満月まで採取できないのです」
「眠ってドジを踏んだりすると大損害な訳か」
「ええ、あなたは警備の仕事で一度も失敗していない。普通、警備は二人で受けるものなのですよ」
「交代で見張る訳か。夜起きて昼間に寝れば良いだけだと思うが」
「それでも居眠りというのは起こるものです」
「分かった。指名依頼を受けよう」
特別に許可をもらい日が暮れてから門を出る。
そして、俺はギルドの男の職員と共に森に入った。
薬草の判別は出来ないからな。
昼間に月夜草の場所を確かめておいたのだろう。
職員の案内で、すんなりと月夜草は見つかった。
月夜草は蕾をつけて今にも咲きそうだった。
「暇なので話をしませんか」
職員が話し掛けてきた。
「いいぜ」
「夜に強くなる秘訣がありますか」
「俺は体質で昼間しか眠れない」
「ほう、それは大変ですね」
「慣れればかわらん」
「なぜ、冒険者の仕事を」
「都合が良かったからだ。夜の仕事なんて、なかなか有るものじゃない」
「なるほど。実は私、趣味で星の観察をしていまして、あなたさえ良ければ依頼を出したい」
「いいぜ。ただし出発は日が暮れてからだ」
「それだと間に合いません」
「馬より早い乗り物がある」
「良いですね。それなら間に合いそうです」
「しっ、静かに。モンスターに囲まれた」
「何のモンスターですか」
職員が声をひそませる。
「足音から察するにゴブリンだな。そらよ」
俺は鉄アレイを暗闇に向かって投げた。
ゴチンという音がして、続けてばたりと倒れる音がする。
黒く塗った矢が飛んで来る。
俺は矢を空中で掴んで、お返しに鉄アレイを投げた。
今回も当たったようだ。
倒れる音がした。
「俺が従えているモンスターを出す。驚かないでくれ」
「ええ」
俺はポチの鉄骨を出してから、背負いからコアを出して合体させた。
「スケルトンドッグとは驚きました」
「ポチ、運動の時間だ。ゴブリン共を食い殺せ」
ポチは吠えるような仕草をすると、暗闇に入っていった。
戦闘音が周囲から聞こえる。
「花が咲きそうだぞ」
「戦闘に気を取られてました」
月夜草が白い大輪の花を咲かせた。
職員は花をつまむと大急ぎで蜜を絞った。
ポチが口を真っ赤に染めて帰ってきた。
血の渇きが疼く。
「残党が居ないか確認してくる。ポチ、この男を護衛しろ」
暗がりに入って血を呷る。
疼きが収まった。
水でうがいしてから、液体歯磨きを口に含む。
そして、職員のもとに戻った。
「あなた中々洒落た人ですね。爽やかな良い匂いがする」
「これの匂いだろ」
液体歯磨きを見せる。
「そうです。この匂いです」
俺が蓋を取ると、職員は匂いを嗅いで言った。
「お近づきの印に一本あげるよ。女と会う時などに使ったら良い」
「ありがとうございます。お礼にこの宝玉をあげます」
差し出された宝玉は真っ赤で俺はとても気に入った。
「高いんじゃないのか」
「それがガラス玉なんですよ」
「そうかなら、ありがたく貰っておこう」
俺は白い糸を出して宝玉を巻き始めた。
半分ほど赤い色が見えなくなったところでストラップに付けてベルトに固定した。
さあ、夜が明ける前に帰ろう。
「依頼の報告をしたい」
「はい、結構です。報酬の銀貨5枚になります」
俺はお金を受け取り、息が掛からない様に少し身を引いた。
血を出がけにしこたま飲んだからな。
液体歯磨きでうがいしたが、臭わないだろうか。
「家を借りたいのだが、ギルドで斡旋してないか」
「ございます。家具付きで、期間は1週間単位となっております。どう致しましょう」
「とりあえず、1週間だ」
「保証金が金貨2枚で、家賃が銀貨20枚になります」
俺は金を払って鍵を受け取った。
「この辺りでヴァンパイヤの噂はないか」
「ありませんね」
「依頼を出したい。ヴァンパイヤの出現情報だ」
「それですと、銀貨10枚になります」
「それで頼む」
さて今日も警備の仕事に行きますか。
警備の仕事は楽なもんだった。
たまに泥棒が強襲してくるぐらいで、これといった困難はない。
この街に長居するつもりはなかったが、居心地がいいので一ヶ月も過ごしてしまった。
「依頼の報告をしたい」
「はい。指名依頼が入っております」
指名依頼だと。
ヴァンパイヤであることがばれたか、それとも皇帝の手の者か。
「どんな依頼だ」
「月夜草の採取です」
「なぜ俺なんだ」
「夜に強いからです。月夜草は満月の夜の一瞬しか咲きません。その瞬間を逃すと次の満月まで採取できないのです」
「眠ってドジを踏んだりすると大損害な訳か」
「ええ、あなたは警備の仕事で一度も失敗していない。普通、警備は二人で受けるものなのですよ」
「交代で見張る訳か。夜起きて昼間に寝れば良いだけだと思うが」
「それでも居眠りというのは起こるものです」
「分かった。指名依頼を受けよう」
特別に許可をもらい日が暮れてから門を出る。
そして、俺はギルドの男の職員と共に森に入った。
薬草の判別は出来ないからな。
昼間に月夜草の場所を確かめておいたのだろう。
職員の案内で、すんなりと月夜草は見つかった。
月夜草は蕾をつけて今にも咲きそうだった。
「暇なので話をしませんか」
職員が話し掛けてきた。
「いいぜ」
「夜に強くなる秘訣がありますか」
「俺は体質で昼間しか眠れない」
「ほう、それは大変ですね」
「慣れればかわらん」
「なぜ、冒険者の仕事を」
「都合が良かったからだ。夜の仕事なんて、なかなか有るものじゃない」
「なるほど。実は私、趣味で星の観察をしていまして、あなたさえ良ければ依頼を出したい」
「いいぜ。ただし出発は日が暮れてからだ」
「それだと間に合いません」
「馬より早い乗り物がある」
「良いですね。それなら間に合いそうです」
「しっ、静かに。モンスターに囲まれた」
「何のモンスターですか」
職員が声をひそませる。
「足音から察するにゴブリンだな。そらよ」
俺は鉄アレイを暗闇に向かって投げた。
ゴチンという音がして、続けてばたりと倒れる音がする。
黒く塗った矢が飛んで来る。
俺は矢を空中で掴んで、お返しに鉄アレイを投げた。
今回も当たったようだ。
倒れる音がした。
「俺が従えているモンスターを出す。驚かないでくれ」
「ええ」
俺はポチの鉄骨を出してから、背負いからコアを出して合体させた。
「スケルトンドッグとは驚きました」
「ポチ、運動の時間だ。ゴブリン共を食い殺せ」
ポチは吠えるような仕草をすると、暗闇に入っていった。
戦闘音が周囲から聞こえる。
「花が咲きそうだぞ」
「戦闘に気を取られてました」
月夜草が白い大輪の花を咲かせた。
職員は花をつまむと大急ぎで蜜を絞った。
ポチが口を真っ赤に染めて帰ってきた。
血の渇きが疼く。
「残党が居ないか確認してくる。ポチ、この男を護衛しろ」
暗がりに入って血を呷る。
疼きが収まった。
水でうがいしてから、液体歯磨きを口に含む。
そして、職員のもとに戻った。
「あなた中々洒落た人ですね。爽やかな良い匂いがする」
「これの匂いだろ」
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「そうです。この匂いです」
俺が蓋を取ると、職員は匂いを嗅いで言った。
「お近づきの印に一本あげるよ。女と会う時などに使ったら良い」
「ありがとうございます。お礼にこの宝玉をあげます」
差し出された宝玉は真っ赤で俺はとても気に入った。
「高いんじゃないのか」
「それがガラス玉なんですよ」
「そうかなら、ありがたく貰っておこう」
俺は白い糸を出して宝玉を巻き始めた。
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さあ、夜が明ける前に帰ろう。
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