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第5章 アンデッドでざまぁ

第211話 おっさん、野良と間違えられる

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 俺はいま乗り合い馬車を追いかけて爆走中だ。
 別にダイエットする為に走っている訳では無い。
 なんでかというと屋根に乗ってたんだが、俺の重さで馬車の屋根がきしんだ。
 その音を聞いて乗客が不安になったらしい。
 金属の骨は重いからな。

 スクーターを買って追いかけても良いんだが、走りたい気分だったので走っている。
 疲れをしらない体だしな。

「馬車がアイアンスケルトン2体に追いかけられているぞ!」

 巡回の兵士達が馬車を見て叫んだ。

「早く逃げるんだ!」
「そうだこっちへ来い! スケルトンは任せてくれ!」

 不味い。
 このまま行くと討伐対象になってしまう。

 馬車に飛び乗ると、襲っているように見えるかも。
 ここで俺の最善の行動は。

 追いかけるのを辞めると、馬車の行方が分からなくなってしまうし、兵士も諦めないだろう。
 誤解を解くのが一番なので、ジェマが叫ぶのに必要な物。
 拡声器を魔力通販で買って馬車に投げ入れた。

「このスケルトンは私が従えてます!!」

 ジェマの一言に兵士が安心したような表情を浮かべる。
 アイアンスケルトンは強敵だからな。
 一介の兵士には、討伐は出来ない。
 普通なら兵士に死人が出る案件だ。

 俺はこれからも誤解はあるんだろうなと思いながら、兵士の脇を通り過ぎだ。
 魔導士が出てくると話はもっと厄介かも知れない。
 プライドが高い奴だと間違いを認めたくないから、問答無用になる可能性もある。

 仕方ない。
 魔力通販でアルリー産の皮鎧を買おう。
 それに服もだ。
 だぼだぼなんで服を着るのが少し嫌だったりする。
 スケルトンに合う服はない。

 走るのに興が削がれたのでスクーターを買って走らせる。
 ポチを後ろに乗せてだ。

 ヘルメットのバイザーをスモークにしたから顔が見えないので、スケルトンだとは思われないはず。
 途中休憩の時間になった。

「その走る魔道具、凄いのね。私も欲しいわ」

 ジェマが寄って来てそう言った。

『ご希望なら出すけど』
「嬉しいわ」
『それとこれは純粋な道具だ。魔力は使ってない』
「そうなの。それはどうでも良い事だわ」

 ジェマは休憩中スクーターの乗り方の練習をした。
 ものの数分で乗れるようになった。
 案外、運動神経が良いな。

「次の街に行ったら乗合馬車は辞めにするわ。スクーターって楽しいから」
『好きにするさ』

「あんた方、この先に行くのはやめなされ」
「おばあさん、どういう事」
「わたしゃ見たんだ。巨大なコウモリが月に照らされてこの先に行くのを」
『コウモリのモンスターぐらいわけないさ』

「悪い事は言わん。あれは伝説のヴァンパイヤじゃろう」
「おばあさんはこの先に行くのね」
「娘夫婦が待っているんじゃ。この事を警告せねばならん」
「分かったわ。気をつけて進むから、安心して」

「娘さんは優しいのう。他の乗客はこの話をするとぼけただの、ただの見間違いだの言いよる」

 おばあさんは馬車の中に戻って行った。

「今の話どう思う」
『ヴァンパイヤって言うとアンデッドだよな。どういうモンスターなんだ』
「噛んだ人間をヴァンパイヤにしてしまうのと、日光と銀に弱くて、心臓を貫くと殺せるわ」
『俺の聞いてたのと同じだな。さっきの話に出たコウモリへの変身能力はあるのか』
「聞かないわね。でも上位種かも」

 ヴァンパイヤに会ったら能力をコピーできないかな。
 金属支配で動いているとも限らないがな。
 念のため銀の指輪を魔力通販で買っておこう。

 いつしか、空は曇って遠くでは雷が鳴っている。
 これは一雨くるかもな。
 ジェマは雨を嫌がって馬車に引き上げた。
 馬車はゆっくりと進み始め、俺はスクーターにまたがってアクセルを吹かす。
 ぽつり雨がヘルメットを濡らす。
 やっぱり一雨くるか。
 雷の音がさっきより近い。
 何となくこの先を暗示しているようで気分が悪い。

 雨が土砂降りになって、俺はびしょびしょになった。
 張り付く服が気持ち悪くはない。
 アンデッドだからな。

 雨も今の俺にとっては無いも同然だ。
 先行きを暗示しているのなら、平気って事なのかも。
 雨の中を走るのが嫌でなくなった。
 未来は俺にとっては障害ではない。
 そう思えた。
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