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第4章 チタン属性でざまぁ編

第198話 おっさん、選挙運動する

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 水晶魔導士の反旗が翻るどころか、うやむやになりそうになっている。
 許せんという水晶魔導士はいるものの、選挙で勝って発言力を増してから、運動した方が良いと考える人間が多い。
 やられたという感想しか出て来ない。

「選挙では一票をお願いします」

 街頭では候補者による民衆への呼びかけが始まっていた。

「お前達は選挙に出るのか?」

 リオンとモーガスを前に俺は尋ねた。

「はい、出ます」
「俺も出ます」
「そうか、頑張れよ。二人のどちらかにしか票は入れる事はできないが応援している」

 選挙の管理は4大魔導士会が合同で仕切る事になった。
 選挙は1級市民と2級市民に選挙権が与えられる事になっている。
 俺はやる事がない。
 酒場で情報を集めるか。

「大物商人も何人か候補に立ったらしい。それよりもダイヤモンド魔導士の大半が候補に立ったようだ」

 俺がだいぶ数を減らしたからな。
 過半数を取るには大半が立候補しないといけない訳か。

「宝石魔導士会の会長は良いな。応援したくなる」
「駄目だ。色気が足りない。副会長の方が良い」

 レベッカとジャスミンの話をしている。
 二人とも候補者になったのだな。
 綺麗な女だと票が集まるのはどこも同じか。

「みなさん、お仕事お疲れ様です。今日の酒はダイヤモンド魔導士会のフレッド様のおごりです。今後ともよろしく」

 酒場に男が入って来てマスターに金が入っているであろう袋を渡し言った。
 おいおい、買収は卑怯だろう。
 日本なら選挙違反で捕まるところだ。

 宝石魔導士会は選挙の準備で忙しいようだった。
 人が慌ただしく出入りしている。

「レベッカ、ダイヤモンド魔導士会の奴ら買収しているぞ」
「それは報告が入っている。抗議したけど、お前らもやれと突っぱねられた」
「民衆はどう思っているんだ」
「気にしてないみたいだ。発言力や政治力は金の力だと思っているから」
「おお、ここは俺の故郷とは違うのを忘れていた。初めての選挙じゃ、やむを得ないか」

 俺の利点を活かすべきだな。
 現代製品で候補者の名前入りのグッズを作ろう。
 安い物が良いな。
 ボールペンはどうだろうか。
 一般の民衆は字を書かない人間も多い。
 駄目だな。

 男女共に使えるのはライターだな。
 マグカップも候補に入れよう。
 スポンジたわしは100円で数が入っているからお得だな。
 でも候補者の名前を書くのには適さない。

 ところで、誰が候補者の名前をグッズに書き込むんだろう。
 俺は嫌だぜ。

「レベッカ、グッズの候補を持って来た」

 用意したのはライター、マグカップ、皿、ガラス容器、プラスチック容器、ピーラーだ。

「良いな。とても良い。どれも便利そうだ」
「気に入ってくれて嬉しいよ。サインペンも出すから候補者の名前はそちらで書き込んでくれ」

 これで上手くいったと思ったが、数日後。

「全てダイヤモンド魔導士会に真似された」
「なぬ。ライターもか」
「ああ、魔道具で再現された」

 くそう、何かないか。
 文房具の類はだめだな。
 簡単に真似されないのは電卓みたいな製品だが。
 一般の民衆は電卓の良さは分からないだろうな。

 宝石を配るか。
 ジルコニアなら安く手に入る。
 だが、あんな小さいのに名前を書いてもな。
 でかいのは値段が高い。
 うーん、何なら真似されないだろうか。

 水晶は駄目だな。
 この世界でも産出する。
 相手は都市の予算がある。
 当然、真似してくるだろう。

 良い考えが出ないまま開票日を迎えた。

「どうだ。選挙結果は」
「私達は当選したわ」
「やったのだ」

 ジャスミンとレベッカは当選したようだ。

「俺達は駄目でした」

 リオンとモーガスは残念な結果に終わった。

「ダイヤモンド魔導士会の過半数はどうだ」
「残念ながら、取られてしまったわ。子飼いの商人の数を入れれば更に増えるかも」

 結果はダイヤモンド魔導士会の一人勝ちだった。

「それとですね。後で話があります」

 リオンが秘密結社の会合を示すサインを送ってきた。

「何だ。今ここで話せ」
「良いのですか」
「このメンバーは信用できる」

「選挙期間中に秘密結社が色々と動いたのですが、それを選挙妨害として訴えられてしまって」
「それはやり難くなるな」
「ええ、テロ組織認定されました。表向きでは金属魔導士会、万物魔導士会、宝石魔導士会も秘密結社を取り締まらないといけません」
「目こぼしすると、その3つの魔導士が逮捕されてしまうという訳だな」
「ええ」

 これからは動くのが難しくなりそうだ。
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