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第4章 チタン属性でざまぁ編

第161話 おっさん、知識を伝える2

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「触媒を譲って下さい。あなたがあの軽い硬貨をくれたって、ジャスミンから聞きました」

 突然、男の魔導士が訪ねて来て、そう言われた。
 アルミは安いから出してやる事は問題ない。
 だが、俺に利点がないとな。

「なら、宝石魔導士会に入る事だ」
「分かりました。入りましょう。仲間を連れてきて良いですか」
「おう、大歓迎だ」

 アルミ属性の魔導士は触媒に苦労しているもんな。
 ルビーとサファイヤは高いからな。
 魔力通販で買うのは避けたい。
 アルミ板ならいくらでも供給しよう。

 今日はこれから知識伝授の2回目だ。

「ジャスミン、そろそろ宝石魔導士会の活動を始めよう」
「何をするの? ダイヤモンド魔導士に喧嘩を売れってのはなしよ」
「討伐を積極的に行って、存在感を出す」
「アルミを供給さえしてくれれば、それは良いけど。金属魔導士らには負けるわよ」

 鉄とか銅とか鉛とかとにかく一般に流通している金属は安いからな。
 属性魔導を撃ち放題だ。

 物量に負けるのは仕方ない。
 ここで切り札を一つ切るか。
 合成ルビーと合成サファイヤだ。
 価格も8ミリのが一個700円だ。

 こんなのバンバン消費されたら、たまらないが。
 天然物に比べたらどうって事ない価格だ。
 これを使えば金属魔導士に火力で勝てる。

「小粒だが、ルビーとサファイヤを出してやる。大切に使えよ」
「やった。ほんと小粒ね。でもファイヤーボールを一回くらい撃てるわ」
「それはどれぐらいの大きさだ」
「ええと人の身長ぐらいね」

「そうか、かなりの威力だな。オークに一撃で勝てるか」
「もちろんよ」

「よし、アニータも来い。知識伝授の2回目やるぞ。今日はヘリウムだ」
「これって聞かなきゃ駄目。前の時は眠くなったの」
「眠くなったら寝てていいよ。ジャスミンが代わりに聞いていてくれる」
「私? そうね、アニータが大きくなったら私が伝えるわ」

「ヘリウムは軽い気体で燃えにくい。それでもって、人体に害がない。酸素さえ十分にあれば吸っても問題がないはず」
「アニータ、知ってるよ。風船の中に入っていた奴だよね」
「そうだ。あれだ」

「それと声が変になる奴」
「そうなんだ。音の伝わり方が変わるんだ」
「また、難しい真理が出て来たわね。音って一定じゃないの」
「違うんだ。音は空気振動の波で、物によって伝わり方が違う」
「そうなの。音が空気の振動なんて初めて聞いたわ」

「ぐう」

 アニータが寝てしまったようだ。

「雷は遠くで光ってから音がなるだろ。光は物凄く速いから、音が遅れて聞こえる。空気中を振動が伝わって聞こえるんだ」
「なるほどね。確かに振動はすぐに伝わらないわ」

「話がそれたな。ヘリウムは安全だから広めても良い。ただ含まれているのが天然ガスなんだよな」
「天然ガスって腐った沼から湧き出す奴かな」
「あれはメタンガスだろう。天然ガスは地下の空間に閉じ込められているんだ。大抵はよく燃える。ええと百科事典によると燃えないのは火山ガスとか色々あるらしい」
「燃えるのなら危険ね」
「燃えないガスも毒の奴とかあるから、そっちも危険だ」
「採取するのは命がけね」
「そうだな。だから、ヘリウムは今の所、俺にしか調達できない」
「空気中には含まれてないのかしら」
「微量なら含まれているだろうが、軽いからはるか上空だろう。今、風船を出してやる」

「何これ。何もしないのにぷかぷかと浮かんでいるわ」
「ヘリウムが空気より軽いのが分かっただろう」
「もしかして空気にも重さがあるって言わないわよね」
「もちろんあるぞ。これを利用した道具はいくつもある。代表的なのはポンプだな。それぐらいしか俺は知らん」

 手動のポンプを出してやった。
 樽から樽へ水を移すのを不思議そうにジャスミンは眺めた。

「これって大発明じゃない」
「そうだなこれを発明した人は億万長者になった」
「この柔らかい素材が再現できれば、私にも作れるのに」
「井戸から汲み上げるポンプなら金属で作れるぞ」
「作り方を教えて」

「確か百科事典に図が載っていたはずだ」
「この本貸して」

「一冊持ってけよ。文字は俺にしか分からないから、気になった絵とかあったら聞くといい」
「そうさせてもらうわ。なんか今日は色々と凄い真理を教わった気がする」
「俺の知識なんて所詮にわかだ。大したもんじゃない。アニータ、終わったぞ。もう起きろ」

 途中で脱線したが、二回目の知識伝授は終わった。
 産業革命が起きれば属性魔導はすたれるのかもな。
 そこまで待つほど気は長くないが。
 知識を伝授してやるぐらい良いだろう。
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