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第3章 分解スキルでざまぁ編

第138話 おっさん、不正の証拠をつかむ

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「しばらくお待ち頂けますか。代官様の手が空き次第お見えになられます」
「待ちますよ。いくらでも」

 俺は代官屋敷の小部屋に通されて家令と思しき人間に言われてそう答えた。
 お茶を淹れてもらい、しばし待つと家令が再び現れた。

「代官様がお会いになるそうです」

 俺は家令の後について応接間に入った。

「わしの貴重な時間を割いてやるのだから、それに見合う物を持って来たのだろうな。もし詰まらない物を見せて見ろ。首をはねてくれる」
「では早速」

 俺は1センチのジルコニアを取り出した。
 そのお値段なんと190円。
 人工宝石だからな。
 前にも異世界アルリーでお世話になった。
 ぱっと見た目はダイヤに見える。

「ほう、これは美しい。そうだな銀貨1枚で買ってやろう」

 銀貨1枚でお釣りが出る値段だけどな。
 相場どころじゃない安い値段だ。

「そんな無体な」
「わしの所に門で宝石の税を取ったという報告は入っとらん。密輸であろう。罪は見逃す」
「お近づきの印も込めて銀貨1枚で結構です。」
「そなた話の分かる奴だな。気に入ったぞ」
「実は占いに凝ってまして。最近金運が上がるという置物を手に入れました。ここへ置かせてもらってもよろしいですか」
「ほう、ただでくれるというのだな。よかろう置いて帰るが良い」

 俺はカメラを仕込んだ置物を部屋に置いて立ち去った。
 業突く張りで良かった。
 占いなど嫌いだと言われたら別の手を考えないといけなかった。

 次の日。
 俺はまたジルコニアを持って代官屋敷を訪ねた。

「なんだ、またそなたか」
「手の者が新たに宝石を手に入れまして、今度は正規の価格で買って頂きます。宿代も馬鹿になりませんので」
「ふん、いくらだ」
「金貨10枚にございます」

 パティに聞いた所。
 1センチのダイヤは金貨100枚はくだらないと。
 ダイヤを加工する技術が失われているからだ。
 発掘品でしかダイヤはお目にかかれない。

「仕方ない払ってやる。また宝石が手に入ったら知らせるがよい」
「はい。おや、金運アップの置物に汚れが」

 俺は置物を布で拭くふりをしてカメラの入っていない物と取り換えた。

「用が済んだら、さっさと立ち去れ」

 ふふふ、上手くいった。
 後はカメラに不正の証拠が映っている事を願うばかりだ。
 駄目なら、また宝石を持っていかないと。

 パティと一緒にカメラの映像をチェックする。
 そこには賄賂を受け取る代官の姿が映っていた。
 さて、これをどこに持ち込めばいいんだ。
 偉い人に伝手なんかないぞ。

「なあ、これからどうする」
「任せて。ヘィスティという人に手紙を書くわ。私の想像通りなら上手くいくはず」
「そのヘィスティさんがお偉いさんなのか」
「ええ、少なくても代官よりは」

「そうか。任せた。時間が掛かるのか」
「そうね。一週間って所かしら」
「よし、宿代が勿体ないので外で野営しよう」

 街の外に出る事にした。
 手荷物がない俺達を訝し気に門番が見る。

「俺は代官様と知り合いだ。早く通せ」
「はっ、かしこまりました」

 おや、税金が免除されたぞ。
 いい加減だな。
 そう思ったら、代官邸の門番がここに居た。
 俺の事を覚えていたらしい。
 手で合図を送ったのだろう。

 さて、一週間の間をどうやって過ごそう。
 そうだ。
 街に入れない人達に格安で食料を売ってやろう。
 俺はゴザを広げ、塩と小麦粉を壺に入れて並べた。

「容器を持ってきた人には壺一つの小麦粉と塩が銅貨2枚だよ」
「本当かい」
「ええ、街に持ち込もうにも高い税を払わなくちゃならない。ここで処分する事に決めたんだ」
「なるほどね」

「俺にもくれ」
「私にも」

 たちまち俺の店は大盛況になった。
 魔力が足りない。

「魔力を魔石に入れてくれた人は半額にしてやろう」
「ええ、早く言ってよ」
「魔力を貰えれば半金は返す」
「やった」

 パティが不思議そうな顔をして俺を見る。

「ああ、スキルで小麦粉と塩を出すのに魔力がいる」
「万能なスキルなのね」
「おかげで楽が出来る」

 これで野垂れ死にする人が減れば良いなと思った。
 パティの伝手が来る前の暇つぶしにもなるし、善行にもなる。
 そう言えば親方の善意にはずいぶんと助けられた。
 もう、恩返しはできないが。
 その代わりになったら良いなと思った。
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