レベルを上げて通販で殴る～囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ～

第３章 分解スキルでざまぁ編

第１３７話 おっさん、治安の悪い街に着く

　学園都市フォルドゥに行く途中で大きな街ラドリーに立ち寄った。
　今夜はここで宿を取ろう。

「足税は銀貨１枚と銅貨５枚だ」
「なんだまた上がったのか」

　列に並んで街に入ろうとしている人達から不満の声が上がる。

「嫌なら街に入らず迂回するんだな」

　不満の声が再び上がるも、門番は動揺した様子はない。
　こんな風景は日常茶飯事なのだろう。

「えっと、あんた達、荷物は」

　俺達の番が来た。

「持ってないが」

　荷物はみんなアイテムボックスの中だ。

「ちっ、貧乏人が。メイスを持っているから武器税の銅貨２０枚だ」
「おう、そんな物にも税をかけるのか」
「文句があるのか」
「いや」

　文句はあるが言っても仕方ない。
　大人しく金を払って街に入った。

　宿を取るには少し間があったので発掘品のガラクタを見て回る。
　そばに何か近寄って来たなと思ったら、子供に小銭入れをすられた。

「待て」

　俺は声を掛けるが、当然の事ながら返答はない。
　子供は曲がりくねった路地を一目散に逃げていく。

「ほっときなさいよ。小銭でしょ」

　パティが俺の後から追いかけて来て言った。
　その時、家の壁に立てかけられた丸太が俺目掛けて倒れてきた。
　おっ、殺しも厭わないって言うんだな。
　何となく俺はむきになった。

　丸太は俺を叩いたが魔力壁のおかげでなんともない。

「やったか」

　丸太の陰にいた子供がそう言った。
　パティが子供を捕らえた。

「パティ、でかした」
「捕らえてどうするの。突き出すつもり」
「どうするか、考えていなかった」
「呆れた。考えないで追いかけていたの」

「おい、子供。お前に仲間の居場所を聞いても答えないのだろうな」
「仲間は売らないぜ」
「そうか。ところでこの街の税金は何かおかしい。理由を知っているか」
「糞代官と糞貴族のせいだ」
「聞き捨てならないわ」

　なぜかパティが反応した。

「まあ、話を聞こう」

　俺はパティをなだめた。

「税金が無茶苦茶なんだ。街から出るにもお金を取るんだぜ。もちろん何か持ち出せば、もっと取られる」
「それじゃ、逃げたくても逃げられないよな」
「そうなんだ。ほとんど無一文で逃げても野垂れ死にさ」

「暮らしている事で掛かる税金は」
「街で扱っている商品もみんな税金が掛かっているよ。パン１個にも銅貨１枚だ。井戸の水にまで税が掛かってる」
「それじゃ、暮らしていけないよな」
「税が払えなくて、路上暮らしをしている奴は沢山いるよ」
「許せない」
「パティ、なんかおかしいぞ」
「だって、許せないじゃない」
「そうだな。許せるかと言ったら許せない」

「おいらをどうするの」
「おう、飴をやるから、どこへでも行け」

「食べ物をくれるのか。毒じゃないよな」
「疑い深い奴だな。ほら、俺も同じのを舐めた。毒じゃないだろ」
「甘ーい」

　子供は飴を舐め始めると去って行った。

「よし、宿を取ろう」
「そうね」

　宿屋街に行くと辺りは閑散としていた。
　大丈夫かこれ。
　やはり最下級の宿に入る。

「お泊りで」
「ああ、２部屋を頼む」
「しめて金貨２枚です。前払いでお願いします」

　うお、高いな。
　例の税金のせいだろう。

「パティの分も俺が出しておくよ。ところで代官ってのはどんな人物だ」
「私共の口からは申せません」
「ああ、評判を言う必要はない。それは知ってるからな。何を持って行けば売れる」
「そうですな。宝石の類には目がないかと」
「なるほどな。参考になった」

　俺の部屋でパティと作戦会議だ。

「とんだ街に来ちまったな」
「街をこんなにしてる代官を懲らしめたいわ」
「妙にやる気だな」
「許せないから」

「隠している事を吐いちまえよ」
「言えないわ」

「まあ、立ち寄ったのも何かの縁だ。出来る範囲でやってみるさ」
「どうするの」
「決まっているさ。商売に行く」
「あなた宝石なんて持ってないでしょ」
「ここだけの話。偽物の宝石をスキルで作れる」
「それが本当なら、あなたを閉じ込めたいと思う人は沢山いるわね」
「だから秘密だ」

　パティはこの街となんか関係があるのか。
　分からんが、代官を懲らしめれば事情が分かるような気がする。
　さて宝石商になって、いっちょ一芝居しますか。