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第3章 分解スキルでざまぁ編

第128話 おっさん、無言の行を破る

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 トコトコと馬車が歩く男達の後を追う。
 街道はそれなりに交通量もあり、何台かの馬車ともすれ違った。
 どこでこいつらは盗賊に戻るのだろうか。
 人目のある所は避けるだろうから、夜かな。
 夜まで待つなんて時間の無駄だ。
 でも街道を逸れる言い訳は難しい。

 お花摘みは護衛である俺がついて行くのはおかしい。
 と思ったらちょうどいい獣道がある。
 大型のモンスターの獣道の幅は馬車がかろうじて通れるぐらいにはある。

 俺は御者台にいるパティに作戦をこっそり伝えた。

「みなさーん。近道をします。舗装していない道に入って下さい」
「おう、野郎ども、分かれ道だ」
「へい」

 上手くいった。
 盗賊どもが正体を現さなくても、賞金首が何人かいるから、あいつらに襲い掛かる事は問題ない。
 だが、盗賊達も手ぐすねを引いて待っていたようだ。
 突然、歩みを止めて馬車の前に立ちふさがった。

「一体なんのつもり」

 御者台のパティが芝居をする。

「有り金ぜんぶもらおう」

 もういいだろう。
 俺は荷台から飛び降りて奴らと対峙した。

「姐さん頼みます」
拘束バインド

 塩がジェリから飛んできて俺に絡みつく。
 もう喋ってもいいよな。

「ふん、こんなの無いも同然だ」

 俺は力を込めて、塩の束縛を解いた。

「うそっ、私の魔法が破られるなんて。射撃ショット。これでどう。ばかな、ダメージがないなんて」

 塩の結晶が飛んでくるが魔力壁があるのでダメージにはならない。

「お前らには寝てもらう」

 俺はトイレのすっぽんを出して、盗賊達を殴って回った。

「不味いわ。今捕まる訳には。ミスト

 乱戦の中でジェリが魔法を唱えると、塩が霧になって辺りを覆いつくした。
 霧が晴れるとジェリの姿はどこにもなかった。

「ちくしょう、やられた。油断した。それともあれか。無言の行を破ると願いが叶わないなんて言っちまったからか」

 あれは方便だったんだが。
 済んだ事は仕方ない。

 荷台の荷物をアイテムボックスに入れ、盗賊達を縛って積む。
 来た道を引き返し、街の門番に盗賊達を突き出した。

 さて、困ったぞ。
 ジェリは用心して出てこないだろう。
 もう今頃は他の街に行ったかも知れない。
 仕方ない。
 幼馴染だというマルコにジェリの情報を喋ってもらおう。

「マルコ、お前の幼馴染は大変な事をしでかしたぞ」
「えっ、ジェリが何か」
「仲間と組んで盗賊をやった」
「そんな、嘘だろう。あのジェリが」
「仲間は全て捕まったから、ジェリは指名手配されるはずだ。それは良いとして、あんたには紹介した責任を取ってもらう」
「何をすれば」
「ジェリの情報を全て吐け」
「分かった。知ってる事は話すよ」

「まず立ち寄りそうな場所だ」
「彼女の実家の商店は潰れてしまったから、今いる場所は俺には分からない」

「何の商売をしてたんだ」
「塩の小商いさ」

 ふーん、この線を手繰るのは無理そうだな。

「なんか、連絡を取る手段はないのか」
「うーん、あっ」
「なんだ、言えよ」
「子供の頃、街の外の道しるべに伝言を置いた事がある。彼女は塩の行商について行って、頻繁に街の外に出ていたから」
「まあ、駄目元だ。やってみるか。どこか、街の外でジェリと会える所がないか。人が知らない所だとさらに良い」
「子供の頃、遊んだ秘密基地がある。使ってない漁師小屋なんだが、今もあるはずだ」
「よし、そこだな」

 文面は『新規に立ち上げる店について話がある。ついては話し合いをしたい。子供の頃遊んだ秘密基地で正午に会おう』こんな感じでどうだ。

 マルコに聞いた道しるべに伝言の紙を置いて、石を三つ載せる。
 一日経って駄目だったら、諦めよう。

 一応、漁師小屋に下見に行く。
 中の床は腐っているが、壁と屋根はかろうじて無事だ。
 網の残骸が隅にひとまとめにしてある。
 良い事を思いついた。
 俺は漁師に会いに行き、使われなくなったボロボロの網を買い集めた。

 当日はこれを被って待ち構えよう。
 忍法破れ網隠れだ。

 次の日伝言を確認したら、紙はなくなっていた。
 ジェリが読んだのかは分からないが。
 急いで漁師小屋に行って、待ち構えないと。
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