上 下
125 / 248
第3章 分解スキルでざまぁ編

第125話 おっさん、調味料を売る

しおりを挟む
 うーん、武器屋から情報が入ってくる事は期待薄だ。
 ジェリが立ち寄りそうな場所。
 塩関係だな。
 俺が塩問屋に行ったら門前払いだろう。
 なんと言ったら話を聞いてもらえるか。
 塩を売りますは駄目だな。
 ここは塩の産地だ。
 品質には自信があるが。
 2万円弱の魔力では出せる量も高が知れている。

 ダンジョンコアの魔力でなぜ塩を買わなかったかと言うと、大量の塩を持ち込むと塩を作っている職人が大打撃だ。
 かと言って少ない量では影響力がないだろう。
 決めた。
 化学調味料だ。
 ただの塩が超高級な塩になる魔法の粉と言って売り込もう。
 高級路線なら、量が少なくても問題ない。

 20キロの化学調味料で1万円弱。
 いいんじゃないのこれ。

 俺は塩問屋を尋ねた。

「塩に混ぜると劇的に美味くなる魔法の粉があるんだが、商談をしたい」
「ほう、胡散臭いな。原料はなんだ言ってみろ」
「海藻を精製したものだ。食えないものじゃない。麻薬とも違う」

 実際は海藻の成分を化学的に作り出した物だけど。

「なるほど、海藻をね」
「どうですか」
「お前さん馬鹿か。塩に海藻の粉を混ぜる事ぐらい簡単に出来る。わしなら買わんで自分で作る」
「なるほど、参考になりました。秘密を教えた報酬として買ってくれませんか」
「いいだろう。見本として買ってやる。後で海藻の粉を混ぜた奴と比較するが悪く思うなよ」
「ええ、うちは小商いなんで、少し買って頂ければ問題ないです」
「変わった奴だな。悔しがる素振りが少しもない」

「相談なんですがね。この女が塩を大量に買っていきませんでしたか」

 俺は人相書きを見せた。

「見ない顔だな。ははーん、お前さんこれが目的だったんじゃないかね」
「そこのところはご想像にお任せを」
「この女は見ないな。さあ、魔法の粉という奴を出してみろ」

 俺は化学調味料を取り出した。

「おい、料理長を呼べ」

 店員が小僧にそう言った。
 しばらくして、エプロンを着けた料理人と思われる人が現れた。

 化学調味料と塩が混ぜられる。

「食ってみろ」
「はい。これはどこの産の塩ですか。コクと言うかなんと言うか美味い」
「宣伝文句に偽りはないようだ。よし、人探しに協力してやろう。うちと取引のある料理店を紹介してやる。人相書きを持っていくといい」

 紹介状と店のリストを貰った。
 一軒目はここだ。

「邪魔するよ」

 料理人が奥から顔を覗かせた。

「はい、なんですか」
「塩問屋に紹介してもらったんだ。実は人を探していてね」

 料理人は紹介状を読むとため息をついた。

「協力してやりたいのは山々だが、商売が忙しくてね。客の顔なんて確認しちゃいられない」
「そうですか。この街にいる間だけですが、魔法の調味料を提供しますよ」
「ほんとか、香辛料なんて言うんじゃないだろうな。ここは港街だから、香辛料は食い飽きた」
「いいえ、とんかつソースと醤油です。特に醤油はお勧めです。焼いた肉の表面に塗ると、店に行列が出来ること請け合いだ」
「ほう。試して見ていいか」
「どうぞどうぞ」

 厨房にお邪魔する。
 肉を串に刺して焼き始めた。
 焼きあがった所で醤油が塗られた。
 醤油の焼ける香ばしい匂いが厨房いっぱいに広がる。

「こいつはたまらん」
「でしょでしょ」
「人探しに協力してやるよ」
「頼みますよ」
「任せときな」

 こんな感じでどの店も快く協力してくれた。
 最後の一軒は料理店じゃなかった。

「あー、睨まないでもらえます」
「おめぇ、ただでわしらを使おうなんて考えていないよな」

 そう言ったのは露店の元締めだ。

「魔法の調味料を提供します」
「ばか言っちゃいけない。うちで回るのは最後だろう。今までその魔法の調味料をさんざん使っただろう」
「しょうがないな。どこにも出してない取って置きを出すよ。その名もマヨネーズ」
「ほう、この黄色いのがね」

「パンに塗って少し炙ってもいいし、焼いた魚に塗ってもいい。蒸かした芋と一緒に食うのもお勧めだ」
「なるほどな。どれぐらいの量を用意できる?」
「一日もらえればかなりの数を」
「分かった。人探しに協力してやる。もっとも今貰った見本で食ってみてからだな」
「大丈夫、味には自信がある。また明日来るよ」

 マヨネーズの魅力に抗えるものなら抗ってみやがれ。
 明日、納品に来た時に白旗を上げる様子が想像できる。

 さあ、ダンジョンに行って、調味料を仕入れるぞ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

超時空スキルを貰って、幼馴染の女の子と一緒に冒険者します。

烏帽子 博
ファンタジー
クリスは、孤児院で同い年のララと、院長のシスター メリジェーンと祝福の儀に臨んだ。 その瞬間クリスは、真っ白な空間に召喚されていた。 「クリス、あなたに超時空スキルを授けます。 あなたの思うように過ごしていいのよ」 真っ白なベールを纏って後光に包まれたその人は、それだけ言って消えていった。 その日クリスに司祭から告げられたスキルは「マジックポーチ」だった。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!(改訂版)

IXA
ファンタジー
凡そ三十年前、この世界は一変した。 世界各地に次々と現れた天を突く蒼の塔、それとほぼ同時期に発見されたのが、『ダンジョン』と呼ばれる奇妙な空間だ。 不気味で異質、しかしながらダンジョン内で手に入る資源は欲望を刺激し、ダンジョン内で戦い続ける『探索者』と呼ばれる職業すら生まれた。そしていつしか人類は拒否感を拭いきれずも、ダンジョンに依存する生活へ移行していく。 そんなある日、ちっぽけな少女が探索者協会の扉を叩いた。 諸事情により金欠な彼女が探索者となった時、世界の流れは大きく変わっていくこととなる…… 人との出会い、無数に折り重なる悪意、そして隠された真実と絶望。 夢見る少女の戦いの果て、ちっぽけな彼女は一体何を選ぶ? 絶望に、立ち向かえ。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

処理中です...