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第3章 分解スキルでざまぁ編

第116話 おっさん、仇を見つける

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 砥石の販売が好調で嫌になってきた。
 ダンジョンのハードスネイルが可哀そうに思える。
 何匹生贄にしたのやら。
 俺の癒しは子供達との触れ合いだ。
 言っとくけどロリコンじゃないからな。

「おじさん、遂に人相書きの男を見つけたよ」

 玩具を配っていたら、子供が駆け込んで来た。

「本当か。どこでだ」
「風呂屋でだよ」
「風呂屋かぁ。考えもしなかったな。よし、案内しろ」

 子供の情報網がヒットしたか。
 武器屋か酒場だと思っていたんだけどな。
 俺は子供の後について風呂屋に向かった。

「ここだよ」
「帰っていいぞ」
「スーパーボール1000個を忘れないでね」
「ああ」

 風呂屋の入口を少し離れた所で見張る。
 待てども待てどもあいつらは現れない。
 子供に騙されたのか。
 いや、子供は自信満々だった。
 なぜだろう。

 俺は意を決して風呂屋に入った。
 湯舟に浸かってみたが、それらしい奴はいない。
 普通に考えるなら、俺が到着するのが遅かったのだろう。

 出直して明日の朝から、張り込みだな。

 張り込むのに同じ場所に男がずうっと立っていたら、怪しまれるに違いない。
 さて、どうしたものか。
 俺が選んだのはお面屋だった。

 お面の露店を風呂屋の前で開く。
 もちろん俺もお面を被っている。
 風呂屋帰りの子供がお面を親にねだり、まずまずの売れ行きだ。
 売れたからと言ってどうということはないが、カモフラージュにはある程度売れないと。

「来ないな」
「おじさん酷いよ。約束のご褒美はどうなったんだよ。人相書きの男ならさっきも風呂の中で会ったよ。ぼやぼやしていると逃げちゃうよ」
「えっ、そんな奴は居なかったと思うのだが」
「人相書きの太った男だよ」

 ブライムか。
 その時、皮鎧を着て、目だけが見える兜を被った太った男が風呂屋から出て来た。
 くそぅ、俺がお面を被って変装しているのだから、相手だって変装する可能性がある。
 こんな単純な事に気づかないとは。

「おじさん、これから忙しい。ご褒美は明日な」
「絶対だよ」

 俺は露店を畳んで、店の場所を変えるふりをしてブライムらしき男の後をつけ始めた。
 到着したのは門番の宿舎。
 これじゃブライムかどうか分からない。
 そっくりさんだったら、目も当てられない。
 宿舎で待つ事一時間。
 夕方のシフトなのだろう。
 ブライムらしき男は門に向かって歩き始めた。
 やはり兜は被ったままだ。
 門の勤務を終え酒場に行っても兜を脱がない。
 口の所にある面頬の部品を外しただけだ。
 口の部分が見えても本人との確証は持てない。

 兜を脱がせる必要がある。
 勤務中はまず無理だな。
 風呂屋ぐらいか。
 風呂屋では切った張ったは迷惑だろう。
 風呂屋でばっさりは流石に不味いか。
 俺がお尋ね者になる事請け合いだ。

 俺には現代製品がついている。
 小型カメラをこそっと奴の部屋に仕掛ければ良いんだ。
 宿舎に入り込んでも問題ない職業は薬売りだな。
 俺は魔力通販でいくつか薬を仕入れ。
 ブライムらしき男が宿舎を出たのを見てから、建物に入った。
 入口の近くのドアを叩く。

「薬売りです。ご入用はありませんか」
「ないな」
「恰幅の良いえーと、誰だったかな。この頃物忘れがひどくて。その人から注文されたんですが、いなければ扉の前に置いてほしいと」
「ああ、デリクの奴ね。二階の一番奥の部屋だ」
「すいませんね。サービスに胃腸薬をどうぞ」
「ありがとよ」

 えーと、二階の一番奥ね。
 ここだな。

 針金片手に。

分解ディサセムブル

 開いたぞ。
 部屋は散らかっている。
 好都合だ。
 植木鉢の陰に小型カメラを仕込む。
 ミッションコンプリートだ。

 これで奴が帰ってきた後に居なくなったら、カメラを回収して分析だ。
 パソコンを魔力通販で買うのはハードスネイルを沢山生贄に捧げないと。
 大忙しだ。

 小型カメラの回収も上手くいきいよいよ顔がさらされた。
 うん、奴だな。
 ブライムだ。
 間違いない。

 見つけてくれた子供の家に行く。
 真っ先にお礼を言うべきだと思ったからだ。

「おじさん、スーパーボールはもう要らない」
「何かあったのか」
「母ちゃんが病気になっちゃって、メタシン草が必要なんだ」
「そうか、なら金貨1枚あげよう。とても感謝してるんだ」
「金貨1枚だとメタシン草100本分にしかならない。一生分のメタシン草がほしい」

 お金をありったけ渡すとしても一生分は無理だ。
 この子供を救いたいが、どうしよう。
 手か、手ならあるじゃないか。
 ダンジョンを攻略して魔力を吸い取れば、モンスターは弱体化する。
 メタシン草が採りやすくなって、値段も下がるに違いない。
 常用するのも難しくないはずだ。

「おじさんの精一杯は金貨一枚なんだ。許してほしい。ただな、神様っていうのは良い子の願いを叶えるものだ。たぶんだが、メタシン草の値段が下がって買いやすくなるさ」
「もういいよ。無理だとは分かってる」
「じゃあな」

 金貨一枚を押し付けてその場を後にした。
 ブライムをやったらダンジョンを攻略しよう。
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