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第3章 分解スキルでざまぁ編

第109話 おっさん、道連れを得る

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 異世界ベティナに戻り、ダカード達を賞金首にしたかったが出来なかった。
 なんでかというと証拠が無いからだ。
 悔しいが仕方ない。

 冒険者ギルドには尋ね人の制度がある。
 ギルド員同士が所在を確認できるようになっていた。

「えっ、ダカードの尋ね人依頼はもう既に出てるのか」
「ええ、恋人だという人から出ています。この依頼はダカードさんが所在を明らかにしたくないと言えば、情報は開示されません」

 俺のパーティはまだ解散していない為、本人の意思の有無にかかわらず俺には情報開示の資格がある。

「俺のも重複になるが頼む」
「承りました」

「あなたもダカードを探しているの」

 俺に話し掛けてきたのは地味な美人だった。
 十人に聞けば八人から九人は美人だと答えるだろう。
 しかし、女優などの派手目の美人と比べると劣るという感じだ。
 髪の色も濃い茶色で目立たない。

「おう、ということはあなたがダカードの恋人?」
「それね。実は違うのよ。本当はお金を貸したの」

 なるほどね。
 例の情報屋に払った金はここから出ている訳か。

「それで、俺に何の用?」
「お金が急に必要になったから、ダカードに一刻も早く返して欲しいの」
「俺に借金を取り立てろという事か」
「いいえ、ダカード探索の旅に連れて行ってほしいのよ」

「どうしようかな」
「お、ね、が、い」

 色っぽく微笑まれてしまった。
 色香には騙されないが、まあいいだろう。
 彼女がダカード探しに役立ってくれる事を祈ろう。

「分かった連れて行く。俺はムニだ」
「私はパティよ。よろしくね」

 道連れは一人増えたので、捜索能力も二倍と行きたい所だ。

「最初はどこに行く」
「何か情報はないの」
「分かっているのは遺跡探索をやりたがっていたっていう事だけだ」
「じゃ、手始めはヨーク遺跡群ね」
「初心者の遺跡だったっけ」

「そうね。遺跡探索を始める人間はまずそこに行くわ」
「よし、そこに行こう」

 俺は魔力通販で自転車を出した。

「発掘品なんだが乗れるか」
「こう見えて運動神経はいいのよ。魔力バイクにも乗った事があるわ」

 パティは一時間ほどの練習で自転車に乗れるようになった。
 確かに運動神経は良い。

「よし、出発しよう」

 街道はアスファルトに似た物質で舗装されている。
 自転車でもなんなく進めた。

「この発掘品は楽しいわね。ダイエットにもなるんじゃないかしら。後で売ってくれない」
「今ならパーティ価格で融通しよう」
「冒険者は長いの?」
「ポーターの方が長いかな。君は何を商売にしているんだ?」
「私? 私は発掘品の売買をしているわ」

 発掘品の売買をしている商人のほとんどと面識があると思っていたが。
 なにせ、電卓とライトを売りまくったからな。
 商人全員を知っている訳じゃないからこういう事もあるか。

「電卓って聞いた事がないか。俺が発掘して売りまくった奴なんだが」
「ええ、知っているわ。私もいくつか仕入れさせてもらったわよ。計算が出来るのよね。あれはあなたが発掘したの。意外な縁ね」

 おかしい所はないな。

「ダカードとはどこで?」
「彼、発掘品に興味があるみたいで、店に来て商品をよく眺めていたわ。それでね。遺跡探索をするから出資してほしいと言われたわ」
「それで騙されたと」
「黙って街を離れたのは礼儀には違反しているけど、冒険者にはよくある事だわ。冒険者に出資するってそういう事だもの」
「冒険者で成功する奴は少ないからな。行方不明になるのも込みか」
「ええ、そうね」

 じゃなんで借金を取り立てに行くんだ。
 少し矛盾があるな。

「取り立てする必要はない気がするが」
「賭けをしたの。彼から借りを取り返せるかで」
「そうか。ダカードに貸した金以上の物が絡んでるっていう訳だな」
「ええ。それよりあなたの事聞きたいわ。なんで彼を追っているの」
「でかい貸しがあるんだ。取り返さないと」
「そう。あなたかなり強そうだけど、どうなの」
「この辺のモンスターは楽勝だな。おっ、ゴブリンか。見てろよ」

 俺は自転車を降りるとメイスでゴブリンを叩いて回った。

「手慣れているわね。頼りになりそうだわ」

 この女、ゴブリンがミンチになっても動揺の欠片もない。
 少し怪しいんじゃないか。
 ダカードとは男女の仲で俺の事を妨害するために寄越したか。
 まさかな。
 発掘品の買い付けで色んな街を旅した経験があるに違いない。
 そうだと思う。
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