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第2章 異世界帰還でざまぁ編

第99話 おっさん、兄貴と決着をつける

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 半年ほど経ち、魅了の魔力回路はやってない人がいないほど浸透してきている。
 俺の魔力を使う試みが正しいとして時間が欲しい。
 時間があれば新しいアイデアももっと生まれるかも知れない。
 哲候てっこうさんへの提案も効果を発揮するのは一年後。
 いやもっと後かな。

 とにかく時間がほしい。
 そんな時、兄貴から話がしたいと電話をもらった。
 待ち合わせ場所の山田ダンジョンの前に行く。
 妙だ。
 ダンジョン前に人がいない。
 しばらくして兄貴が一人でやって来た。

「用はなんだ。俺も忙しい」
「議員に妙な働きかけをしてるは分かっている。干渉を止めろ」
「それは出来ないな。俺の肩には世界がかかっている」
「戯言を」
「信じないのなら良い」
「やってくれ」

 兄貴が合図を出すと建物の陰から十人ほどの男達が出てきた。
 男達は一斉に拳銃を構える。
 やらせるかよ。

 俺は男達の真ん中に飛び込み手当たり次第に殴った。

「こいつ、俺達が見えている」

 ああ、認識阻害持ちの闇冒険者か。
 その対策はもう出来ている。

「刀を寄越せ」

 兄貴が日本刀を抜く。

斬撃スラッシュ斬撃スラッシュ斬撃スラッシュ斬撃スラッシュ斬撃スラッシュ

 日本刀が俺の魔力壁に当たって火花を散らした。

「ほう、兄貴もスキルを身につけたのか」
「驚きだ。俺はダンジョン制覇もなし遂げたのだぞ。今のレベルは52だ」

 なんだ。
 たった52かよ。
 まあ頑張ったんだろうな。
 日本でもトップテンには入るだろう。
 しかし、その情熱をもっと別の事に使えばよかったんじゃないかな。

「諦めろ。俺には敵わない」
「ダンジョンを国に取り上げられて満足しろとでも言うのか」
「あのダンジョンのアトラクション計画は進んでいるのだな」

 哲候てっこうさんからは報告はないが、そういう事なんだろう。

「進んでいる。後戻りしないほどにな」
「賃貸料で我慢しとけよ」

「仕方ない。奥の手を使う。究極斬撃アルティメットスラッシュ

 日本刀が高速で振るわれ、俺に当たって折れた。

「無駄だって」
「そんな……」

 突然、モンスターの雄たけびが聞こえ、猫型のモンスターが押し寄せて来た。
 スタンピードが始まったのか。
 そのモンスターは虎ほどの大きさがあった。
 俺はアイテムボックスからメイスを取り出すと応戦し始めた。

「来るな。来るな」

 兄貴が折れた日本刀を振り回している。
 さっきの必殺技はもう撃てないのか。
 それどころか斬撃スラッシュさえやっていない。
 魔力切れなんだろうな。

 闇冒険者達が発砲するも、モンスターは意に介さない。
 俺は身近な敵をやっつけるのに夢中で兄貴から少し目を離した。

「グワーッ。ひゅーひゅー」

 兄貴が喉笛をかみちぎられていた。
 ご愁傷様としか言いようがない。
 俺は周りのモンスターを掃討すると街に向かって走り始めた。
 おかしい。
 被害がない。
 警察や消防が出動しているが、それだけだ。

「状況はどうなっている」

 俺は山田ダンジョンカンパニーで社員を捕まえ尋ねた。

「スタンピードがダンジョンの周りで起こっています」
「限定的なのか」
「少なくても日本ではそうみたいです。海外は酷いらしいですよ」

 テレビをつけるとインタビューをしていた。

「俺見たんだ。山猫ほどのモンスターが突然、虎ぐらいになっちゃって。自衛隊がバズーカ砲を使ってくれなかったら危なかった」

 ダンジョンの周りにいた大猫だけが巨大化したのか。
 日本の余剰魔力はかなり少なくなったみたいだ。
 俺の試みは無駄じゃなかった。
 今その効果を実感した。

「叔父さん、父が家宝の日本刀を持ち出して」

 秋穂が慌てた様子で会社に来た。

「兄貴なら、モンスターと戦って亡くなった」
「そんな、父が」
「立派な最後だったよ」
「いえ、分かってます。叔父さんを殺そうとしたんでしょう」
「あんなのはじゃれただけだ。モンスターと戦って亡くなったのは本当だ」
「そうですか。私は遺産を放棄します」
「そうか。俺も今となっては山田ダンジョンはいらないな。そうだ、政府に寄付しよう。秋穂には不自由のない金ぐらい残してやるよ。幸い俺の会社は右肩上がりだからな」
「祖父がなんと言うか」
「何にも言わせないよ」
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