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第2章 異世界帰還でざまぁ編
第71話 おっさん、商品開発をする
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「すいませんでした」
俺は製薬会社の応接間で御手洗さんに深々とお辞儀した。
「いいんですよ。そりゃね。一時は狂ったとか言われましたけど。もらった植物から、難病に効果がある物質が見つかったんです。おかげで役職アップの給料もアップです」
「そうですか。でも術をかけた事は事実です」
「ちなみにその術はどういう物ですか」
「俺は魔力回路と呼んでいるんですが、その中にロボットに作用する物がありまして。人間に貼ると操れるんです。もちろん抵抗もできます。力が強いと重りぐらいの効果しかありません」
「恐ろしいですね。ですが、薬も同じです。自白剤なんて物も世の中にはある。あなたに飲んでもらいましょう」
「えっ」
「冗談ですよ。ですが、植物の自生している場所は聞きたいですね」
「それはご勘弁を」
「仕方ありません。さきほど難病と言いましたが、病気の名前は私も喋れない。企業秘密っていう奴はいかんともし難いですな」
うろ覚えだが薬効を調べるのに菌とのマッチングは手間の掛かる作業らしい。
培養した菌に薬を添加して菌のコロニーが縮小するかを調べるみたいだ。
病原菌の数は物凄い種類があるから、手間と費用はかなり掛かるのだろうな。
「そうですね。はははは」
「ところであの青汁を大量生産するようですが、販売をうちにやらせてもらえませんか」
「えっ、どこでそれを」
「調べました」
「それも企業秘密ですか」
「ええ、調べた方法は秘密です」
「仕方ない。販売権を譲るということで、今回の件はチャラにしたい」
「強気に出ましたな。いいでしょう。今後は私を操るような事はないと思っています」
「ええ、末永くお付き合いしたい。ところで他にも特殊な青汁があるんだが」
「それは興味深いですね」
「その他にも体力を回復する魔力回路がある」
「ほう、それは素晴らしいですね。うちの会社は医療機器も手掛けていますから、良い関係を作れると思いますよ」
「では、これからもよろしく」
「ええ」
差し出される手。
がっちりと握手してしまった。
魔力回路のインクの量産は簡単だ。
材料をミキサーに掛けてカスを取り除けば良い。
材料が特殊なだけで、工程は単純極まりない。
問題は新しい青汁という名のポーションだ。
製薬会社に売らせるのだったら、思い切って薬でもいいんじゃないか。
◆◆◆
開発部の社員を集めた。
開発部といっても二人だけだが。
「新商品を開発する。大抵の機能は実現できる。何かアイデアはないか」
「疲れにくい青汁ってのはどうですか」
「危ない薬みたいで少し嫌だな」
「そんな事ないですよ。疲労回復をうたっている製品はいくらでもあります」
それに、ぴったりなポーションがある。
スタミナポーションだ。
「よし、開発してみよう」
「私は、風邪をひき難くする青汁を提案します」
それにぴったりなのはキュアポーションだな。
もっともこれはひき難くするんじゃなくて治すのだけどな。
「よし、それも採用だ。ところで今売っている青汁の分析結果は出たか」
「はい、如何なる鎮痛作用のある物質も検出されません」
俺には理由が分かる。
まだ地球では魔力を感知する方法がない。
今、売っている青汁の薬効は魔力だ。
分析器では分析できない。
「よし、いいぞ。魔力回路に関してはどんなアイデアがある」
「この間、サンプルをもらった暖かくする魔力回路は販売に向けて準備してます。逆の冷やすのはどうでしょう」
冷やす魔法陣もある。
「だが、エアコンがあるだろう」
「いえいえ、携帯できるということが重要です。しかも、燃料は人間自身。ヒットする事間違いなしです」
「採用しよう」
「私は結界の魔力回路を推します。雨具にぴったりです。ペンダント型雨具なんて、おしゃれですよね」
「よしそれも採用だ」
「乾燥の魔力回路を使っておむつなんてどうでしょう。単価は安くなりますが」
「繰り返し使うのならおむつカバーだな。これも採用しよう」
「私は滅菌の魔力回路が欲しいです」
異世界では菌を認識してないから、滅菌の魔法陣はないんだよな。
「うーん、難しいな」
「駄目ですか。なら、アイテムボックスを再現したいです」
「できるんだが、魔力消費が激しくて実用には向かない」
「社長はこれらの知識をどこで学んだのですか」
「本に決まっているだろ。地球には昔から魔力があったらしいぞ」
「興味深いです」
「植物が消費していたらしい。それが間に合わなくなって、人間や動物が消費する事になった」
「物知りですね」
「ちょっと喋りすぎたようだ」
ダンジョンにゴミを捨てる行為は自滅に向かっていると言いそうになった。
いたずらに不安を煽るような事をしてもな。
だが、魔力回路が広まって魔力の消費が増えれば破滅を回避できるかも。
一筋の光明が見えた気がした。
その為にも時間を稼がないと、明日からダンジョンを攻略しよう。
俺は製薬会社の応接間で御手洗さんに深々とお辞儀した。
「いいんですよ。そりゃね。一時は狂ったとか言われましたけど。もらった植物から、難病に効果がある物質が見つかったんです。おかげで役職アップの給料もアップです」
「そうですか。でも術をかけた事は事実です」
「ちなみにその術はどういう物ですか」
「俺は魔力回路と呼んでいるんですが、その中にロボットに作用する物がありまして。人間に貼ると操れるんです。もちろん抵抗もできます。力が強いと重りぐらいの効果しかありません」
「恐ろしいですね。ですが、薬も同じです。自白剤なんて物も世の中にはある。あなたに飲んでもらいましょう」
「えっ」
「冗談ですよ。ですが、植物の自生している場所は聞きたいですね」
「それはご勘弁を」
「仕方ありません。さきほど難病と言いましたが、病気の名前は私も喋れない。企業秘密っていう奴はいかんともし難いですな」
うろ覚えだが薬効を調べるのに菌とのマッチングは手間の掛かる作業らしい。
培養した菌に薬を添加して菌のコロニーが縮小するかを調べるみたいだ。
病原菌の数は物凄い種類があるから、手間と費用はかなり掛かるのだろうな。
「そうですね。はははは」
「ところであの青汁を大量生産するようですが、販売をうちにやらせてもらえませんか」
「えっ、どこでそれを」
「調べました」
「それも企業秘密ですか」
「ええ、調べた方法は秘密です」
「仕方ない。販売権を譲るということで、今回の件はチャラにしたい」
「強気に出ましたな。いいでしょう。今後は私を操るような事はないと思っています」
「ええ、末永くお付き合いしたい。ところで他にも特殊な青汁があるんだが」
「それは興味深いですね」
「その他にも体力を回復する魔力回路がある」
「ほう、それは素晴らしいですね。うちの会社は医療機器も手掛けていますから、良い関係を作れると思いますよ」
「では、これからもよろしく」
「ええ」
差し出される手。
がっちりと握手してしまった。
魔力回路のインクの量産は簡単だ。
材料をミキサーに掛けてカスを取り除けば良い。
材料が特殊なだけで、工程は単純極まりない。
問題は新しい青汁という名のポーションだ。
製薬会社に売らせるのだったら、思い切って薬でもいいんじゃないか。
◆◆◆
開発部の社員を集めた。
開発部といっても二人だけだが。
「新商品を開発する。大抵の機能は実現できる。何かアイデアはないか」
「疲れにくい青汁ってのはどうですか」
「危ない薬みたいで少し嫌だな」
「そんな事ないですよ。疲労回復をうたっている製品はいくらでもあります」
それに、ぴったりなポーションがある。
スタミナポーションだ。
「よし、開発してみよう」
「私は、風邪をひき難くする青汁を提案します」
それにぴったりなのはキュアポーションだな。
もっともこれはひき難くするんじゃなくて治すのだけどな。
「よし、それも採用だ。ところで今売っている青汁の分析結果は出たか」
「はい、如何なる鎮痛作用のある物質も検出されません」
俺には理由が分かる。
まだ地球では魔力を感知する方法がない。
今、売っている青汁の薬効は魔力だ。
分析器では分析できない。
「よし、いいぞ。魔力回路に関してはどんなアイデアがある」
「この間、サンプルをもらった暖かくする魔力回路は販売に向けて準備してます。逆の冷やすのはどうでしょう」
冷やす魔法陣もある。
「だが、エアコンがあるだろう」
「いえいえ、携帯できるということが重要です。しかも、燃料は人間自身。ヒットする事間違いなしです」
「採用しよう」
「私は結界の魔力回路を推します。雨具にぴったりです。ペンダント型雨具なんて、おしゃれですよね」
「よしそれも採用だ」
「乾燥の魔力回路を使っておむつなんてどうでしょう。単価は安くなりますが」
「繰り返し使うのならおむつカバーだな。これも採用しよう」
「私は滅菌の魔力回路が欲しいです」
異世界では菌を認識してないから、滅菌の魔法陣はないんだよな。
「うーん、難しいな」
「駄目ですか。なら、アイテムボックスを再現したいです」
「できるんだが、魔力消費が激しくて実用には向かない」
「社長はこれらの知識をどこで学んだのですか」
「本に決まっているだろ。地球には昔から魔力があったらしいぞ」
「興味深いです」
「植物が消費していたらしい。それが間に合わなくなって、人間や動物が消費する事になった」
「物知りですね」
「ちょっと喋りすぎたようだ」
ダンジョンにゴミを捨てる行為は自滅に向かっていると言いそうになった。
いたずらに不安を煽るような事をしてもな。
だが、魔力回路が広まって魔力の消費が増えれば破滅を回避できるかも。
一筋の光明が見えた気がした。
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