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第2章 異世界帰還でざまぁ編

第61話 おっさん、薬草を育てる

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「ちっ、また奴らか」

 俺はメイスを握り締めた。
 現在、俺は畑仕事に精を出している。
 そこに、動物が変異したモンスターが襲いかかってくるという訳だ。

 幸いにしてでかいモンスターは電気柵があるので畑の周りにはこない。
 モンスターといえども電気ショックは不快なのだろう。
 俺がいう奴らとは40センチのネズミのモンスターだ。
 鋼毛鼠というモンスターで硬い体毛が特徴だ。

 俺は鋼毛鼠を追い回しメイスで叩く。
 しかし、鋼毛鼠の速さに追いつける事が出来なくて追っ払うだけにとどまった。
 奴ら、芋類や穀物を狙っているのだ。
 もちろん俺の所には無い。
 しかし、餌がないと分かると俺に襲い掛かってくる。
 迷惑なものだ。

  ◆◆◆

「順調だな。元気に育てよ」

 魔力通販で買える異世界産の薬草。
 それを育てているのだ。
 一攫千金を諦めた訳じゃない。
 ダンジョンに入らないで一攫千金する手段がこれだからだ。

 とは言っても銅貨10枚の価値の薬草なんて高が知れている。
 俺が選んだのは最下級リジュネポーションが作れる薬草だ。
 このポーションを作って下地作りだ。

 異世界の植物を持ち込んで、環境破壊なんのその。
 この薬草の種が飛んで自生しても責任は持たない。
 開き直ると決めたからだ。

「どうです。ここの暮らしにも慣れましたか」

 この人はホームレス支援の暖かい家のメンバーだ。

「ええ、良い所を紹介頂いて助かってます」

 俺が畑を借りたりできる訳はない。
 だが、耕作放棄地というのは至る所にある。
 管理していないと畑には木が生えてくる始末。
 木を排除するには手間が掛かる。

 お金はそんなに取れないが信用の置ける人に貸したいという人は少なからず存在する。
 ちなみに悪い人に貸すと耕作権というのを盾に取られて、返してもらう時にもめたりする。
 暖かい家はちゃんとした団体なので貸してもらえるという訳だ。
 俺は暖かい家から無料で借りている。

 この無料というのがミソだ。
 無料だと賃貸関係が発生しない事にできる。
 裁判で争った時に貸してる側が有利なのだ。
 実際はどうかしれないが、そう聞いた。

 虎時とらときから貰った支度金はもうほとんど残ってない。
 食費だけで精一杯だ。

 住む所もただで離れに住まわせてもらっている。
 電気水道が止まっているが問題ない。
 井戸水が無料で使えるからだ。
 本当に良い所を紹介してもらった。

「一年の約束ですから。お礼を言われるほどではないです。賃料も小遣い程度ですから」
「それでも涙がでるほど有難かったです。この御恩は忘れません。沢山稼いで団体に寄付します」

「ところでこのハーブはどこの植物ですか」
「行けないほど遠い秘境の物です。眉唾ですけどね。これで青汁を作ろうかと思っています」
「儲かるといいですね」

 田舎では虎時とらときの手も伸びないだろう。
 まさか異世界産の薬草を育てているとは思うまい。

 現住所もあの倉庫から移していないし、ダンジョンにも近づいていない。
 痕跡は消せたはずだ。

 俺が作っている薬草は異世界ではほとんど雑草扱いの草だ。
 痩せた土地や条件の悪い土地でも生える。
 栽培方法も簡単だ。
 植えたらたまに水をやりゃあ良い。
 肥料も申し分程度で良い。

 最初は無料で、二回目からは強気の二千円の値段をつけて販売する事で食いつないだ。
 最下級リジュネポーションの効果というのが擦り傷が治るぐらいの治癒効果とさすってもらった程度の痛み止め効果だ。
 しかし、最大の特徴は一週間効果が持続する事だ。

 老人というのは痛い所がどこかにある。
 このポーションは気休めほどだが確実に痛みが緩和する。
 一度飲んだら手放せなくなること請け合いだ。

 ポーションは魔道具が作れる人間なら簡単に作れる。
 薬草をすりつぶし、魔力を注ぐ魔道具の上におけば、俺の魔力で完成する。
 もっと魔力があれば大量生産できるが、レベル1ではいかんともし難い。

 実は気になっている事が一つ。
 魔力通販で買ったものは俺が死ねば魔力に戻ると考えていた。
 薬草の種から生えたものも魔力に戻るのだろうか。
 もし、そうなった場合はすまんとしか言いようがない。
 ポーションの客全てが俺と死を共にする。
 考えない事にしておこう。

 そして、この青汁を暖かい家の伝手で製薬会社に送ったら、一度会いたいと手紙が来た。
 やったぜ。
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