上 下
56 / 248
第2章 異世界帰還でざまぁ編

第56話 おっさん、ゴミ捨て業を開始する

しおりを挟む
 次の日の朝。

魔力通販メールオーダー

 何かモンスターを退治するいい手はないかな。
 そうだ臭いだ。
 昨日犬は臭いで寄って来た。
 逆に忌避する臭いがあるはず。

 確か、モンスター避けの香があったはずだ。
 これだ。
 魔力80で一回分。

 これでゴミ捨ての仕事が出来るかも知れない。

  ◆◆◆

 ホームレスの同業に聞いてゴミの集積場に向う。
 ゴミの集積場はトタンの塀で囲まれて異様な臭いが立ち込めていた。
 ゴミの小山が幾つも出来ていた。
 それと中央にある小さい焼却炉を見て、ここが胡散臭い処理場じゃないかとの疑念を持たせる。

 アイテムボックスを使っていいんだろうか。
 図書館の情報ではスキルが発現した者はいるし、スキルオーブの存在も確認されている。
 ええいままよ。

「ひと山いくらですか」
「初めてかい。ひと山100円だよ」
「じゃ、10」
「何いっているんだ。手ぶらじゃないか」
収納箱アイテムボックス

 ゴミをアイテムボックスに収納する。

「たまげたね。ホームレスでアイテムボックス持ちは初めてだ。ほいよ1000円だ」

 ホームレスの羨望と嫉妬が混じった眼差しを受けて、俺は足早にその場を後にした。
 この仕事は駄目な気がする。
 だが現状で出来る仕事はない。
 一攫千金なら心当たりがないまでもない。
 だが、それは最終手段だ。

 ダンジョンの受付で規定の金額を払う。
 と言っても50円だが。
 安いがこんな物だろう。
 ゴミ捨てだからな。
 俺が前に住んでいた所はゴミ袋10枚が50円だった。
 それがゴミ処理の値段だった。
 もちろん、地方自治体からも補助が出ているに違いない。
 ダンジョンも地方自治体から補助が出ているはずだ。

 俺はダンジョンに入るとモンスター避けの香を体に振り掛けた。
 異世界ではありふれた品だ。
 低レベルのモンスターが逃げて行く効果がある。

 そして、ゴミの中から鉄パイプを取り出すと装備した。
 メイスの代わりだ。

 通路は他の人が討伐しているらしく、モンスターの影はない。
 俺は適当な部屋に入った。
 中には山猫ほどの大きさのモンスターがいる。
 大猫というモンスターだろう。
 たしか攻撃は物理のみだったと思う。

 鉄パイプを握る手が汗で濡れる。
 俺は香の効果を信じて部屋の中央に進んだ。
 モンスターを俺を見てうろうろし始めた。
 襲い掛かりたいが我慢している感じだ。
 お香の臭いが薄れたら、との思いが頭をよぎる。

収納箱アイテムボックス

 ゴミをアイテムボックスから放出。
 俺は逃げるように現場を立ち去った。

  ◆◆◆

 あの、パン屋に寄った。

「約束通り買いにきました」
「無理はしないでよ。うちの店の商品を買うために死んだなんて聞いたら、寝覚めが悪いから」
「ええ」

 サンドイッチをチョイス。
 久しぶりのまともな食事だ。
 このサンドイッチの味は忘れないだろう。

 もちろんパンの耳を買うのも忘れない。
 いざという時のためアイテムボックスに蓄えておくのだ。

 公園に戻る。
 やはりあの雑種の犬がいた。
 パンの耳をいくつか投げてやる。
 俺が近づく素振りを見せると後退する。
 きっと虐待された犬なんだろう。
 人間への不信感で一杯なのだな。
 無理はすまい。

「あー、わんちゃんだ」

 小学生ぐらいの子供が犬に寄ってきた。
 虐待された犬は噛みつく事もあるから、危険だと言おうとした。

 子供は犬を既に撫でくりまわしていた。
 あれ、虐待された犬ではないのか。

「その犬を世話しているのか」
「ううん、初めて会った」

 異世界の匂いが染みついているのか。
 いや、ゴミを捨てる時に使った香の臭いが残っているんだ。
 あー、風呂に入りたい。
 銭湯に毎日は無理だな。
 一瞬ゴミをもっとダンジョンに運べばと思ったが、ホームレスにも生活がある。
 俺が根こそぎ仕事を奪ってもいいとは思えない。

 俺は速攻で銭湯に行き一風呂浴びた。
 公園に帰ると犬はまだ俺を許してはくれなかった。
 服だな。
 服に臭いが染みついているのだな。
 明日は安い衣類を手に入れて洗濯しよう。

 着替えても洗濯しても犬は俺を許してはくれなかった。
 何故だ。
 異世界帰りの臭いがあるとでもいうのか。
 そういえばあの犬は首輪をしていない。
 人に飼われた事がないのか。
 でも野犬は気が荒いともどこかで聞いた。
 俺の投げたエサは疑いもせずに食っていたし。
 謎だ。

 そんな生活を1ヶ月続け。
 そろそろホームレス卒業かなと思った
 まだ犬と和解は出来ていない。
 エサは食ってくれるのだが、距離感が縮まらない。
 そうか、名前を付けてなかった。

「ポチ」

 そう犬を呼んだが反応はない。
 そして、考え付く限りの名前をつけたが駄目だった。
 気が合わないと思う事にした。
 人間にも馬が合わない者はいる。
 動物だって同じさ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました 第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった 服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます

処理中です...