上 下
153 / 179

第153話 狙撃

しおりを挟む
 今日は冒険者バトルの日。
 さて、今日はどんな手加減をするかな。

「両者構えて、始め!」

 どこか遠くで銃声みたいな物が聞こえた。
 みると対戦相手が腹から血を流して倒れ込んでいる。

【おっさん、勝てないからってスナイパーはないだろ】
【ついにキレて犯罪者か】
【こんな見え見えの狙撃はしない。俺はおっさんを信じてる。刑務所への差し入れは殺し屋漫画を差し入れてやろう】
【事件の目撃者っての。それに初めてなった。警察とかが話を聞きにくるのかな】
【おっさんともお別れか】

 俺じゃない。
 ここでみっともなく俺じゃないなんて言っても誰も信じないだろう。
 取れる手としては。

「おい、意識はあるか。あるなら俺の寄生スキルを受け入れろ」
「ぐあっ」

 寄生できた感触があった。
 男は急に痛みがなくなったので立ち上がって傷口を確かめている。
 致命傷だったな。
 感謝しろよ。

【どういうこと】
【サクラだよ。血糊がどばっと出る奴。撮影なんかに使うだろ】
【なんだ。まいど八百長判定されるんで、ドッキリを仕掛けたのか】
【騙されたよ】

「八百長により両者反則負け」

【結局こうなるのか】
【いや今回のはわざとだろう】
【俺、騙されたよ】

 狙撃した奴は誰だ。
 俺は会場から離れると、カメラを仕舞い、ファントムになった。
 そして、銃声が聞こえた方角のビルを目指す。
 会場にいるモチにも来てもらった。

 ビルの屋上に上がると。

「火薬臭いにゃ」

 とモチが言い、薬莢を見つけ出した。

「追えるか?」
「火薬の匂いは独特にゃ。追えると思うにゃ」

 俺とモチは追跡を始めた。
 くっ、車に乗られたようだ。
 ビルの前で、匂いが薄くなったようだ。

 モチを肩車して軽く走る。
 モチが手で行先を示す。
 そして、ついに犯人に追いついた。

 犯人はコンビニで買い物している。

「決まりか」
「服に火薬の匂いがべったりにゃ」

「おい、お前、来てもらうぞ」
「なんだ」
「その肩に掛けたギタースーツ、ライフルが入っているんだろ。ファントムアイにはお見通しだ」
「くっ」

 男はナイフを抜いた。
 俺は軽く男の手首を叩く。
 ボキっと折れる音がした。

「ぐぁぁぁ」
「抵抗するからだ」

 ええとコンビニの防犯カメラにナイフを抜く所が映ってるから正当防衛だよな。
 でも聴取は不味い。
 モチにこの後の手筈を説明した。

「モチ、大手柄だ」

 そう言って後はモチに任せた。
 手を叩くのが早くて見えてなければ良いが。
 まあ、例によってファントムはいない。
 男には呪いも付与してやったから、取引に応じるだろう。

 さて、ファントム争奪戦だ。
 今回は骨のある奴がいるといいな。

 炎を出しながら走り、いつも通り会場入り。

 トランペットや太鼓、笛などが鳴らされる。
 今回の技は、ティレックスファングスパーク。
 両手から電撃魔法を放ち、手でガブっとやる動作をする。
 電撃魔法は演出だ。
 ただのアイアンクロー。

 さて一回戦だ。

「構えて、始め! ファイ!」

「ティレックスファングスパーク」

 俺は相手の頭を挟み込んだ。

「痛たたたた。ギブ」

「降参により澄水とうすいの勝ち」

 銅鑼などがけたたましく鳴り響く。
 決勝戦まで大した奴はいなかった。
 決勝の相手はムキムキのマッチョでいかにも強そう。

「構えて、始め! ファイ!」

「ティレックスファングスパーク」

 俺は相手の頭を挟み込んだ。

「せいっ」

 相手は俺の胸に正拳突きを放った。
 これで手を捻ったら首の骨が折れるよな。
 正拳突きはダメージではないし、どうしたものか。
 ギブアップしてくれないかな。

 あまり我慢すると頭蓋骨にひびが入ると思うんだけど。
 俺は右手で掴んでる頭をしっかり固定。
 左手は顎の下にやって、くすぐり始めた。

「ぐひゃひゃ。おま、卑怯だぞ」
「ティレックスファングテイックル」

「ギブギブ」
「降参により澄水とうすいの勝ち」

「防衛、3.5回おめでとうございます」
「3.5回とは?」
「エキシビションが0.5回とカウントされてます。では今回はどうでしたか」
「うむ。歯ごたえがないな。強者よ、もっと掛かって来い」
「冒険者の皆さん、冒険者協会では、ファントム戦の挑戦者を広く募集してます」

「ちょっと悪いが、ファントムさんよう」

 刑事らしき人が現れた。

「何かな」
「事件を解決してくれたことには礼を言うが、偽証教唆はいけないな」
「ほう、何か証拠でも」
「ないが、あまりお痛が過ぎると、ファントムとはいえしょっ引くぞ」
「逮捕状を持ってくるのだな。ではさらばだ」

 俺はおっさんになった。

「刑事さん、俺が犯人を捕まえたんだよ。モチは俺の部下だ」

【配信がないんで経過が分からない】
【何の犯人?】

「何か知ってるのか」
「狙撃事件の犯人だろ。俺の力をもってすれば、狙撃ポイントの犯人の顔がくっきり見える」
「嘘を言って貰ったら困る。警察はファントムが解決したと見てる」

【ファントムの功績を横取りか】
【またしてもか。懲りないな】

「ファントムはいない。あの場にいたのは俺だ」
「防犯カメラにもファントムが映ってる」
「事件を解決したのは俺なんだ」

【相手にされてないな】
【狙撃はヤラセじゃなかったのか】
【別の狙撃事件じゃね】
【ああ、狙撃事件を目撃して、あの冒険者バトルを自演した】
【そうか。全てはファントムの功績を奪うため】
【せこいな】
【クズっぷりが凄い】

 うん、なんかしっくりこない終わりになったな。
 もうちょっと大物の悪役感が出せたら良いけど、今後の課題だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

配信の片隅で無双していた謎の大剣豪、最終奥義レベルを連発する美少女だと話題に

菊池 快晴
ファンタジー
配信の片隅で無双していた謎の大剣豪が美少女で、うっかり最凶剣術を披露しすぎたところ、どうやらヤバすぎると話題に 謎の大剣豪こと宮本椿姫は、叔父の死をきっかけに岡山の集落から都内に引っ越しをしてきた。 宮本流を世間に広める為、己の研鑽の為にダンジョンで籠っていると、いつのまにか掲示板で話題となる。 「配信の片隅で無双している大剣豪がいるんだが」 宮本椿姫は相棒と共に配信を始め、徐々に知名度があがり、その剣技を世に知らしめていく。 これは、謎の大剣豪こと宮本椿姫が、ダンジョンを通じて世界に衝撃を与えていく――ちょっと百合の雰囲気もあるお話です。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

処理中です...