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第152話 誘拐事件

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 ファントムファンクラブには色々な声が寄せられる。
 虐めをなくして下さいとか、パワハラ上司をなんとかして下さいとか、隣の犬がうるさいんですとか、とにかく色々だ。
 その中に、スタンピードの時に子供がいなくなりました、探してくれませんか、もうここしか頼る所がないんですとある。
 警察にも届けたし、町内会の人達もビラ配りをしていてくれてるそう。
 運が悪いとモンスターの腹の中だろうな。
 だが、遺骨ぐらい返してやりたい。

 子供の服から、モチ達が匂いを辿る。
 あれっ、マンションの一室の前で匂いが途絶えたぞ。
 きっと子供はマンションの中だ。
 ファントムが扉を蹴破る。
 それは良くないな。
 正義のヒーローらしくない。

 いや、ドラマとかなら許されるよ。
 でも実際は子供を助けたけど、器物損壊で訴えるからねと言われる。
 情状酌量が適用されると思うが、そんなのは関係ない。
 ファントムの正体がばれるのが問題だ。

 こんなちんけな事件でばれるのは勿体ない。
 おっさんが全て被るのが正しい。

 一芝居必要だな。

 ファントムの動画を撮ることにした。

「私のもとに寄せられた子供の誘拐事件。犯人のアジトをファントムアイで突き止めた。今から突入する」
「ちっちっちっち、」

 幻影魔法の俺が現れて催眠術を掛けたふりをする。

【ついにおっさんとファントムが激突か】
【催眠術と物理の極みか】

「さあ、ファントム。チャイムを鳴らすのだ」
「はい」

 ファントムがチャイムを鳴らす。

「うがぁ、術を掛けたな。許さん」
「子供はいいのかな」
「はっ、そうだ子供」

 掛かって来たチンピラみたいなのなファントムが叩きのめして、子供を確保する。

「いいか子供。助けたのはおっさんだ」
「うん」
「貴様」

【手柄横取りか】
【悪辣だな】
【ファントムは捕まると不味いじゃないか】

 ファントムが消えた。
 そして、警察がやって来た。

「暴れたのはファントムだよ。チンピラを叩きのめしたのもな」
「君は?」
「子供を助けに最初に部屋に入った者だ。ファントムは罪に問われるのかな」
「暴行罪だな。ただ誘拐犯は襲い掛かってきたんだよね。となると、暴行罪はないかな。住居侵入はチャイムを鳴らして入っただったな。なら問題ないか。だがね、聴取は取らないといけない」
「なんとかなりませんかね。5円玉。ああそうだ。誘拐犯がきっと癌になったとかわめくでしょうから、その時は俺の所に連絡をくれませんか」
「そんなこと出来んよ」
「そういう癌の専門家がいるんですよ」

 上手くいくかな。
 少し経ったら、誘拐犯が俺と話したいと言っているそうだ。
 特別に会わせてもらう。

「いいか。ファントムはいなかった」
「そう言えば病気を治してくれるのか。分かった、仲間割れした事にする」
「もちろん病気は治す」

【おい、これ。罪になるだろ】
【なるな。偽証教唆罪】

「あー、誘拐犯はファントムにやられたんじゃないそうだな。動画見たぞ。まあなんだ俺達もファントムの正体を暴きたいわけじゃない」

【刑事がそんなことを言っていいのかよ】
【えー、そんな感じで収まるのか】

「ふひひ、上手くいった」

【ファントムがいなかったことになるなら、全部おっさんの手柄】
【こすい。手柄横取りかよ】

「悪が勝つんだよ」

【誘拐犯は悪だろ?】

「悪が足りなかった」

【おっさんぐらいクズなのが勝つように出来ている】
【金の力か】
【催眠術最強だな】
【ちょっと待て、ファントムがいなかったと暗示を掛ければ済むんじゃないのか】
【おお、そうだ】
【おっさん抜けてるから】
【いや、癌の暗示しかできないのかも。機械ならあり得る】

「しかし、誘拐犯は酷い奴らだ。子供の臓器を売るつもりだったんだからな」

【それは許せんな】
【おっさんはそういう悪は駄目なのか】

「悪には美学がいる。美学のない悪は鬼畜の所業だ」

【おっさんの悪の美学はわかる。目立ちたいんだな。それも悪を成して、スカッとしたっていう具合に】
【なるほどね。悪を成してスカッと爽快か】
【漫画の悪役ヒーローみたいなものか】
【そんな感じなんだろうな】

「分かってくれたようだな」

【これからも頼むぜ】

 偽証教唆罪にはならない。
 なぜなら本当にファントムはいないからだ。
 俺は嘘は言ってない。
 彼らに本当の事を言うように言っただけだ。
 だから、この件で訴えられても無罪になれる。

 俺だって考えてる。
 犯罪になるような嘘はつかない。
 刑事さんに聞かれたら秘密にして下さいよと言って俺がファントムなのをばらすつもりだ。
 刑事なら口が堅いからな。
 証明は筆跡鑑定で簡単にできる。
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