貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太

文字の大きさ
上 下
142 / 179

第142話 冒険者バトル

しおりを挟む
 巨人の街はお預けだ。
 今日は冒険者バトルの日。
 ファントムは毎回、出なくても良いらしいが、俺は出ることにしてる。
 お祭りは好きなんだ。
 人がわいわい騒いでいるのを見るとこっちまで楽しくなる。
 さて、おっさんのランクアップ戦だ。

「構えて、始め」

 俺は左右にステップを踏み、軽快なフットワークを披露した。
 相手の木剣の攻撃を軽くかわす。
 相手は何回も攻撃して疲れたようだ。
 肩で息をしてる。
 俺は対戦相手の額にデコピンした。
 倒れる対戦相手。
 ちょっと、今のはかなり手加減が上手くいった。
 子供にやっても泣きださないレベルだ。

「こんなに攻撃してもかすりもしないなんて、とてもじゃないが」

 対戦相手が涙目だ。

「両者反則負け、八百長の疑いあり」

【おっ、加齢に、いいや華麗に決めたのにな】
【デコピンで勝負が決まったら、そりゃ八百長だろう】
【またしてもサクラの演技指導を失敗したな】
【CGは作っていた会社が優秀だったんだろう】
【サクラはおっさんが指示を出しているのかな。強者感を出そうとして失敗してる】

「俺、勝ってたよな。前の二回も」

【八百長を抜きにすれば勝ってたな】
【だが、そこが大事】
【審判の眼は誤魔化せない】
【名審判だ】
【俺でも反則負けにする】

「もう良いよ」

【おっさんがしょげた】
【いじけたおっさんは可愛くない】
【もっと上手くやれよ。適度に殴り合って。相手をKOすればいいんだからさ】

 くそっ、ちゃんとやってるよ。
 相手が弱すぎるんだ。
 適当に攻撃させて、デコピンで心が折れるかな。
 くそっ。
 このうっぷんはファントム戦で晴らそう。

 いつも通り全速力で入場。
 喝采や口笛、拍手、トランペットが起こる。
 トランペット?
 野球の応援みたいだな。
 だが、賑やかなのはありだ。
 オッケー、風呂の桶。

 偽ファントムは相変わらずいる。
 こいつらどういう心境なんだろな。
 偽物でも勝てば本物になれると思っているのだろうか。
 嘘をついてたという事実は勝っても消えないぞ。
 それともファントムっていうのは冒険者バトルの優勝者の名称とでも思っているのかな。

 まあいいや。
 いずれファントムは消える。
 消えた後に誰が名前を引き継ごうが俺はなんとも思わない。
 横暴が過ぎたら俺が懲らしめに行くから問題ない。
 まあ、強い奴はやたら噛みついたりしないものだ。

 今回のファントム戦は太鼓やトランペットなどの応援がある。
 だが俺の試合しか応援しない。
 なんかポリシーがあるのだろう。
 試合は俺の新技、マッハファイヤーパンチが炸裂。
 これはパンチの風圧で相手を場外に吹っ飛ばすものだ。

 その時、フニッシュとして炎が出るがこれは魔法を使った演出で、攻撃力はない。
 決勝まで簡単に進めた。
 決勝の相手はとみると、鉄の輪っかを手足に嵌めている。
 歩くのが大変そうだ。
 動けないんじゃ、風圧に耐えても負ける一択なんだけどな。
 まあいいや。

「構えて、始め」

「マッハファイヤーパンチ」

 うん飛ばないな。

「ええとめんどくさい。略してMFP、MFP、MFP、MFP、MFP」

 新技を連発。
 対戦相手のかつらがすっ飛んだ。
 そして着ている鎧と服もすっ飛んだ。

 辛うじてパンツは脱げてない。

 観客席から笑いがこぼれる。
 応援の音楽が一段と大きくなった。

「止めだ。スーパーマックスマッハファイヤーパンチ」

 対戦相手のパンツが吹っ飛んだ。
 相手は真っ赤になって逃げ出そうとしたが、重りが重くて走れない。
 もじもじと内股で退場していった。
 まったく、強いやつは出ないのか。
 まあそうだろうな。
 他人の名前を騙るなんてみっともない真似を強者がするはずない。

「場外により、澄水とうすいの勝ち」

 わあっ、歓声が上がる。
 楽器も高らかに音を奏でた。

「では、2回目の防衛を果たした澄水とうすいさんに話を聞きたいと思います。今回の敵はどうでしたか」
「馬鹿にしているのかと言いたい。ファントムの名前はそんなに安くない。これでは糞トムだ」

 会場がシーンとなる。
 やべ滑ったか。

「いや憤慨してる」
「では、今後はどのような展開を望みますか」

「ファントムの名前は称号だ。たしかに俺の功績でそういう名前が付いたが、一番強い冒険者の名前ってことでいいのではないか。つまり俺はファントムだと名乗るのは自分が一番だと言っているに等しい。だからファントムだと主張するのは騙りでもなんでもない。ただ、ファントム強奪戦で勝ってから主張して欲しいが、簡単に言うと、今はファントムじゃないがのちのファントムだと思う者は気軽に参加してほしい」
「というと、ファントムは一番強い証だと。それを目指すのは恥じゃないと」

「その通り、ファントムという名前に興味がなくても、自分が一番強いということに興味がある冒険者は参加してほしい」
「昨今のファントムの偽者を見ていると確かに私でも思います。初代ファントムの澄水とうすいさんがそう言っておられるのですから、腕に自信のある方は挑戦してみてはいかがでしょうか」

 滑った時はちょっとと思ったが、上手くいって良かった。
 ちょっとは強い奴が出て来ないと見せ場が作れない。
 次回は期待しよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放されたら無能スキルで無双する

ゆる弥
ファンタジー
無能スキルを持っていた僕は、荷物持ちとしてあるパーティーについて行っていたんだ。 見つけた宝箱にみんなで駆け寄ったら、そこはモンスタールームで。 僕はモンスターの中に蹴り飛ばされて置き去りにされた。 咄嗟に使ったスキルでスキルレベルが上がって覚醒したんだ。 僕は憧れのトップ探索者《シーカー》になる!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた

羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件 借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

召喚されたら無能力だと追放されたが、俺の力はヘルプ機能とチュートリアルモードだった。世界の全てを事前に予習してイージーモードで活躍します

あけちともあき
ファンタジー
異世界召喚されたコトマエ・マナビ。 異世界パルメディアは、大魔法文明時代。 だが、その時代は崩壊寸前だった。 なのに人類同志は争いをやめず、異世界召喚した特殊能力を持つ人間同士を戦わせて覇を競っている。 マナビは魔力も闘気もゼロということで無能と断じられ、彼を召喚したハーフエルフ巫女のルミイとともに追放される。 追放先は、魔法文明人の娯楽にして公開処刑装置、滅びの塔。 ここで命運尽きるかと思われたが、マナビの能力、ヘルプ機能とチュートリアルシステムが発動する。 世界のすべてを事前に調べ、起こる出来事を予習する。 無理ゲーだって軽々くぐり抜け、デスゲームもヌルゲーに変わる。 化け物だって天変地異だって、事前の予習でサクサククリア。 そして自分を舐めてきた相手を、さんざん煽り倒す。 当座の目的は、ハーフエルフ巫女のルミイを実家に帰すこと。 ディストピアから、ポストアポカリプスへと崩壊していくこの世界で、マナビとルミイのどこか呑気な旅が続く。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

処理中です...