上 下
57 / 168

第57話 アイアンクロウ

しおりを挟む
 森の奥へ行ったところ、鳥のモンスターが飛び立った。

「カァカァ」

 色はブラックメタリックの羽を広げたら2メートルはあるカラスだな。

「アイアンクロウか」

 ホバーリング体勢から、金属の羽が撃ち出された。
 もちろん鉄パイプで払いのける

 弥衣やえ達も手で羽を捌いていた。
 シロガネは器用に避けている。

 反撃とばかりにボウガンを撃つが翼に当たっても跳ね返された。
 空中じゃ弱点には当たらないよな。
 必中スキルにもっと仕事してほしい。

 手が出ない。
 羽を撃たれる一方だ。

【対空兵器を持って来ないとな】
【ベテランの冒険者ならどうする?】
【ボーラとかあるな。ただ慣れるのに時間が掛かる】

「クロウに苦労する。撤退だ」

【ダジャレで終りか】
【鳥のモンスターは強敵だ。馬鹿にできない】

 帰ってからボーラから調べる。
 ふーん、子供の頃トンボを獲るのに使ってた奴か。
 トンボ用のはパチンコ玉が重りだったけど。
 1メートルのカラスじゃ鉄アレイでもロープに結ばないと。
 これを当てる自信はない。
 必中スキルを使っても難しいだろう。
 トンボは餌と勘違いして向かって来るから楽だったけど、カラスじゃそうもいかないな。

 総理大臣に署名を渡す日が決まった。
 4日後だ。
 スーツ仕立てないといけない。
 吊るしでもいいかな。
 どうせ良いスーツ着てってもそんなに印象は変わらない。

「ご就職ですか?」

 紳士服の店員にそう聞かれた。

「まあそんなところ」

 総理大臣と会うんだよとは言えない。

「でしたら、この製品ではどうでしょうか」
「一番高いのにしてくれ。ネクタイも一番高いのでいい」
「ありがとうございます」

 買ってはみたものの、困った。
 ネクタイが結べない。

 ネットで検索して結び方をみる。
 カメラを頭から外して机の上に置く。

「うがぁ、難しい。サラリーマン凄い」

【ネクタイで苦戦するの草】
【普段してないと難しい。慣れると体が覚えている。ほとんど見ないで結べるようになる】
【おっ、ヤエちゃん登場】

「もう、言ってくれたらいいのに。お姉さんに貸してごらんなさい」
「おう、悪いな」

【まるで新婚のサラリーマンだ】
【羨ましい】
【耳掃除とか憧れるな】
【そういうサービスの店に行くんだな】

「結んでもらったぞ、ついでに膝枕で耳掃除も頼む」
「喜んで」

 ソファーに弥衣やえが座る。
 俺は膝枕して貰った。
 そして優しく耳かきしてもらう。

 手に持ったスマホを見る。

【うらやまけしからん】
【耳かきなら私もしてあげたい】
【俺はコボルトとケットシーにしてやりたいな】
【ケモナーがいるな】

 耳かきが終わり、そう言えばアイアンクロウの羽を採ったなと思いだした。
 売りに行かないと。
 買取場で20センチはある黒光りする羽を取り出した。

「ミスリルが含まれているな」

 自信ありげな買取場のおっちゃん。

「分かるのか?」
「樹にミスリルが含まれているのなら羽にも含まれているだろう。小学生でも分かるぞ」
「なるほど」

 しばらく待たされて、おっちゃんが出てきた。

「待たせたな。酸化ミスリルだった。加工できないからクズだな。今の技術じゃ、酸化ミスリルをミスリルに戻すことは出来ない」
「でもやたら硬いけど」
「炉で溶けないし硬いんだよ。そういう性質だから仕方ない」

【フェザーアーマーとか作れるんじゃないかな】
【軽くて盾の材料とかに良さそう】

「貼り付けて防具に出来ないかな」
「それしかないだろう。不格好だから安いがな。羽一つ千円が良いところだな」
「しょっぱいね」
「悪く思うなよ、商売だからな」

【アルバイトなら羽一つ千円は美味しい】
【他のモンスターと比べると見劣りがする】
【還元できない金属があったとはな】
【酸化ミスリルのイオン色は黒か】
【そういうことだな】

 アイアンクロウってよく考えたらプロレス技と一緒だ。
 どうでも良いが。
 本当はミスリルクロウと呼ぶべきなんだが、旨味のない奴には鉄で十分だ。

「考えてみたら、酸化ミスリルの方が性能が良いな。高温に耐え、ミスリルより硬い。どういうことをしたらミスリルを酸化させられるのか」
「それな。世界中の学者が頭を捻っている。見つけたらノーベル賞かもな」
「難しいことは学者に任せるさ」

【ミスリルって言えば錆びないが代名詞だものな】
【カラスモンスターを解剖してみたら何か分かるかもな】
【なら倒さないと】

 結局倒さないといけないようだ。
 死骸に高値が付くと良いんだが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

リフォーム分譲ダンジョン~庭にダンジョンができたので、スキルを使い改装して、分譲販売することにした。あらぬ罪を着せてた奴らにざまぁしてやる~

喰寝丸太
ファンタジー
俺はソフトウェア開発会社の社員だった。 外注費を架空計上して横領した罪に問われ会社を追われた。 不幸は続く。 仲の良かった伯父さんが亡くなった。 遺産が転がり込むかと思われたら、貰った家の庭にダンジョンができて不良物件に。 この世界は10年前からダンジョンに悩まされていた。 ダンジョンができるのは良く聞く話。 ダンジョンは放っておくとスタンピードを起こし、大量のモンスターを吐き出す。 防ぐ手段は間引きすることだけ。 ダンジョンの所有者にはダンジョンを管理する義務が発生しますとのこと。 そして、スタンピードが起きた時の損害賠償は所有者である俺にくるらしい。 ダンジョンの権利は放棄できないようになっているらしい。 泣く泣く自腹で冒険者を雇い、討伐する事にした。 俺が持っているスキルのリフォームはダンジョンにも有効らしい。 俺はダンジョンをリフォーム、分譲して売り出すことにした。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

身バレしないように奴隷少女を買ってダンジョン配信させるが全部バレて俺がバズる

ぐうのすけ
ファンタジー
呪いを受けて冒険者を休業した俺は閃いた。 安い少女奴隷を購入し冒険者としてダンジョンに送り込みその様子を配信する。 そう、数年で美女になるであろう奴隷は配信で人気が出るはずだ。 もしそうならなくともダンジョンで魔物を狩らせれば稼ぎになる。 俺は偽装の仮面を持っている。 この魔道具があれば顔の認識を阻害し更に女の声に変える事が出来る。 身バレ対策しつつ収入を得られる。 だが現実は違った。 「ご主人様は男の人の匂いがします」 「こいつ面倒見良すぎじゃねwwwお母さんかよwwww」 俺の性別がバレ、身バレし、更には俺が金に困っていない事もバレて元英雄な事もバレた。 面倒見が良いためお母さんと呼ばれてネタにされるようになった。 おかしい、俺はそこまで配信していないのに奴隷より登録者数が伸びている。 思っていたのと違う! 俺の計画は破綻しバズっていく。

元探索者のおじいちゃん〜孫にせがまれてダンジョン配信を始めたんじゃが、軟弱な若造を叱りつけたらバズりおったわい〜

伊藤ほほほ
ファンタジー
夏休み。それは、最愛の孫『麻奈』がやって来る至福の期間。 麻奈は小学二年生。ダンジョン配信なるものがクラスで流行っているらしい。 探索者がモンスターを倒す様子を見て盛り上がるのだとか。 「おじいちゃん、元探索者なんでしょ? ダンジョン配信してよ!」 孫にせがまれては断れない。元探索者の『工藤源二』は、三十年ぶりにダンジョンへと向かう。 「これがスライムの倒し方じゃ!」 現在の常識とは異なる源二のダンジョン攻略が、探索者業界に革命を巻き起こす。 たまたま出会った迷惑系配信者への説教が注目を集め、 インターネット掲示板が源二の話題で持ちきりになる。 自由奔放なおじいちゃんらしい人柄もあってか、様々な要因が積み重なり、チャンネル登録者数が初日で七万人を超えるほどの人気配信者となってしまう。 世間を騒がせるほどにバズってしまうのだった。 今日も源二は愛車の軽トラックを走らせ、ダンジョンへと向かう。

底辺ダンチューバーさん、お嬢様系アイドル配信者を助けたら大バズりしてしまう ~人類未踏の最難関ダンジョンも楽々攻略しちゃいます〜

サイダーボウイ
ファンタジー
日常にダンジョンが溶け込んで15年。 冥層を目指すガチ勢は消え去り、浅層階を周回しながらスパチャで小銭を稼ぐダンチューバーがトレンドとなった現在。 ひとりの新人配信者が注目されつつあった。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

処理中です...