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第14話 コボルトとケットシー

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 オーク乱獲で大金が手に入った。
 俺の口座の残高は10億円を超え、弥衣やえの口座に1億円を振り込んだ。
 ちなみに流星打の技を使うと、弥衣やえにも経験値が入る。
 弥衣やえのレベルは10を超えた。

弥衣やえの進路はどうなっている?」
「大学には受かりましたが、気持ち的にはすぐるさんと働きたいです」
「大学ぐらい出ておいた方が良いと思うぞ」
「ではこうしましょ。会社を作って、いますぐ社員にして下さい」
「金はあるから会社を作るのはいいけど。社長は嫌だ。特にスピーチは我慢できない」
「分かったわ。社長は私がやる。でもすぐるさんは副社長で共同経営者。これは譲れない」
「肩書ぐらいは受け入れるよ。でも、絶対にスピーチはしないからな」

 オークの領域深く入ると、コメントが途切れた。
 何かあったのかな。
 カメラを止めて、弥衣やえに見せる。

「スーパーWi-Fiルーターの電波が届かなくなったようです」
「電波範囲から外れたのか」

 ルーターはダンジョンの入口に設置してあるから、そういうこともあるだろう。

「ダンジョンGPSアンテナを買ったらいいですよ。何階層もカバーできます。ただメンテナンスが必要ですが」
「メンテナンスは俺には無理だ」
「やるのは魔石に魔力を注ぐだけです。勉強タイムが必要なようですね。弥衣やえ先生の勉強タイム開始」
「先生お願いします」

「ダンジョンに物を置くと1時間ぐらいで吸収されます。死骸などもこれに含まれます。吸収されないのは生物だと勘違いしそうですが、厳密には魔力を含んだ物です。ですから、服や武具も身に着けていれば吸収されません」
「ほう」
「これを逆手に取ったのがダンジョンGPSアンテナです。この魔道具には魔石が使われているので、魔力が入っている間は吸収されません」
「なるほど、買った」

 手ぶらで帰るのもなんなので、奥へ入る。
 おや、オークが何かを虐めている。
 服を着ているから、人間か。
 大変だ。
 近寄ると人間でないのが分かった。
 毛むくじゃらなのだ。

 でも助けたい。

 弥衣やえに目配せする。

「流星打」

 不意打ちを食らったオークはたたらを踏んだ。

「助けて下さいわん」
「助けてにゃん」

 言葉も喋るのか。
 かなり知能が高いな。

 俺は毛むくじゃらとオークの間に割り込んだ。
 そして、オークの脛を連打。
 手ごたえありからの、流星打からの。サクッと止め。

「ありがとうございますわん」
「ありがとにゃん」

 立ち上がった二人は、2足歩行する犬と猫だった。
 犬のほうはゴールデンレトリバー。
 猫のほうは白に黒ぶち。

「可愛い」

 弥衣やえが喜んだ。

「二人はモンスターなのか」
「あんな奴らと一緒にしないで欲しいわん」
「そうですにゃ」

「じゃなんだ?」
「コボルトですわん」
「ケットシーにゃん」

「妖精ね」

 弥衣やえが知っているらしい。

「厳密には違うのですわんが、その言葉が一番近いですわん」
「同じくにゃん」

 妖精か。
 まあいいか。
 伝承にあるみたいだから、昔からいるのだろう。

「なんでダンジョンに?」
「昔、一族が神に逆らって魔王に味方したのですわん。その罰として呪いを掛けられダンジョンに住んでいますわん」
「魔王に味方したのは仕方なかったにゃん。モンスター扱いされて人間に迫害されたにゃん」

「抱きしめて良い?」
「良いですわん」
「挨拶ですにゃん」

 弥衣やえが代わる代わる抱きしめた。
 弥衣やえが満足したようなので話を再開する。

「二人はどうしてほしい?」
「一族を救ってほしてわん」
「ですにゃん」

「具体的には?」
「呪いを解いてダンジョンから連れ出して欲しいですわん」
「そうにゃん。この忌々しい呪いにはうんざりにゃん」

 連れ出すのは簡単にできる。
 テイムスキルがあると誤魔化せば、街に連れていっても問題ない。
 言葉も通じているみたいだからな。

弥衣やえ、神が掛けた呪いはどうやったら解けると思う」
「うーん、寄生してみたら、呪いがすぐるさんに流れ込んで、何か分かるかも。危険だけど」

「危険はないはずですわん。呪いの対象は我が一族となってますわん。他の種族には影響を及ぼさないはずですわん」
「寄生スキルは聞いたことがないにゃんけど、呪いの何パーセントかでも緩和できれば、均衡が崩れて呪いの効力がなくなるにゃん」
 やってみるか。

「寄生」

 寄生すると呪いの力が流れ込んで来た。
 たしかに俺には害がないようだ。
 それに呪いの力というものが分かった。
 操ることも出来そうだ。
 鉄パイプに呪いの力を流し込む。
 鉄パイプから黒いもやが上がった。
 これは悪役に相応しい力だ。
 一族と言ったな。
 威力は試してみないと分からないが、一族全員に寄生すると呪いの力は凄いことになるぞ。
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