無限魔力のゴーレム使い ~無力な奴隷から最強への一歩は逆転の発想から~

喰寝丸太

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最終章 勇者編

第117話 転移使い

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 俺は前線の要塞に配備された。
 今回はお供はなしだ。
 戦場に子供をつれてくるほど無神経ではない。
 スタンピートの対処の時につれていったのは言わない約束だ。
 あれは社会見学だから。
 戦場はさすがに刺激が強いと思う。

 連合結成の知らせを聞いて要塞の兵士は皆明るい。
 ここは難攻不落と言われている要塞で、ここを抜かれると数多くの都市が蹂躙される重要な場所だ。
 何回か帝国は攻めてきたそうだが、その度に跳ね返したらしい。
 今は敵兵の影もなく、要塞の勤務は俺がやる事がないので暇だ。

「大変です。使者が来ました」

 俺の配備場所は司令室だったので、その報告が俺にも聞き取れた。
 やる事がなくて暇だったので、使者に対応する偉い人の後についていく。

 城壁の上に出ると、閉じられた門の前に、男が一人いるのが分かった。
 あれが使者だな。

「即刻降伏して、この要塞を明け渡せ」
「話にならん。引き返せ今なら矢を射掛けないでやる」

 嫌な予感がして使者の男を見ると、刻一刻と魔力量が変わる。
 アルヴァルの奴は帝国に研究成果を送ったな。

「伏せろ!!」

 俺の警告に従って兵士達がみな伏せた。
 そして、轟音が鳴り響き使者が爆発。
 パラパラと小石が落ちてくる。
 門は少し壊れたがまだ持ちこたえそうだ。
 要塞に続く道に敵兵が現れた。
 敵兵は盾以外の武装はなく、全速力でこちらに走ってきた。

 俺は城壁から飛び降りると敵兵士に向って走る。
 距離が縮まった所で水魔法の粘着を展開。

 敵兵士達は足をとられ倒れこんだ。
 見ると敵兵士達はもがくばかりで、命乞いもしていない。
 異様だ。
 まるで走って城門に辿り着く事を目的にしているみたいだ。
 腹の辺りを魔力視で見ると契約魔法が見えた。
 これで行動を縛っているのだな。

「撃つな!!」

 俺は城壁に向って攻撃中止の合図をした。
 敵兵士の契約魔法を解除して回る。
 そして、不安定な魔力量を元に戻してやった。

「おい、お前達。なんて命令された」
「門の所まで走り、爆発しろと。仲間みたいに爆発して死にたくない」
「大丈夫だ。爆発の恐れはもうない」
「本当ですか」
「ああ、本当だ。その証拠にこれから要塞に入れて守ってやる」

「ぐがっ」

 俺が話していた敵兵士の胸に剣の刃が生える。

「何っ、いつからそこに」

 迷彩スキルか。
 いや違う。魔力視には反応がなかった。

 敵兵士の背後から現れた男は剣を死体から抜くと、一振りして血糊を布で拭った。
 随分と余裕の行動だ。
 剣の手入れをしている暇があったなら、次の攻撃に移ればいいのに。
 俺は魔力ゴーレムをこっそり男に近づけてスタンガン魔法をお見舞いしようとした。

 男の姿が突如消える。
 どこだ、どこに行った。
 背後でカキンと音がして、俺は振り返った。
 ライタが土魔法で防御してくれたようだ。
 男は剣を俺の背中に突き立てようとして失敗したらしい。

 俺は飛びのいて男と距離をとった。

『こいつ転移使いだ』
「ライタ、ありがと。さっきは助かったよ」
『魔力視で見たら背後に反応があったからな』

「ちっ、勘の良い奴だ。勝負は預けておいてやる」

 そう言うと転移使いは消えた。
 俺は爆弾にされた敵兵士達を捕虜として要塞に収納した。

「ライタ、転移使い強敵だな」
『いや、そんな事ないと思うぜ』
「その根拠は?」
『回数の制限がきついんじゃないかな。だから退いた』
「なるほどね。粘ればいいのか」
『それだけじゃ駄目だな。結局、逃げられる』
「じゃどうすれば」
『こんな事もあろうかと、あいつが消える時に転移スキルを魔力走査した』
「分析できたのか」
『ああ、ばっちり。じゃさっそく』

 俺は空中、数百メートラに投げ出された。
 風魔法のクッションがあるから慌てないけど、これ普通は死んでいるぞ。

「ライタ、どうなっている」
『悪い悪い。計算をミスっちまって』
「大丈夫か。勘弁してくれよ」
『こんどは大丈夫』

 俺は地面に立っていた。
 ステータスを確認すると転移スキルを覚えていた。

「転移スキルを覚えたけど実行するのが恐いな」
『フィルはやらないほうがいいな』
「やっぱり。計算は難しいのか」
『超越者の知識を漁ってから、並列システムを一万使って実現した』
「じゃああいつは一万人分の頭脳があるのか」
『それは分からない。もって生まれた才能かもしれない』

 転移の実験を済まして要塞に戻ると、司令部があわただしい。

「何かあったのか」
「ええ、人間爆弾の警告を複数の伝令に持たせたのですが、全員が帰ってきません」

「通信の魔道具はどうした」
「要塞にはあるのですが。前線にはないのです。近辺の都市には人間爆弾の情報を発信したのですが、前線基地には二日ほどかかります」

「じゃあ、俺が伝令役をやってやるよ」

 ちょうど前線に行こうかと思っていたところだ。
 たぶん、人間爆弾が猛威をふるっているだろう。
 強制されて爆弾にされるなんて可哀相だ。
 助けられるなら助けてやりたい。

 前線まで輸送機で飛んでもいいのだが、伝令が帰って来ない原因も調べたい。
 馬ゴーレムに乗って行く事にした。
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