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最終章 勇者編

第102話 暴露の波紋

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 考え事をしながら聖都を歩く。

「神官様、祈ったのに、なぜ父ちゃんは戻ってこなかったんだ」

 子供が神官と大きな声で話していた。
 子供はやんちゃな感じのどこにでもいそうな男の子だ。

「祈りがたりなかったのです」
「あんなに真剣に祈ったのに」
「なら、お布施を払いなさい。祈りの代わりになります」

 なんとなく我慢できなくなった。

「超越者はそんな物では動かない」
「あなたは神の何を知っているというのですか」
「会って行動の目的を聞いた」
「兄ちゃん神様はなんて」

「進化にしか興味はないってさ」
「どういう事」
「生まれ変わるほど強くなれって事さ」
「異教徒の言葉に耳を傾けてはなりません」
「異教徒ではないさ。信者でもないがな」
「無神論者ですか」
「いや、あんた達があがめる神はいる。ただ、神は宗教に興味がないだけさ」
嘘八百うそはっぴゃくだ」
「いや本当だ。教会の幹部はみんな知っていると思うぞ」
「戯言だ」
「いや俺は兄ちゃんの言う事を信じる。強くなって神様に認めてもらうんだ」
「ふん、不愉快です」

 神官は憤懣ふんまんやるかたなしという風体で立ち去った。

「兄ちゃん俺、強くなる」
「うん、頑張れよ」
「俺はリリオネル五世」
「凄い名前だな。俺はフィルだ。また縁があったら会おう」
「またね」

 子供が去って行き何事かと見物人の輪が出来ていたが、それも無くなり後にぽつんと女性が一人残された。

「また、無鉄砲に喧嘩売って」

 女性はマリリだった。

「見てたのか」
「ええ」
「なんとなく我慢できなくなってな」

「神官様にあんな口を聞いて」
「だけど事実を言ったまでだ」
「真実は尊いけど時に人を傷つけるわ」
「心に留めておくよ」

 路地裏できゃーという黄色い悲鳴が上がる。
 なんだ。
 全速力で走る。
 俺はちょっと野次馬根性を発揮して覗いた。

 さっき俺と口論した神官が死んでいるじゃないか。
 すぐさま聖騎士が駆けつけてきて俺を睨みつける。

「大人しくしろ。神官殺しは罪が重いぞ」
「たった今来たばかりなんだが」
「うるさいお前が犯人だと密告があった」
「ふーん、駆けつけるのが馬鹿に早いじゃないか。お前、本当に聖騎士か」
「うるさい」

 切れ易い奴だな。
 剣を抜いてきたので魔力結晶ゴーレムをアイテム鞄から出す。
 殺すと、もし本物だった場合は厄介な事になりそうだ。
 魔力ゴーレムで電撃を出す。
 魔力結晶ゴーレムに気をとられていた自称聖騎士は気絶した。
 するとどこかから短剣が投げつけられ自称聖騎士の顔に刺さる。
 びくびく痙攣する自称聖騎士。
 口から泡を吹いているところから見るに毒だな。

『逃げられた』

 ライタから報告があった。
 魔力視にも反応がない。
 それどころか悲鳴を上げていた女性もいない。

 俺は急いで現場を離れた。
 マリリを連れて一緒に宿に帰る。
 ベッドの上でどうしたものかと考えていたら、ランデ男爵が尋ねてきた。

「何をしたんです。あなたに殺人の嫌疑がかかったと思ったら、一刻すぎたら忘れてくれと言われました」
「俺にもなんがなんだか分からないな」
「教会のかなり上の方が動いたらしいですよ。なにか特別な伝手をお持ちですか」

 セシリーンではないな。
 あと思い当たるのは超越者だな。

「教会の一番上と面識がある」
「貸しが一つありましたね。調べましょうか」
「頼む」

 ランデ男爵は一時間ほどで帰ってきた。

「もの凄い噂が飛びかってますよ。教会の幹部全員が首になりそうになって青くなったとか。それと粛清部隊が動いたとか」
「どうやら俺は教会にとって都合の悪い事を喋ったらしい」
「その内容は言わないで下さいよ。まだ死にたくはないですから」
「教会のお偉いさんに言ってくれ、干渉するつもりはない。出来るだけ口はつぐむとな」
「そうしておいた方が良さそうですね」

 超越者の目的を喋ったらいけないって、禁忌に書いておいてくれれば良いのにな。
 超越者としては進化して欲しいから、進化する方向に意識する人間が出てくるのは歓迎なんだろうな。
 あのリリオネルは無事だろうか。
 殺す順番としては神官、俺、リリオネル、野次馬の順だろうな
 だから大丈夫だと思いたい。
 家ぐらい聞いておけば良かったかな。

 リリオネルの事を意識から追い出して、スタンピート対策を考えた。
 よし、毒ミートゴーレム作戦だ。
 船頭の話では魚の魔獣は生餌に反応するらしい。
 とにかく餌は動いていないと駄目との事だった。
 毒を混ぜた肉のゴーレム多数を河と水路を繋ぐ地点に配置して食わせてやろう。
 それと幾つかの秘密兵器だな。
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